- 経営戦略
パーパス経営における失敗
パーパス経営とは企業の存在意義を軸とした経営方針を意味します。顧客からの支持や企業に対する社員のロイヤリティ向上が期待でき、競合他社との差別化に役立つ要素です。環境破壊や気候変動などが原因で、持続可能な社会が求められるようになった背景から注目を集めることになり、多くの企業が経営戦略にパーパスの導入を進めています。
しかし、すべての企業が成功を収めている訳ではありません。パーパス経営を進行するなかで企業にはいくつか課題があり、実現に向けてクリアにしなければなりません。
パーパス経営とは
パーパス経営とは企業が存在する意義を主軸に考えた経営方針です。企業がパーパスを掲げ、実現に向けた活動によって、多くの方から支持を集めることを目的としています。パーパス(Purpose)は目的という意味であり、ビジネスシーンでは存在意義といった意味合いで使用されています。
パーパス経営が注目される背景
パーパス経営は、持続可能な社会が求められているといった背景から多くの企業より注目を集めることになりました。現代では技術レベルが向上し、さまざまな商品が世のなかに溢れており、モノが消費される社会になっています。
消費が増えるにつれ、ゴミのポイ捨てや無駄使いによって環境汚染が問題視されるようになったため、明るい未来をつくるには一人ひとりが持続可能な社会を目指す必要があると世界中の人々が考え始めました。
その結果、環境や社会にマイナスな影響を与える企業は支持されず、社会に貢献する企業が多くの方から支持されるようになっています。パーパス経営では、社会に貢献することを目標にパーパスを設定し、日々の活動に取り組む経営方針をとっています。
パーパス経営において企業が抱える問題
パーパス経営において、多くの企業では次のような問題を抱えています。
- パーパスが社員に浸透しない
- パーパスの定義を勘違いしている
- 実現に向けて投資できていない
パーパスが社員に浸透しない
多くの企業が頭を抱える問題は、社員にパーパスが浸透しないことです。企業は従業員の働きにより稼働しています。経営陣が率先してパーパスを唱えても、従業員への浸透が進んでいなければ、働き手は意識せずに業務へ取り組むはずです。
さらに、経営陣との熱量に差が生まれることで、従業員のエンゲージメントは低下し、企業の成長のストップにつながります。パーパス経営を成功へ導くためには、従業員とコミュニケーションを取り、パーパスを浸透させる必要があります。
パーパスの定義を勘違いしている
パーパスの定義を勘違いし、最初の時点でつまずく企業は多いです。一部の企業は社会に貢献するパーパスを掲げればいいと考えますが、社会への貢献度を示したところで、顧客や社員から支持を集めることができる訳ではありません。
企業の主軸にある活動が、社会にどんな良い影響を与えるのかを示す必要があり、自社ならではの強みをパーパスに掲げるべきです。たとえば、家具店であれば消費者だけの生活を実現すること、最先端のIT企業であれば生産性を高めることが挙げられます。
実現に向けて投資できていない
パーパスを実現させるためには投資をする必要があります。失敗を恐れるあまり、パーパス経営の実現に向けて投資をできていない企業は少なくないはずです。投資先として挙げられるのは知識やブランド価値であり、形に残らないものとなっています。真似されにくいうえ、独自の強みを持つことができる点が特徴的です。
投資するモノのためにさまざまな施策を考えるはずですが、意味のない施策を打ってしまうことに注意が必要です。たとえば、顧客とコミュニケーションを取り、関係の構築によってブランド価値が高まるため、広告で認知を広げれば良いと考えるのは危険です。
企業のブランド価値が高まれば、共感と拡散により認知が広がるといったように、パーパスが実現する仕組みづくりにも投資する必要があります。
パーパス経営を実現させるポイント
パーパスを実現するためにはいくつかポイントがあります。少しでも成功確率を高めるようポイントはおさえておくべきです。
パーパス経営を実現させるポイントは以下のとおりです。
- パーパスの自分ごと化を目指す
- 企業の独自性を持つ
- パーパスを実現する
パーパスの自分ごと化を目指す
パーパスを実現させるためには従業員へパーパスを浸透させなければなりません。しかし、経営陣がパーパスを口にするだけでは浸透の効果は薄く、自分ごとのように感じてもらうことは不可能です。
パーパスを浸透させる対策として、従業員とコミュニケーションを取ることが挙げられます。対話することで従業員は自分の持つ価値観に気付くことができ、パーパスとの関係性が明らかになります。
企業の独自性を持つ
社会への貢献度を示すだけではなく、パーパスには企業の独自性が求められており、自社ならではの内容であることが重要です。パーパスが他社と同じ内容であれば、企業が存在する意義が薄れてしまいます。
企業が成長するためには多くの人からの支持が必要であるため、顧客や株主の視点に立ち、企業における現状や価値について深く分析することが求められます。すでにある程度の規模にまで拡大した企業は特有の魅力があるはずであるため、自社の持つ存在意義を再確認するべきです。
パーパスを実現する
パーパスを掲げた手前、言葉で終わらせるのではなく、実現に向けて行動をともにするべきです。パーパスを実現するためには、自社が達成できそうな内容にすることが重要であり、無理な目標は掲げないよう注意が必要です。想像のなかでパーパスを掲げてしまうと実現できない可能性が高く、言葉だけになってしまい、多くの方から信頼を失うことになります。
パーパス経営の成功事例
パーパス経営を成功させた企業は数多く存在します。自社でパーパスを掲げる際、成功に導くためにも他社の成功事例を参考にするべきです。
ソニー
ソニーは自社の特徴を活かし、クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たすといったパーパスを掲げました。多くの方から共感や支持を得ることに成功し、順調なペースでパーパス経営を進めています。
味の素
味の素は食べ物や調味料を販売する食品企業です。食品業界でトップを目指すというビジョンが社員へ浸透していなかったため、危機感を感じた経営陣は企業の存在意義について語り、パーパス経営の取り組みを進めることになりました。現在でも人の健康や食資源に配慮するなど社会の課題に向き合い、持続可能な社会に向けて活動をおこなっています。
パタゴニア
パタゴニアはアメリカ発祥のアパレル企業です。環境破壊や気候変動により状態が悪化する地球のために、パタゴニアは、我が故郷地球を救うためにビジネスを行うというパーパスを掲げはじめます。
全体の売上の1%を気候変動や食料危機に苦しむ方たちに向けて寄付金を送金したり、事業では原料に優しい素材を使用したりするなど、現在でも社会へと貢献しています。
まとめ
パーパス経営とは企業の存在意義を主軸に考えた経営方針のことです。環境破壊により持続可能な社会が求められるようになった背景により、世界中の企業から注目を集めるようになりました。
パーパスを導入することですべての企業が成長につながるという訳ではなく、パーパス経営を進めるうえで頭を抱える企業は少なくありません。成功に導くためには、社員にパーパスを自分ごと化してもらうことや、企業ならではの独自性を持つことなどのポイントを意識し、社会への貢献度を示す必要があります。