2022.02.08

新規事業立案におけるフレームワークとは

新規事業を立ち上げる際には、「何から始めたらいいのか分からない。」という方も多いはずです。

新規事業立ち上げの時に役に立つのがフレームワークです。フレームワークはビジネスのさまざまな場面で活用されますが、ポイントを抑えて使用することが重要です。

フレームワークを新規事業で活用するメリット

フレームワークとは、ビジネスにおけるさまざまなパターンを可視化したものを指します。フレームワークにはさまざまな種類がありますが、それぞれ一定の枠組みに沿って発想や分析をおこなっていくことで、思考時間の短縮やブレのないアウトプットを出せるようになります。

新規事業では事業計画が成功の鍵を握ります。立ち上げタイミングの事業計画が曖昧で、精度が高くなければ事業は成功しません。また、新規事業はスピードが求められるため、素早く事業計画を練ることも重要です。

スピードと分析の正確性が求められる新規事業では、フレームワークが非常に有効なツールとなります。フレームワークはある程度の枠組みが決まっているため、そこに要素を当てはめていくだけで分析結果を導き出すことができます。そのため、思考時間を短縮でき、事業計画にかける時間と労力を抑えることが大きなメリットとなります。

新規事業の流れ

新規事業の立案にフレームワークを取り入れる際には、まず新規事業の流れを理解しておくことが重要です。ここでは、新規事業の流れを5つのフェーズに分けて解説していきます。

1.目標の明確化

新規事業を立ち上げる際には、まずどこに向かって進んでいくのかという目標を明確にすることが重要です。

目標が明確になっていないと、軸がずれてしまい事業計画に一貫性をもたせることができません。このあとのステップにおいても、はじめに決めた目標がすべての軸となります。

そのため、まずは新規事業における目標を明確化にしてください。

2.マーケットニーズの調査・分析

次に自社が戦うマーケットの調査をおこないます。マーケットニーズや現状を把握せずに新規事業の計画を立ててしまうと、全く需要のない商品やサービスになってしまう可能性もあります。

そのため、マーケットニーズやマーケットの現状を把握することで、より成功に近づける事業を始めることができるのです。

3.ビジネスアイデアの検討

マーケットニーズや現状の調査や分析結果を元に、ビジネスアイデアを検討していきます。さまざまな視点からアイデアを出し、出したアイデアがユーザーの課題を解決するものになっているかを検討します。

また、出したアイデアが現実性や収益性があるビジネスモデルとなっているかということも検討しなければいけません。

複数出したアイデアのなかから、さまざまな観点で見たときにもっともビジネスモデルとして成り立っているものを検討するという流れになります。

4.事業の方向性の検討

事業内容が確定したら事業全体の方向性を検討していきます。ペルソナの設定や自社商品、サービスのコンセプトなどを競合や外部環境を分析しながら決めていく必要があります。

事業全体の方向性は次のステップである具体的な行動計画の軸となるため、最初のステップで設定した自社の目標と照らし合わせながら検討していくことが重要です。

5.行動計画の策定

事業の方向性が決まれば最後は「いつ・誰が・何をするのか」という具体的な行動計画を策定していきます。行動計画を立てる際には、具体性だけではなく現実性のある計画を考えることが重要です。

たとえば、資金調達や設備投資などは比較的長い期間を要することもありますが、無理なスケジュールを組んでしまうと万全な準備を整えられないまま新規事業をスタートしてしまうということも考えられます。

そのため、新規事業の行動計画を立てる際には現実的な内容にすることを意識しなければいけません。

新規事業のフローごとに使えるフレームワーク

ここでは、新規事業で使えるフレームワークをフェーズごとに紹介していきます。

  • マーケット調査・分析
  • ビジネスアイデア
  • 行動計画
  • 課題発見・解決
  • 修正・改善

1.マーケット調査・分析

マーケットの現状を細かく把握することで、より精度の高いビジネス構築をおこなうことができます。そこでマーケットの調査、分析に便利なフレームワークが次の2つです。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップとは、意味の異なる2軸で作られたマトリクス上に自社、競合他社の商品、サービスを配置した図表のことを指します。

