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デジタルイノベーションとDXの違い
デジタルイノベーションとDX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)はいずれもデジタル技術をつかって企業を変革することをいいます。デジタルイノベーションはデジタル技術を活用して新たな社会的価値を創り出すことが目的で、DXは企業を改革することで競合他社に対して優位性を持つことがゴールです。
しかし、DXには企業の変革だけでなくデジタル技術を使って革新的なイノベーションを提供することともいわれます。つまり、DXにはデジタルイノベーションの概念も含まれています。
デジタルイノベーションとは
デジタルイノベーションとは、既存の仕組みや組織、サービスなどにデジタル技術を加えることによって新しい価値や革新をもたらすことです。イノベーションを提唱している20世紀前半に活躍した経済学者であるシュンペーターは、イノベーションは次の力を生むと話しています。
- 新しい財貨、すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産
- 新しい生産方法、これは決して科学的な新しい発見に基づく必要はなく、商品の商業的取り扱いに関する新しい方法をも含んでいる
- 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
- 新しい組織の出現
- 新しい販路の開拓
デジタルイノベーションの課題
デジタルイノベーションを導入するためには次のような課題が挙げられます。
- デジタル人材不足
- システムのブラックボックス化
- 企業全体で取り組む環境にない
デジタル人材不足
デジタルノベーションを導入するためには、デジタル人材が重要です。しかし、日本ではデジタル人材が不足しており、デジタルイノベーションの導入が進まないもっとも大きな理由の1つになっています。少子化によりスキルを持った人材の採用がむずかしいことから、デジタル人材の育成が求められます。
システムのブラックボックス化
デジタルイノベーションを導入するにあたり、システムのブラックボックス化が大きな課題となっています。システムを長期間利用することによって、複雑化やブラックボックス化しているケースが少なくありません。そのため、トラブルがあったときメンテナンスにかかる費用や人材が十分でないことがあります。
企業全体で取り組む環境にない
デジタルイノベーションは企業全体で取り込む必要がありますが、経営者が十分なリソースを用意していなかったり従業員まで意識共有ができていなかったりなどとさまざまな課題が挙げられます。
DXとは
DX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を導入することによってビジネスや経営を変革して競合他社に対して優位性を持つことです。経済産業省ではDXを次のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサデジタイゼーションービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
引用:「DX推進指標」とそのガイダンス令和元年7月経済産業省(経済産業省)
デジタライゼーションとの違い
DXがデジタル技術を使うことによってビジネスを改革することが目的であるのに対して、デジタライゼーションは特定の業務プロセスに対してデジタル化することによって新たなビジネスモデルを産むことを意味しています。デジタライゼーションは企業全体のデジタル化がまだできていない状況で、DX化をするための1つ前のプロセスです。
デジタイゼーションとの違い
デジタイゼーション業務を部分的にデジタル化することです。つまり、これまで手書きの請求書を作成していたところを会計システムでの運用に変えただけでデジタルゼーションといえます。DX化を進めるためにはデジタル化することから始める必要があるため、データエディションはDX化を進めるための第一歩です。
デジタルイノベーションとDXの違い
デジタルイノベーションとDXはいずれもデジタル技術を活用しますが、それぞれ目的が異なります。
目的の違い
デジタルイノベーションはデジタル技術を使って新たな社会的価値を生み出すことをいいます。日本では経営革新や技術革新をするための手段としてイノベーションといった言葉をよく使いますが、デジタル技術が進むにつれデジタルイノベーションの需要が高まっています。DXはビジネスの改革をおこない競合他社に対して優位性を保つことが目的です。
デジタルイノベーションの中心となるのがDX
DXの概念にはデジタルイノベーションが含まれており、デジタルイノベーションの中心となるのがDXであるといっても過言ではありません。デジタルイノベーションもDXも、デジタル化を進めることによって変革することに変わりありません。さらに、DXを推進することでビジネスを変革しデジタルイノベーションにつながります。
DX推進ガイドラインでもイノベーションを念頭にしていると記載しています。
想定されるディスラプション(「非連続的(破壊的)イノベーション」)を念頭に、データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でどのような新たな価値(新ビジネス創出、即時性、コスト削減等)を生み出すことを目指すか、そのために、どのようなビジネスモデルを構築すべきかについての経営戦略やビジョンが提示できているか
引用:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(経済産業省)
デジタルイノベーションにおけるDX
デジタルイノベーションの観点において、DXの目的には次の3種類があります。
- 新ビジネスの展開
- 働き方改革の推進
- 事業プロセスの改革
新ビジネスの展開
デジタル技術を駆使することによって、新しい商品やサービスを生み出し新しいビジネスの展開ができます。デジタル技術を使ってこれまでになかったようなサービスを展開し、ユーザーのニーズに応えることにより大きなビジネスに発展することも可能です。
働き方改革の推進
これまで従業員が手動でおこなっていたことを自動的にすることで、従業員の負担を減らし働き方改革の推進につなげることができます。業務フローや体制など組織を根本的に変える必要があり、経営者がトップダウンで取り組むことが必要です。
事業プロセスの改革
デジタル技術を活用することによって、事業プロセスの効率化ができます。営業やマーケティングなど、既存システムを根本的に見直す必要がある場合のおいて大幅な改革となる場合もあります。事業プロセスを改革することで、新たな商品やサービスを生み出すことも可能です。
まとめ
デジタルイノベーションとDXはいつでもデジタル技術を活用することによってビジネスを変革することをいいます。デジタルイノベーションは変革したうえで新たな社会的価値を生み出し、DXは競合他社に対して優位性を確立することが目的です。さらに、DXは製品やサービスだけでなく組織やプロセスといったビジネスモデル全体のことをいいます。
つまり、DXはデジタルイノベーションを内包しています。DXは近年よく聞く言葉ですが、イノベーションは以前からある概念なので、イノベーションモデルを基としてDXを考えることも可能です。