- 経営戦略
中期経営計画の事例
中期経営計画は、3~5年後に企業がどのようになっているのか明確な目標を立て、さらにその目標を達成するためにするべきことを記載するのが一般的です。企業によって中期経営計画の内容はさまざまですが、成功している中期経営計画には共通するポイントがあります。
特に大手企業は中期経営計画を公表していることから、事例を参考にすることも可能です。企業の運営状況や規模、扱う商品などは異なるため、最終的には自社にあった中期経営計画を作成することが重要です。
成功事例からみる中期経営計画を作成するポイント
経営理念が明確
中期経営計画において、もっとも必要なことの1つが経営理念が明確であることです。経営理念がはっきりとしていないと具体的な目標設定ができなくなります。また、目標が経営理念とずれる懸念もあります。
経営状態の把握
中期経営計画は現状の経営状態と3〜5年後の目標とのギャップを埋める目的があります。そのため、現状の経営状態や、企業の強みや弱み、市場の中での立ち位置などを把握していないと中期経営計画を立てることはできません。
企業全体で共有
中期経営計画を成功させている特徴として、企業全体で経営理念、3〜5年後の目標、目標を達成するためにするべきことなどを企業全体で共有しています。企業全体で同じ方向を向いて日々の業務をおこなうことで、業務効率化を向上させることができます。
また、従業員が企業に対して満足度を高めることによりモチベーションを上げ、離職率を減らすことにもつながります。従業員の満足度が高いと新入社員を採用するときにも強みになります。そのため、優秀な人材を採用しやすくなります。
内部環境要因・外部環境要因の分析
内部環境要因とは自社内の従業員の数、従業員のスキル、商品やサービスの強みなど社内で対応できる要因のことをいいます。外部環境要因とは市場の動きの変化、競合他社の動き、顧客が求めるニーズの変化、経済状況の変化など社内では変えようがない環境要因のことをいいます。
外部環境要因を常に分析して対応できる中期経営計画である必要があります。新型コロナウイルスや大震災のように、予想もつかなかった事業に大きな影響のある外部環境の変化があった場合は、中期経営計画の修正をする必要があることもあります。
中期経営計画の事例
大手企業を中心に中期経営計画を情報しているため、成功事例を参考にすることができます。成功している要因の共通点として、長期経営計画を達成するための中期経営計画であることが挙げられます。
トヨタ紡織
トヨタ紡織グループの長期経営計画として、2030年に「企業価値の向上によりサステナブルかつ世界トップレベルの企業になる」と掲げています。この長期経営計画をふまえて2025年中期経営計画の考え方として、全員でチャレンジすることにより内装システムサプライヤーとして自分たちで付加価値を付けることにより、競争力を勝ち上がっていくことを目標としています。
具体的な中期経営計画のシナリオは以下のようになっています。
世界トップレベルの提案力により、売上拡大と利益率改善を両立
- 既存コア事業の強化により、体質強化を推進し(損益分岐点70%未満へ引き下げ)、成長分野へのリソーセス再配分
- 徹底的な競合ベンチマークに基づく商品の差別化・トヨタ以外の戦略OEMへの拡販
- デミング賞獲得活動を通じて業務品質を向上
- イノベーションを通して社会課題を解決する力を具備
双日株式会社
双日株式会社が2030年の時点で目指しているのは、「事業や人材を創造し続ける総合商社」です。総合商社として、物やサービスを届けながらも社会課題やニーズに応えることにより、企業の価値を向上できるとしています。
2030年にこの目標を達成するために、設定された中期経営計画が「中期経営計画2023 ~ Start of the Next Decade ~」です。新規投資の継続や既存ビジネスの収益構造の抜本的な改革をすることで、企業として成長し企業価値の向上を目指します。
また、定量計画を以下のように設定しています。
- ROE 10%超
- 当期利益650億円程度
- 基礎的営業CF800億円程度
- 配当性向30%程度下限配当設定
- 投資3,300億円
- 基礎的CF黒字
- NETDER1倍程度
- ROA3%超
- PBR1倍超
大成建設
大成建設では中長期的な目標としてTAISEI VISION 2030があります。また2021〜2023年に取り組むこととして中期経営計画(2021-2023)を設定しています。
TAISEI VISION 2030で掲げているのが、「進化し続けるTheCDE³カンパニー」であり、人々が豊かに暮らせるために社会貢献をすることを目標としています。
中期経営計画(2021-2023)では事業関連とサステナビリティ関連にて目標設定をしています。事業関連はそれぞれ事業によって異なりますが、競争環境下においての優位性の確立、事業基盤確立の体制など事業の強化や拡大を掲げています。またサステナビリティ関連においては、エネルギー環境と基盤整備について詳しく目標設定しています。
またこのほかに、以下のような数値目標を設定しています。
- ROE10%程度
- 配当性向25%程度
- 純有利子負債 実質無借金の維持
- グループ売り上げ高 2兆円
- グループ営業利益 1,400億円
- グループ純利益 1,000億円
東京海上ホールディングズ
東京海上ホールディングスでは100年後もGoodCompanyを目指す長期ビジョンがあります。長期ビジョンを達成するために、中期経営計画2023が設定されています。
中期経営計画で設定されているのは以下の3点です。
- ステークホルダーとの「Win-Win」
- 「グローカル」×「シナジー」
- 成長と安定的な高収益の実現(純利益5,000億円超、ROE12%程度)
また目標を達成するために、以下の2つの成長戦略を設定しています。
- 新しいマーケット×新しいアプローチ
- 保険本業の収益力強化
これらの経営を支えるのは、以下5つの基盤です。
- テクノロジー
- ERM(リスクカルチャー)
- 人材
- グループ一体経営
- 企業文化
まとめ
中期経営計画は企業の3〜5年後のあるべき姿を具体的な目標として設定し、目標を達成するための具体的な活動を記載していることがほとんどです。さらに売り上げやROE(自己資本利益率)などの数値目標を設定していることにより、さらに目標に対して具体性を出すことができます。
それぞれ企業によって目標や活動内容などが異なります。大手企業は中期経営計画を公表していることが多く、これから中期経営計画を作成する場合参考にすることができます。
しかし、中期経営計画は企業によって異なるため、成功事例とまったく同じであれば成功するわけではありません。あくまで事例を参考にしながら、自社にあった中期経営計画を設定することが重要です。