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スーパーシティとスマートシティの違い
スーパーシティとスマートシティは大枠においては、社会や地域の活性化や課題解決といった点で共通している部分があります。しかし、スーパーシティが住民の課題解決が優先であるのに対して、スマートシティは高い技術を使った街づくりが基準です。つまり、スーパーシティが目的志向であるのに対して、スマートシティは技術志向といえます。このほかにもこれまでの歴史や法律面での考え方など、異なる部分がいくつもあるのです。
スーパーシティとスマートシティの概要
スマートシティとスーパーシティを比較することがありますが、それぞれの意味合いはまったく異なります。スーパーシティとは最新の技術を活用することによって地域の課題を解決することが目的で、国家戦略において選ばれた地域は精度の緩和や税制面で優遇などされてることが特徴です。都市OSといった概念が導入されており、自治体をまたいでそれぞれのサービスを利用できるような基盤を使って統一的な企画で課題の解決をしようとしています。
スマートシティとはICT(情報通信技術)を活用することによって、都市化を進めることです。スーパーシティが人々の暮らしがベースであるのに対して、スマートシティは技術を活用することがベースである点が大幅に異なります。さらに、スマートシティはそれぞれの自治体が独自に技術を活用して新しいサービスを提供しています。統一的な企画を導入しているスーパーシティとは、この点においても違いがあるのです。
スーパーシティとは
スーパーシティとは、2020年の国家戦略特別区域法改正において設定されたスーパーシティ型国家戦略特区のことです。国家戦略とは規制改革制度のことであり、世界でもっともビジネスをしやすい環境作りをすることが目的です。地域や分野を限定して、税制面で優遇をしたり、大幅な制度の緩和をしたりなどができる区域を設定しています。観光や農業など11分野、92事業が対象です。
最新の技術を活用することで地域の課題を解決することが目的であり、特に力を入れている地域のことをスーパーシティとよんでいます。
スマートシティとは
スマートシティとは、人工知能やビッグデータ、IoT(Internet of Things)、ロボットなどの技術を活用することで、都市の持つ課題を解決するような取組みを継続しておこなえる都市や地区のことです。
都市局では、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」を『スマートシティ』と定義し、その実現に向けた取り組みを進めています。
引用:都市交通調査・都市計画調査(国土交通省)
さまざまなエリアにおいて、5GやAR、AIといった技術を活用して街の活性化を目的とした取り組みをしています。
参考:スマートシティの事例
スーパーシティとスマートシティの違い
スーパーシティとスマートシティは、定義や歴史、法律、また目的といった観点においてそれぞれ違いがあります。
定義の違い
スーパーシティはAIやビッグデータを活用することで、これまでにはないような都市設計をおこなうことです。さらに、ビジネスをしやすい街づくりを目指し第四次産業革命を先行的に体現しています。住民目線で未来社会の実現が目標です。
住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す。
引用:スーパーシティ・デジタル田園健康特区について(内閣府)
スマートシティはICTで構成されているフレームワークであり、都市や地域が抱える課題を解決することで持続可能な都市や地域の開発や促進をおこないます。スマートシティはICTを活用して都市化を進めることが目的です。
スマートシティは、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場と定義されています。
引用:スマートシティ(内閣府)
歴史の違い
スーパーシティとスマートシティにおいて、大きく違うのがそれぞれの歴史です。スーパーシティは、2019年の国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案がきっかけとなって取組みがはじまりました。そのため、決して歴史が深いわけではありません。
対してスマートシティは1986年、ロンドンにおいて自治体がオープンデータ化したことまで遡ることが必要です。日本では2010年に横浜でスマートシティプロジェクトが運用された実績があります。
法律面での違い
スーパーシティはスーパーシティ法案において、規制緩和を明確に制定しています。しかし、スマートシティにおいては、国土交通省が定義しているモデル事業であり、効力はあっても法律で制定しているわけではありません。
目的の違い
スマートシティの目的は都市機能の最適化や効率化であり、技術の活用が重要なポイントです。しかし、スーパーシティの目的は住民の課題を解決したり、住民の声に答えたりすることです。そのため、あくまで技術の活用は手法の1つです。さらに、スマートシティは都市部が対象であるのに対して、スーパーシティは地方創生事業の一環であるため地方が主な対象となっています。
スーパーシティでのメリットや課題点
スーパーシティが導入されることによって、生活においてさまざまな利便性があります。しかし、個人情報の漏洩や住民の声が反映されない可能性など課題が残る点が現状です。
スーパーシティのメリット
スーパーシティが出現すると、スマートフォンやタブレットによる行政手続きができるようになったり自動運転、自動ゴミ収集などのこれまでもなかったような生活に密着したサービスが生まれる可能性があります。さらに行政と民間企業が住民一人ひとりのデータを共有することによって、それぞれに合ったサービスの提供をしやすくなるのです。スーパーシティが普及することによって社会における問題の解決や、利便性の向上などさまざまな効果があることを期待されています。
スーパーシティの課題点
スーパーシティを導入するにあたって、問題となるのが情報漏洩の可能性、また住民の意見が反映されない点が挙げられます。スーパーシティにおいて行政と民間企業が情報を共有できるため、便利である反面情報漏洩の可能性があるのです。個人情報の保護やハッカーなどの攻撃への対応が大きな課題となります。
また、スーパーシティを進めるためには住民の合意が必要ですが、具体的に合意する条件や方法などが明記されていません。そのため、住民の声が反映されない可能性があります。
スマートシティでのメリットや課題点
スーパーシティは都市機能の最適化が大きな目的であり、長期間に渡っての取り組みです。ICTを活用することで都市における渋滞緩和や災害対策、高齢者の見守り体制の構築などさまざまなメリットが考えられます。
しかし、ICTへの依存度が高いことからトラブルがあった場合はさまざまなことが機能しない可能性があります。さらに、一人ひとりのデータ収集をすることからプライバシーの保護といった観点でも問題が残るのです。
スマートシティのメリット
スマートシティを実現することによって、ICTを活用して都市における課題を解決することや持続可能性を高めることが可能です。交通渋滞を緩和したり災害対策やエネルギーの効率的な利用などさまざまなメリットが考えられます。さらに、交通システムや住宅の生活様式などにおけるスマート化が進むことによって、利便性の高い生活を送ることができるようになります。
スマートシティの課題点
スマートシティの問題点として、ICTにトラブルがあった場合都市機能が停止するリスクがある点が挙げられます。さらに、AIやIoT技術を活用することによってデータ収集するため、プライバシーの侵害につながる可能性があります。
まとめ
スーパーシティとスマートシティはいずれもSociety5.0の観点で進められています。しかし、スーパーシティは社会があるべき姿や人々の暮らしといった点が基準となっているのに対して、スマートシティは情報通信技術を活用することで都市化を進めることが目的です。このほかにも歴史や法律面での違いなど、スーパーシティとスマートシティはさまざまな点で異なります。