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デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインとは?概要やポイントを解説
「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」は、経営者がDX推進において抑えるべき事項を取りまとめたガイドラインです。
この記事ではガイドラインの重要な部分を抜粋し、具体的な事例とともに解説します。
「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」とは
デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインとは、2018年12月に、経済産業省がDX推進について取りまとめたガイドラインです。同年9月に経済産業省設置の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が発表したDXレポートにもとづいて、こちらのガイドラインが作成されています。
ガイドラインの内容は、次の2つに分類できます。
- DX 推進のための経営のあり方、仕組み:社内でDX推進を進めるにあたって、経営層が知っておくべきこと
- DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築:DX推進のために必要な基盤、準備など
画像出典:DX推進ガイドラインを取りまとめました(経済産業省)
この記事では、2部構成でガイドラインについて解説しています。
DX推進で経営層が実施すべきこと
まずは、ガイドラインの「DX 推進のための経営のあり方、仕組み」を解説します。この章では、DX推進において経営層のあるべき姿について記載されています。
経営戦略やビジョンを明確にする
DX化を進める際、まずは経営層が経営戦略やビジョンを明確化する必要があります。DX推進はまず「DX化によってどのようなビジネスモデルを作るのか?」を明確にすることから始めます。
経営層のビジョンが曖昧な場合、社員も何をすればよいのか理解できません。そのため、いきなりDX化を始めるのではなく、まずは定性・定量目標を決める必要があります。
良い例
- 経営層自ら先頭に立って、DX化による目標や行動を共有する
- DX化による売上目標や経費削減額、予算などを細かく決める
悪い例
- 社員に「とりあえずDX進めといて!」と丸投げする
- 定量管理をせずにひたすらDX化を進める
経営層が先頭に立って変革する
経営層が本気でDX推進に取り組まなければ、当然社員はついてきません。DX化を進めるには、経営層が現状に強い危機感を抱いており、先頭に立って変革を望む姿勢が重要です。
会社のトップが常に変化を望めば、社員もその雰囲気を感じ取り、積極的に動くようになります。
良い例
- 経営層がITスキルについて勉強し、現場の仕事について理解する(専門スキルまで身につける、という話ではありません)
- 社員に丸投げせず、常に先頭に立ってDX化を進めている
悪い例
- 部下にDX推進を丸投げしている
- 経営層がIT業務についてまったく理解していない
DX化によるビジネスモデルが今後の市場に対応しているかチェックする
ビジョンで掲げるDX化のビジネスモデルが、今後の市場に対応しているかを常にチェックする体制が必要です。市場は素早く変化するため「時代の変化に対応できるビジネスモデル」の構築を考えるよう、ガイドラインに記載されています。
時代の変化に対応可能なビジネスモデルには、次のような特徴があると考えられます。
- 製品ライフサイクルが短く、投資の回収が早い
- データ分析を活用し、ピンポイントで顧客に商品・サービスを提供できる
- 在庫が少なく済むビジネスモデル。状況が急転しても、損失を抑えながらビジネスを転換できる
「DX化により構築するのはどんなビジネスモデルか?」、「そのビジネスモデルは時代の変化に対応できるのか?」このような視点をもちながら、DX化には欠かせません。
DX推進のために必要な基盤
続けて、ガイドラインに記載されている「(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」を解説します。この章では、DX推進において必要な基盤を解説しています。
社内でDX推進のチームをつくる
ガイドラインによると、社内でDXの専門チームを作ることが推奨されています。実際にガイドラインでは「複数の部門から人材を集めて少人数のチームを作り、トップダウンで社内改革を進める」ことが、先行事例として紹介されています。
また、社外との連携も不可欠です。特に、社内にDXのノウハウや人材が足りない場合、不足する部分を社外との連携で補うことも選択肢の1つです。
ベンダー企業に丸投げしない
DX化を進める際、社内にノウハウや人材が揃っていない企業も多く、ベンダー企業に頼る会社も多く存在します。ただし、ベンダー企業に丸投げせず、あくまで自社で主導権を握ることが重要です。
DX化を進めるにあたって、コンサルタントや技術者、クラウド導入支援企業などの外部の協力を仰ぐ企業も多く存在します。またこれらの外部サービスを利用する際、今まで見聞きしなかったような専門用語やサービスに理解が及ばず、相手の言う通りに進める会社も多いはず。
しかし社外に丸投げした場合、社内にノウハウが蓄積されないため、DX化に対応できているとは言えません。さらに、ベンダー企業の言いなりになる可能性があり、費用対効果は低下する恐れがあります。
主導権を取るためにも、自社で企画を立案したうえで、それを基に外部の協力を仰ぐようにしてください。
全社横断のシステムを構築し、無駄なものは廃棄する
DX化でシステムを構築する際は、一部の部門だけで進めるのではなく、全社横断的なデータ活用ができるようにする必要があります。部門ごとにバラバラの仕組みを構築すると、ITシステムがブラックボックス化してしまい、データの活用効率が悪くなります。
実際に化粧品大手「コーセー」は、かつて部門ごとにデータを分析していたため、分析作業の効率の悪さを課題に抱えていました。そこで「Amazon Redshift」と「SAP® Business-Objects™ Business Intelligence」の2つのデータ分析プラットフォームに、ビッグデータを統合。全社横断のデータ分析が可能となり、分析力が強化された事例もあります。
システムを導入する際は部門ごとに切り分けるのではなく、全社で横断できるものを導入する必要があります。また、部門ごとに導入しており効率の悪いシステムは、積極的に廃棄を検討してください。無駄を排除するのも、DX推進業務のひとつです。
まとめ
「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」とは、経済産業省がDXを推し進めるために掲げたガイドラインです。この記事では、その内容を抜粋して紹介しました。
ただしガイドラインは、あくまで基本の話です。まずは実践してみて、その効果を検証しながら再び実践する、この細かなサイクルがDX推進で大切です。