2022.09.21

医療業界においてのDX活用

高齢化社会が進み、2025年には団塊世代が75歳を超えることもあり国民の4分の1が高齢者になります。医療従事者は減少しており、医療が十分に行き届かない可能性があります。

医療業界はデジタル化が進んでおらず紙で診察券や診断書などを管理しているケースが少なくありません。そこにDXを導入させることで医療業務の業務効率化を進めることができ、人手不足の解消が期待できます。さらに、患者にとっても待ち時間を軽減したり、沿革でも受診できるなどのメリットがあります。

医療におけるDX

現在日本ではデータヘルス改革やスマートホスピタル、さらにRPAの導入など医療業界でのDX導入に力を入れています。

データヘルス改革

データヘルス改革とは2017年に厚生労働省が発表した構想であり、デジタル技術を活用することによって医療サービスの質を向上させるための取り組みです。デジタル技術を活用することによって新しい治療法を開発したり、患者の治療歴や病歴といったデータを管理して共有したりすることが目的です。このことにより現場の負担を減らすことができ、患者によりよいサービスを提供できるようになります。

スマートホスピタルとは

スマートホスピタルとは、IT技術を使うことによって医療業務の効率化や医療サービスの質を向上、さらには医療従事者の負担軽減など医療業界においてDX化を進める活用のことをいいます。受付や予約の自動化や患者一人ひとりのデータ活用、遠隔診療などさまざまな技術が活用されています。

スマートホスピタルが活用される背景として、高齢化が進む日本において医療需要が高まっていることに対応する必要のある点が挙げられます。さらに、医療従事者の人材不足や地方によっては通える距離に病院がないなどの対策をすることも可能です。

つまり、スマートホスピタルの導入は医療従事者の業務負担の軽減と患者の利便性向上といったさまざまな目的があります。

RPAの重要性

RPA(Robotic Process Automation、ロボティックプロセスオートメーション)とは、ロボットがルールエンジンやAIなどの認知技術を活用して自動化することです。医療業務には大量の医療事務をこなす必要があり、大きな負担となっています。さらに、人間が作業することでどうしてもミスをしてしまうこともあります。

そこで、ロボットが代行することにより医療従事者の負担が減りミスも大幅に削減することが可能です。このことにより、患者への対応により時間や労力をかけることにより質の高い診察ができるようになります。

医療業界の現状の課題

現状の医療業務には次のような課題が挙げられます。

  1. 人材不足
  2. 医療費適正化計画による経営圧迫
  3. 都市と地方の医療格差

人材不足

日本は病院数に対して医師の数が不足しています。OECD(経済協力開発機構)が発表するデータによると、人口100万人あたりの病院数は毎年世界と比較しても上位に入っています。

人口100万人あたりの病院数画像出典:Health Care Resources (OECD.Stat)

しかし、人口1000人あたりの医師数において、日本は世界で常にワースト5に入っています。このように世界と比較すると、日本は病院が多いにもかかわらず医師が足りていないことがわかります。

人口1000人あたりの医師の数画像出典:Health Care Resources (OECD.Stat)

医療費適正化計画による経営圧迫

医療費適正化計画とは、高齢化社会や少子化の進行に対応して誰もが等しく医療を受けられるようにするため、医療費の過度な増大を抑えるための取り組みです。医療費適正化計画は次のように第1期〜第3期までの期間に分けて進められています。

第1期 平成20〜24年度
第2期 平成25〜29年度
第3期 平成30〜令和5年度

この結果第一期では平成20年度は4000億円、平成24年度は2000億円の医療費を削減することに成功しています。

医療費見通しと実際の医療費との比較画像出典:第一期医療費適正化計画の実績に関する評価(厚生労働省)

新型コロナウイルスの影響が大きくなった令和2年医療提供体制に大きな影響が続いています。しかし、令和3年に「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」には医療費適正化の見直しをすると記載されています。

・入院医療費は、医療計画(地域医療構想)に基づく病床機能の分化・連携の推進の成果を反映させて推計
・外来医療費は、糖尿病の重症化予防、特定健診・保健指導の推進、後発医薬品の使用促進(80%目標)、医薬品の適正使用による、医療費適正化の効果を織り込んで推計。この結果、2023年度に0.6兆円程度の適正化効果額が見込まれる。
引用:第3期全国医療費適正化計画について(報告)(厚生労働省保険局)

このことにより、経営に影響している病院は少なくありません。

都市と地方の医療格差

2018年の厚生労働省のデータによると、人口10万対医師数は前回に比べると6.6人増えています。しかし、都道府県別でみると格差があることがわかります。例えば、もっとも多い徳島県が329.5人であるのに対してもっとも少ない埼玉県は169.8人です。

人口10万人あたりの医師の数(都道府県別)画像出典:平成30(2018)年医師・歯科医師・薬事市統計の概況(厚生労働省)

さらに、専門性資格を持つ医療従事者においてもそれぞれの県において差があります。例えば、小児科専門医はもっとも多い鳥取県で136.6人に対してもっとも少ない宮崎県は64.1人で2倍以上の差があります。

人口10万人あたりの医師の数(都道府県・主たる診療科・専門性資格別)画像出典:平成30(2018)年医師・歯科医師・薬事市統計の概況(厚生労働省)

このように地域によって医療事情は大幅に異なります。なかには半径30km以内に病院がなく、開業医も高齢化が進み医師や看護師不足が深刻化しているケースは少なくありません。さらに、若い研修医は都市部の病院に集まりがちなのですが、これは都市部の病院の方が症例は多いことが要因です。

医療DXで期待できる効果

医療DXでは次のような効果が期待できます。

  1. 業務効率化
  2. 遠隔医療の実施
  3. 予約受付の自動化

業務効率化

電子カルテをはじめとした電子化が進んでいるとはいっても、紙ベースで情報を管理している病院は少なくありません。なかには紙で管理して電子カルテの転記作業をしているケースも見られます。そこで、デジタル化を導入することによって必要なデータをリアルタイムに電子カルテに反映できます。高齢化社会が進む日本において、医療従事者の負担を減らすためにも医療DXを導入することにより業務効率化を進めることが重要です。

遠隔医療の実施

ICTを活用することによって、オンラインを使った遠隔診療の実用化が進められています。遠隔医療を活用することによって地方在住の患者であっても都心部の医療機関の診療を受診することが可能です。さらに、患者が移動する負担や院内感染のリスクを減らすメリットもあります。

遠隔医療を活用することによって、物理的に患者に対して対応することが減るため医療従事者にとっても負担を減らす効果もあります。

予約受付の自動化

医療DXを導入することにより予約受付をインターネットや専用の機械を使うことによって、受付業務の手間を減らすことができます。患者にとっても受付のヒューマンエラーや待ち時間を減らすことによって、満足度向上にもつながります。

まとめ

日本は医師が足りていない状況に加えて、高齢化社会が続くことから医療従事者の負担は増えるばかりです。そこで、医療従事者の負担を減らすためにデジタル化を進めています。デジタル化を進めることにより、遠隔医療や待ち時間の軽減など患者にとってもメリットがあります。

新型コロナウイルスの影響により医療業界はさらに圧迫された状態のうえに、医療費適正化計画を進めています。この対策をするためにも、DXの導入が早急に必要です。

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