- 経営戦略
ESG経営とは
ESG経営とは環境、社会、ガバナンスといった3つの要素を取り入れた経営のことです。2006年に当時の国連事務総長であるコフィー・アナン氏が金融業界に向けて提案したPRI(Principles for Responsible Investment、責任投資原則)において初めて提言されました。
気候変動への対応や温室効果ガスの排出、労働環境の整備、ステークホルダーエンゲージメントなど企業が長期的に発展するためにはESG要素が重要です。近年ESGの取り組みを公開している企業が一般的になっています。
ESG経営とは
ESG経営とは次の要素を考慮した経営のことです。
- Environment(環境)
- Social(社会)
- Governance(企業統治)
SDGsとの違い
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、ESGの内容を含めた17の目標や169のターゲットから構成されており2030年までに達成すべき目標です。そのため、ESGと共通点が多いのですが、世界全体においての共通目標であることから対象が国や国連、企業まで幅広いのに対して、ESGは企業や投資家が主体です。
ESG経営が重要になった背景
現代社会や経済のグローバル化やITの革命などメガトレンドが増えたことから、未来が予測しにくい時代となり企業を持続することにおいて一層むずかしくなりました。企業が長期間に渡り運営していくためには、中長期的なリスクと機会に対応することが重要です。
ESG経営で得られるメリット
企業がESGに取り組むことで次のようなメリットを得られます。
- ブランド力を高める
- リスク管理を高められる
- 新規事業につなげられる
ブランド力を高める
ESG経営に取り組むことで、環境や社会の課題に取り組む環境や透明性のある経営状態が作りあげられます。そのため、ステークホルダーや社会からの信頼度が上がりブランド力を高めることにつながるのです。ブランド力を高めることによって、ユーザーや投資家に対していい印象を与えることから資金が集まりやすくなります。
リスク管理を高められる
環境や社会、企業統治は状況によって企業にとってリスクとなる可能性があります。しかし、前もって準備をしておけばリスクを最小限にすることが可能です。リスクを下げることによって安定した経営をするようになり、ステークホルダーからの評価が高まることになります。
新規事業につなげられる
社会や地域のニーズに満たしており、環境問題に取り組んだ新しい事業をすることで周りからの評価が高くなります。そのうえ、現代においてのニーズにあっているため大きなビジネスチャンスになる可能性があるのです。
ESG経営の注意点
ESG経営において次のような注意点が挙げられます。
- 効果が出るまで時間がかかる
- 方向性を見極める判断がむずかしい
効果が出るまで時間がかかる
ESGは決して短期間で効果が出るわけではありません。効果が見られるまでに数年かかる可能性もあるため、中長期的に戦略を立てることが重要です。
方向性を見極める判断がむずかしい
ESG経営においては決まった評価基準がなく、さまざまな調査企業が指標を出している状態であり、方向性を見極めるのがむずかしい状況です。ESGの評価基準は日本だけでなく海外の調査企業の動向にも大きく影響があるため、海外の情報収集も必要です。
ESG経営の事例
森永製菓
森永製菓グループでは地球環境への配慮や社会課題の解決に取り組み、公正なガバナンスを保つことによって健全な経営を掲げています。森永製菓はESGに関連する方針や実績データを項目別に整理することにより、それぞれの数値を把握しやすくしているのです。
森永製菓グループは、森永製菓グループのパーパスである「世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなぎます」の実現に向けた企業活動を通じて、持続可能な社会への貢献と当社グループの持続的成長を目指します。
地球環境に配慮しながらお客様や社会への価値提供を行い、社会課題の解決に取り組みます。
すべてのステークホルダーと適切に対話を行い、信頼関係を構築します。
公正かつ透明性の高いガバナンスにより、健全で実効性の高い経営を実現します。
引用:サステナビリティ・マネジメント(森永製菓グループ)
TOTO
TOTOでは水環境基金を設立して、水に関連する環境問題に取り組んでいます。元は国内での取り組みでしたが、2007年にアジアに拡大、2009年には海外全域を活動地域とするなど活動範囲を拡大中です。2021年の活動報告書によると、助成金団体はのべ289団体、総額は3億9,178万円となっています。
リクルートホールディングス
リクルートホールディングスでは、企業活動を通して地球環境や社会に貢献し、持続的な成長につなげています。さらに、2021年に経営戦略として、環境、社会、ガバナンスにおいて取り組みの進捗状況を公開中です。
環境においては温室効果ガス排出量の減少に取り組み、2022年11月に第三者認証を完了予定です。社会面においては求職者の失業期間の短縮への貢献を目標に掲げ、ガバナンスにおいては経営の透明性や健全性を目指し意思決定の質を上げることが目標です。さらに、2030年度までに取締役会構成員の女性比率を50%にすることを目指しています。
花王
花王は経営戦略としてESGビジョンと対策を明確にしたKirei Lifestyle Planを掲げています。ESG戦略を通して、消費者に豊かな暮らしを提供することが目的です。
2021年よりスタートした経営体制のもと、「2030年までに達成したい姿」を「グローバルに存在感のある会社」から「グローバルで存在価値ある企業『Kao』」に改め、その達成に向け、ESGを経営の根幹に据えることで持続可能に成長していきます。2019年4月に公表した花王のESG戦略Kirei Lifestyle Planは、生活者のこころ豊かな暮らしの実現をめざすもので、生活者の目線に立った花王らしいESG戦略です。
引用:花王サステナビリティデータブック(花王)
特に特徴的なのは、重要テーマを78に絞って社外のステークホルダーや従業員がそれぞれのテーマについて評価することです。ユーザーやサプライヤーなどを巻き込むことにより、関係者にとってもESG戦略が重要なものとなります。
さらに、ESGの推進において組織や役割を明確にするなどESGに対しての組織体制が充実しているのが特徴的です。
AGC
ABCグループでは2005年にCRS委員会を設置し、サステナビリティに対しての取り組みを強化しました。環境や社会面においての取り組みに力を入れており、情報開示の改善を進めています。
まとめ
ESG経営とは、環境や社会、ガバナンスへの取り組みを経営目標に取り入れることです。ESG経営に取り組むことによって周りからの評価が高くなり、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。さらに、社会問題や環境問題に日頃から取り組むことによって企業が受けるリスクを最小限におさえ業績悪化を防げる場合もあるのです。
日頃から健全性や透明性が高い企業でなければ、何か問題があったときに一気に社会的な評価を落とすことがあるなどESG経営は企業の成長に欠かせない経営方法です。