ポジショニングマップでは、縦軸と横軸に異なる要素を設置し、市場における各商品やサービスのポジションを設定していきます。市場の全体像がわかれば、市場における自社のポジションを明確化することができるうえに、空いているポジションを狙うことで競合との差別化を図ることができるようになります。

ポジショニングマップを作成する際には、軸の設定が重要です。軸として考えられるのは、商品の仕様や機能などがあります。ほかにも顧客ニーズやその商品やサービスが使用される機会など、さまざまな要素が考えられます。

競合との差別化を図り、競争優位性のある独自ポジションを導き出す際に使用される手法です。

VRIO分析

VRIO分析とは経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)の4つの視点から、企業が持つ経営資源の強みや弱みを分析するフレームワークです。

  • 経済的価値(Value):企業やプロジェクトの内部リソースは機会や脅威に適応できるか
  • 希少性(Rarity):業界においてそのビジネスは希少性が高いか
  • 模倣可能性(Imitability):他社がそのビジネスを模倣する場合にどれくらいのコストやリソースがかかるのか
  • 組織(Organization):現状の経営資源をフルに生かすために組織の構築やフローは適切に設定されているか

経営資源にはヒト、モノ、カネ、情報があり、それぞれの価値を見極める時に使われます。VRIO分析をおこなうことで、新規事業のサービス内容や製品、経営資源の強さを客観的に測ることができるようになります。

RIO分析にあたっては、まず自社の経営資源の洗い出しが重要です。そして、洗い出した経営資源をVRIOの順番で分析していくという手順になります。

2.ビジネスアイデア

ビジネスアイデアはそう簡単に出てくるものではありません。そこで次の2つのフレームワークを活用することで、思考が整理されアイデア出しに役立ちます。

MVV

MVVとはミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Values) の頭文字をとった言葉で、新規事業を立ち上げる上でも軸となるミッション、ビジョン、バリューを明確に定義し、共有化するためのフレームワークです。

  • ミッション(Mission):組織の社会における使命・目的
  • ビジョン(Vision) :組織が実現を目指す未来の姿
  • バリュー(Values) :組織メンバーの行動・判断の基準となる価値観

バリューはビジョンの土台となり、ビジョンはミッションの土台となる関係性を持ちます。つまり、ミッションの達成のためにビジョンを実現する必要性があり、また、ビジョン実現のためのより具体的な価値基準としてバリューが定められているということです。

新規事業立ち上げプロジェクトが、自社の掲げるミッション、ビジョン、バリュー実現のための方向性に一致していることを確認することで、自社の求めるアイデアが生まれてくる可能性が高まります。

SCAMPER

SCAMPERとは、オズボーンのチェックリストというアイデア発想手法を改良して提唱されたフレームワークで、次の7つの問いを使ってアイデアや発想を拡げる手法です。

  • Substitute:代用できないか?
  • Combine:他のものと組み合わせられないか?
  • Adapt:応用できないか?
  • Modify :修正できないか?
  • Put other uses:他の使いみちがないか?
  • Eliminate :削除または削減できないか?
  • Reverse or Rearrange:逆転または再編集できないか?

