- 経営戦略
EDM(エンタープライズデータ管理)とは
EDM(Enterprise Data Management、エンタープライズデータ管理)とは、組織におけるデータを一元管理し、一貫性や共有性を確保する目的でおこなう大規模なデータ管理を意味します。技術の発展により、企業は多くのユーザーに対して商品をリーチできるようになりましたが、扱う情報が複雑化しています。
そのため、業務の効率化や最適な意思決定をおこなうには、適切なデータ管理が重要です。また、世界的な金融危機を背景に、データの一元管理に対する重要性は高まっており、欧米を中心に金融業界でのEDMの推進が活発です。
EDMとは
EDM(Enterprise Data Management、エンタープライズデータ管理)とは、組織におけるデータを一元管理し、一貫性や共有性を確保する目的でおこなう大規模なデータ管理です。EDMが実現できればデータの分離を防ぎ、いつでもアクセス可能なひとつのシステムに統合されます。
インターネットやSNSが普及してから、さまざまな業種でデータ量が増加しているため、データ管理が必要です。これまで個々の部門で管理されていたデータを全社レベルで制御することで、業務効率化や的確で迅速な意思決定が可能となります。
EDMの重要性
組織におけるデータベースの構築は他社との競争力に直結するため、EDMのように大規模なデータ基盤の改革に対する重要性は年々高まっています。EDMの役割は組織データの一元管理であり、部門ごとに日々新しく生成される膨大なデータを効果的に管理することが可能です。さまざまな業種にわたるデータ量の増加を管理するためには、EDMのような管理手法が不可欠となっています。
EDMを導入するメリット
EDMを導入するメリットは次のとおりです。
- 業務効率化
- 意思決定の迅速化
- 属人化の防止
業務効率化
EDMでデータの一貫性を確保するために、データの重複や矛盾を排除することで、業務効率化につながります。これまで部門別におこなっていたデータ管理では、目的は違っても重複したデータや部門間で矛盾が生じるものが存在していました。しかし、EDMではデータの標準化と共通のデータモデルを使用することによって、データの再入力や修正作業などの手間も省けるうえ、整合性を向上させることができます。
迅速な意思決定
EDMにより組織内のデータに簡単にアクセスできるようになると、迅速な意思決定が可能となります。情報を探すための手間やリソースを削減でき、リアルタイムなデータ分析が可能となることから、意思決定までのプロセスが迅速化されるためです。
意思決定の遅延はビジネスチャンスを逃したり、リスクへの対応が遅れたりと、組織にとって重大な問題につながります。EDMによって最適なタイミングで意思決定をおこない、ビジネスチャンスに活かせる点は大きなメリットです。
属人化の防止
EDMによる統一的なデータ管理は、誰でも同じルールでおこなうため属人化の防止にもつながります。これまで各部署の担当者が自分の知識や経験にもとづいて管理してきたデータを、ほかの従業員が扱うには困難が生じ、データの安全性が損なわれる可能性もありました。
しかし、EDMを実施することで企業における情報共有が円滑になり、属人化を防止できます。また、EDMにおけるアクセス制御やセキュリティ強化により内部不正や不適切な業務防止などのリスクも軽減できます。
EDMの導入手順
EDMの導入手順は次のとおりです。
- EDM専門部署の設置
- データモデルの策定
- データ管理システム導入
EDM専門部署の設置
EDMは企業全体の大規模な改革となるため、専門部署を設置し、EDMのすべての工程を管理する必要があります。専門部署では、データ品質管理やセキュリティ管理、これまでのプロセス見直しと改善など、データ管理における効率化や品質向上を目指して取り組むことが重要です。また、データ管理に関する戦略や方針を策定するためには、経営陣が率先して経営資源を提供する必要もあります。
データモデルの策定
EDM専門部署の設置後は目標の設定とデータモデルの策定をおこなう必要があります。ただし、組織のビジョンにもとづいて策定することが重要です。データを適切に管理するためのガバナンスを確立し、組織全体で信頼性の高いデータを活用できるようにする必要もあります。
データ収集や管理、分析などに関する手順の策定をはじめ、リスク管理や法的な規制要件なども明確に定義することが重要です。この段階で、しっかりモデルの策定ができるとシステムの選定や実装の方向性も明確になります。
データ管理システム導入
データモデルの策定をもとにシステムを導入します。EDMでは企業内のデータを統合することが目的であるため、データ統合に対応する適切なシステムを導入することが重要です。また、将来的に拡張やカスタマイズをおこなう可能性も考慮し、組織の成長に対応できるシステムの導入を検討します。システム導入後は従業員がスムーズに活用できるようサポートし、継続的な管理体制が必要です。
EDMに適したプラットフォームの例
IBM
IBMは継続的な研究開発への投資をおこない、先進的なソリューションなど、幅広い領域において高品質な製品を提供している大手ベンダー企業です。柔軟にカスタマイズできる特徴を持ち、将来の拡張性やニーズに対応することができます。代表的なプラットフォームとしては、InfoSphereやCloud Pak for Dataなどがあります。
オラクル
オラクルもIBMと同様に先進的なソリューションを提供しており、クラウド、データベース、機械学習など、さまざまな分野で最新の技術を取り入れている大手ベンダー企業です。世界中に広がるグローバルなサポート体制を構築しており、24時間365日のサポートサービスを提供しています。代表的なプラットフォームとしては、Master Data ManagementやExadata Cloud@Customerなどがあげられます。
EDM導入における課題
EDM導入における課題は次のとおりです。
- コストがかかる
- 導入体制の構築が必要である
- 管理体制が必要である
コストがかかる
EDMに取り組むには、データベース構築のためのシステム導入が不可欠であるためコストがかかります。初期費用やデータ品質管理のためのランニングコスト、部門間でのコストシェアも検討しなければなりません。さらに、企業の機密情報の漏洩を防ぐために十分なセキュリティ対策が不可欠であり、あらゆるリスクに対するセキュリティ対策費がかかります。
導入体制の構築が必要である
EDMを実施するためには組織体制や運用プロセスの構築が必要ですが、部門間の連携が重要であるため、役割分担を明確にする必要があります。そのため、しっかりとガバナンスを確立してルールやプロセスを整備することが大切です。
また、EDMを実現するためには専門知識を持つ人材や従業員の意識向上も重要です。そのため、教育や研修の実施、場合によっては専門的アドバイザーを外部から導入することも検討しなければなりません。
管理体制が必要である
EDMは組織内のデータを一元管理するため、アップグレードや更新などの定期的なメンテナンスが不可欠です。また、データの安全性を確保するために、データのバックアップや暗号化、アクセス制御など、セキュリティを見直す必要もあります。EDM導入の際は、導入後のメンテナンスも重要であり、専門的な知識やスキルを持つ人材が必要です。
まとめ
EDMとは組織のデータを一元管理し、一貫性や共有性を確保する大規模なデータ管理です。EDMが実現されると業務効率化や迅速な意思決定につながるメリットがあります。EDMは専門の組織づくり、データモデル策定、システムの導入といった手順でおこないますが、コストやメンテナンスの面での課題も踏まえてしっかり検討することが重要です。
また、EDM構築は大規模な改革となるため時間もかかります。そのため、いつの間にか構築のための組織づくりやシステムの導入が目的になってしまうことがあり、しっかりと運用できるよう注意しなければなりません。データを活用する目的や目標を明確にして組織全体で取り組む必要があります。