- 経営戦略
エンベデッドファイナンス(Embedded Finance)とは
エンベデッドファイナンスとは、顧客が非金融事業者の提供するサービスを金融事業者に自分でアクセスしないで利用できる金融サービスです。デジタル技術の急速な進化や法整備が進んだことによって導入が進んでいる状況です。エンベデッドファイナンスが進むことで、よりよい金融サービスの提供や金融DXの推進、さらには金融業者にとってもメリットが生まれます。
エンベデッドファイナンスには不正取引対策や使い勝手の問題などの課題がありますが、金融機関と非金融事業者の双方にとってメリットがあり今後さらに需要が高まることが見込まれています。
エンベデッドファイナンスとは
エンベデッドファイナンスとは、顧客が自分で金融事業者にアクセスしないで非金融事業者の提供するサービスを利用できる金融サービスです。例えば、モバイルアプリやウェブサイトを通じて、通信事業者や小売業者が顧客に対してクレジットカード決済やローンなどの金融サービスを提供することが挙げられます。金融機関が非金融事業者と連携し、顧客のニーズに合った革新的なサービスを提供することで、エンベデッドファイナンスの普及が進んでいます。
金融機関と非金融事業者との連携は、双方にとってメリットがあります。非金融事業者は新たなサービスを提供することで顧客のロイヤルティを高め、収益拡大につなげることができます。一方、金融機関は多様な業界とのパートナーシップを通じて顧客基盤を拡大し、新たなビジネス機会を見出すことができます。エンベデッドファイナンスは、金融サービスのデジタル化と顧客エクスペリエンスの向上を両立させる新しいアプローチであり、今後さらなる普及が期待される分野です。
エンベデッドファイナンス導入が進んだ背景
エンベデッドファイナンス導入が進んだ背景として、次の点が挙げられます。
- 法整備
- デジタル技術の活用
法整備
エンベデッドファイナンス導入促進の背景として、法整備が進んだことが1つの要因です。近年、多くの国や地域でデジタル金融サービスの拡充に対応するための法規制や規制緩和が進められています。これにより、金融機関やテクノロジー企業がより柔軟なビジネスモデルを展開し、エンベデッドファイナンスの導入を容易にしています。
消費者保護や公正な競争の促進を目的とした法規制も進んでおり、金融機関や企業がエンベデッドファイナンスの導入を適切な方法でおこなうことが求められています。これらの法整備の進展により、エンベデッドファイナンスの導入がより広く普及し、多くの顧客に利益をもたらすことが期待されています。
デジタル技術の活用
デジタル技術が急激に進化したことによって、エンベデッドファイナンス導入が進みました。スマートフォンアプリやウェアラブルデバイスなど、さまざまなデジタルデバイスが普及しています。これらのデバイスに金融機能を組み込むことで、顧客は直接デジタルデバイスから金融取引をおこなうことが可能です。例えば、スマートフォンからクレジットカード決済や送金をおこなったり、ウェアラブルデバイスで支払ったりすることができます。
また、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)技術の発展により、さまざまなデバイスがネットワークに接続され、相互に情報をやり取りすることが可能です。このようなIoT技術を活用することでデバイス同士が金融取引をおこない、自動的に支払いや決済が行われるシステムも実現されています。
エンベデッドファイナンス進展で期待できること
エンベデッドファイナンスが進展したことで、次の点に期待することが可能です。
- 金融DX導入が進む
- より良い金融サービスの実現
- 金融機関のメリット
金融DX導入が進む
エンベデッドファイナンスが進展したことで、金融DX導入が進みます。エンベデッドファイナンスは、金融機能をほかの産業やサービスに組み込むことで、顧客にとってより便利でスムーズな金融体験を提供します。このような顧客中心のアプローチは、金融DXを推進するうえで非常に重要です。
例えば、エンベデッドファイナンスを導入したスマート家電やIoTデバイスは、購入やサービス利用に関連する金融取引を直接できるようになります。顧客は家電を操作するだけでクレジットカード決済やローンの申し込みが可能となり、煩雑な手続きを省略できます。
より良い金融サービスの実現
エンベデッドファイナンスは、金融機能を企業の業務プロセスに統合することで、顧客に対してより便利でスムーズな金融サービスを提供する手法です。エンベデッドファイナンスが進展したことで、より良い金融サービスを実現することが可能です。
例えば、小売業界ではPOSシステムによる支払い処理に金融機能を組み込み、消費者が商品を購入する際に簡単にクレジットカード支払いや分割払いができるようになります。これにより、消費者はシームレスな支払い体験を得られ、販売企業は顧客ロイヤリティの向上や売上の増加を期待できます。
金融機関のメリット
エンベデッドファイナンスが進展したことで、金融機関にメリットが生まれます。エンベデッドファイナンスは、企業が自社の業務プロセスに金融機能を組み込む手法です。金融機関が直接関与することで、金融機関は企業のさまざまな業務に金融サービスを提供する新たなビジネス機会を獲得できます。
ほかにも企業と金融機関との連携が強化され、顧客により便利で一体化した金融サービスを提供できます。さらに、エンベデッドファイナンスを通じて蓄積されるデータを活用することで、金融機関はより精度の高いリスク評価や顧客分析をおこない効果的な金融サービスの提供につなげられることから顧客満足度が向上します。
エンベデッドファイナンスが進展するための課題
エンベデッドファイナンスが進展するためには、次の課題が挙げられます。
- 不正取引対策
- 使い勝手
不正取引対策
エンベデッドファイナンスが進展するためには、不正取引対策が必要不可欠です。エンベデッドファイナンスは、企業の業務プロセスやシステムに金融機能を組み込み、よりスムーズで効率的な資金管理や取引を実現する手法です。しかし、このような金融機能の組み込みが進むと、悪意のある第三者による不正取引のリスクが高まる可能性があります。
そのため、エンベデッドファイナンスを導入する企業は、不正取引対策を強化することが必要です。具体的な対策としては、セキュリティ強化やアクセス制御の厳格化、取引の監視と検知、不正行為の報告プロセスの整備などが挙げられます。さらに、従業員への教育や意識向上も重要です。不正取引対策を徹底することで、エンベデッドファイナンスの安全な導入と活用を実現し、企業の業務効率化や競争力の向上に貢献することが期待されます。
使い勝手
エンベデッドファイナンス導入において、サービスやツールなどの使い勝手に課題が残ります。顧客はサービス提供者間でシームレスなデジタル体験を求めていることが一般的です。しかし、複数のサービスを組み合わせる際に、利用手続きや認証が煩雑になることがあります。エンベデッドファイナンスを成功させるためには、これらの課題を解決し、顧客がスムーズにサービスを利用できる環境を整えることが必要です。
まとめ
エンベデッドファイナンスとは、顧客が金融事業者に自らアクセスしないで非金融事業者の提供しているサービスから利用できる金融サービスです。エンベデッドファイナンス導入にて、新たな金融サービスを提供することで顧客満足度が上がります。さらに、金融DXの推進や金融機関にとって利点があることなど、さまざまなメリットがあることから今後さらに需要が高まることが見込まれています。