SCAMPER法を活用する際には、アイデアの質よりも量が重要です。7つの項目をすべて短時間でおこなうことで、強制的にアイデアを生み出すエンジンとなるためスピードも重視されます。

3.行動計画

行動計画は事業内容をより具体的にしていく重要なステップです。次のフレームワークを活用して精度の高い行動計画を立ててください。

ビジネスロードマップ

ビジネスロードマップとは、目標達成に必要な事項や困難な事柄を時系列で大まかに書きだしたものです。

ビジネスロードマップを作成することで、最初に設定した目標を達成するためにはいつ何をすればよいか、どんなことが障害になるのかといった全体像を把握することできます。

よりビジネスの構造を具体的に考えられるだけでなく、これからどういった行動をとればよいのかを明確にすることができ、頭だけでの理解ではなく視覚的にも理解ができるというメリットがあります。

ビジネスロードマップの時間軸や項目は目的や企業によってさまざまですが、未来から逆算をして中間目標を立てることが重要です。また、目標だけではなく課題や解決方法なども細かく記載することも大切です。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、事業活動で生み出される価値を一つの流れとして捉える考え方です。日本語では「価値連鎖」と言い、事業を「主活動」と「支援活動」に分類し、どの工程で付加価値を出しているかという分析をするためのフレームワークです。

主活動
  • 購買物流
  • 製造
  • 出荷物流
  • 販売・マーケティング
  • サービス
  • 支援活動
  • 全般管理(インストラクチャー)
  • 調達活動
  • 技術開発
  • 人事・労務管理

バリューチェーンを分析することで自社の事業活動が価値創造にどのように貢献しているのかを知ることができます。自社の課題や強みを機能別に抽出することで、市場優位性を築くための差別化戦略が容易になるのです。

4.課題発見、解決

新規事業の課題発見や解決をおこなう際に有効なワークフローにロジックツリーがあります。ロジックツリーとは、さまざまな問題を分解の木として原因や解決法を発見する際に活用できるひとつの課題解決フレームワークです。

ビジネス上に起きた問題をツリー状に分解し図式化することで、全体像を把握でき、問題点や原因を明確にすることができるようになります。

そして、問題点に対する具体的な解決策や改善策を最短時間で見つけていくことが可能となるのです。

5.修正、改善

どのようなビジネスでも常に修正や改善をおこなうことが重要です。そこで欠かせないフレームワークがPDCAです。

PDCAとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のサイクルを繰り返しおこなうことで、継続的な業務の改善を促すフレームワークです。

PDCAサイクルでは、目標達成のための筋道を立てるため、やることが明確になり行動に集中しやすくなります。また、PDCAは最初の段階で数値的指標や定量化できるものを活用して目標が設定されるため、目標と結果の乖離も明確となり課題に対する不足を把握できるようになります。

フレームワークを使用する際のポイント

フレームワークを使用する際には、次の3つのポイントに注意する必要があります。

自社に合ったフレームワークを使用する

本記事で紹介したワークフロー以外にも数多くの種類があります。そのため、何を使えば良いのかわからなくなってしまうこともありますが、重要なのは自社にあったものを活用するということです。

自社の状況や目的に応じて適切なものを選び、目標を達成できるようにするのがポイントです。

定量と定性の両方に目を向ける

フレームワークを利用する際には、定量データと定性データの両方に目を向けて客観的な視点で取り組むことが重要です。

どちらかに偏ってしまうと、正しい分析結果を得られることができず結果として事業に支障が出ることも考えられます。

そのため、フレームワークを使用する際は、かならず定量的かつ定性的に取り組んでください。

複数のフレームワークを組み合わせる

複数のフレームワークを組み合わせることでさらに分析の精度が増し、より有益な情報が得られます。

たとえば、MVVで事業全体のミッション、ビジョン、バリューを決め、その内容をもとにビジネスロードマップを作成することで、より事業のイメージをもちやすくなります。

複数のフレームワークを掛け合わせる際には、新規事業立案のプレセスに沿って掛け合わせることで、より各プロセスにおける分析の精度が高くなります。

まとめ

本記事では、新規事業を立ち上げる際に活用できるフレームワークをご紹介しました。フレームワークの種類は非常に多く、何を使うべきか悩む方も多いと思いますが、まずは自社の目標を明確にすることが重要です。

自社の設定した目標に合わせて、うまくフレームワークをかけ合わせて活用することで、より成功にみちびく行動計画を立てられるようになります。

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