- 経営戦略
コンプライアンスとガバナンスの違い
コンプライアンスとは企業が条例や法令、社会規範などといったルールを守ることである法令遵守を意味します。対して、ガバナンスとは不正行為を始めとした社会規範に反することをあらかじめ防止するために、企業が自社の管理を徹底したり統制したりすることです。
ガバナンスを強化することはコンプライアンスの維持につながります。そのため、ガバナンスにはコンプライアンスが含まれていると考えられます。コンプライアンスとは法律のほかに道徳観や倫理に従うことで、ガバナンスとは企業が適切な管理体制を構築することです。
コンプライアンスとは
コンプライアンス(compliance)とは法令遵守を意味しており、企業がルールや良識に沿って活動することが求められます。法令を守るだけでなく社会的な規範に従って、公平かつ公平に企業を運営することが求められています。
コンプライアンスの対象となる範囲は明確に定義されているわけではありませんが、一般的には、次の要素が含まれています。
- 就業規則
- 法令
- 社会規範
就業規則
就業規則とは社内におけるルールや業務の手順など就業や業務をするにあたって従業員が守るべき取り決めのことです。たとえば、従業員が10人以上在籍している雇用主は就業規則を作成し労働基準監督署長に届ける必要があることが労働基準法第89条にて定められています。
第八十九条常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
引用:労働基準法
法令
法令とは国会で決められた法律以外に政令や省令などを含めた総称です。国や政府以外にも地方公共団体が設定している条例をはじめとしてさまざまな種類があります。
企業が守るべき法令として、個人情報保護法や独占禁止法、製造物責任法、金融商品取引法などさまざまな例が挙げられます。企業はこれらの法令を守って運営することが必要です。
社会規範
情報漏洩やハラスメント、データ改ざんなどに対して企業は社会論理や社会規範に従って経営をおこなうことが必要です。企業に対して社会が求めている内容は時代の移り変わりや社会情勢によって異なるため定期的に見直すことが求められます。
法令に定められていないことでも企業が社会から求められている論理感を持つことにより、ステークホルダーや社会から企業が評価や信頼がされやすくなります。
コンプライアンスが注目される理由
コンプライアンスが注目される理由として、次のような理由が挙げられます。
- 法令を守っていないケースがある
- コンプライアンスを防ぐための仕組みが企業にない
法令を守っていないケースがある
経営陣や従業員にコンプライアンスの知識がなければ、知らず知らずのうちに法令を無視している可能性があります。企業には労働基準法を始めとして最低賃金法や男女雇用機会均等法など守るべき法律が数多くあります。しかし、これらの法律に対して十分な知識がなければ、結果的にコンプライアンス違反が起こりやすい環境です。
コンプライアンスを防ぐための仕組みが企業にない
コンプライアンス違反が発生する理由として企業の環境や組織体制に課題が残る場合があります。たとえば、企業の機密情報に誰でもアクセスできるような環境であれば、情報漏洩や不正利用を防止する環境であるとはいえません。情報セキュリティ対策をするほかに、従業員にITリテラシーを教育するなどコンプライアンス違反を防止するような仕組みづくりが必要です。
ガバナンスとは
ガバナンス(governance)とは一般的に企業経営を健全におこなうために必要な内部統治や管理体制のことです。企業はガバナンス体制を作り上げることによって、ステークホルダーとの強固な信頼関係を築くことが可能です。
コーポレートガバナンスコードとは
コーポレートガバナンスコードとは、金融庁と東京証券取引所などが2015年に定めた上場企業向けのガイドラインのことです。コーポレートガバナンスコードは、上場企業がガバナンスの指標として使う指針です。従業員が見ても、企業が正しくガバナンスに取り組んでいるかどうかがわかります。
コーポレートガバナンスコードに設定されている基本原則は次の5つです。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話
ガバナンスが注目される理由
ガバナンスが注目される理由の1つとして、情報の価値が向上していることが挙げられます。ガバナンス体制を充実させることによって、機密情報の管理を徹底することが必要です。さらに、次のようにガバナンスを強化することで企業への評価を高める場合があります。
内部不正の防止
ガバナンスの強化は、企業の不祥事を防ぐことにもつながります。企業の管理体制が徹底されることによって、企業の私物化や不正会計などの問題を未然に防ぐことが可能です。内部不正が発覚すると株主や従業員、顧客に対して大きな損失となるため、ガバナンスの強化における重要性が高まっています。
株主への安心感
ガバナンスに取り組んでいることで、健全な経営をしている企業であると判断されやすくなります。経営陣による不正の心配や企業の私物化が少ないと認識されることから、株主に安心感を与えることが可能です。株主が安心して投資しやすくなることで、安定した経営をつづけやすくなります。
コンプライアンスとガバナンスの違い
コンプライアンスとガバナンスは混合されることがありますが、次のように意味合いが大幅に異なります。
- 目的の違い
- 必要な理由
目的の違い
コンプライアンスは、社会規範や法令など社会のルールを守ることが主な目的です。企業はCSR(CorporateSocialResponsibility、企業の社会的責任)を果たすことが必要ですが、CSRを果たすためにはコンプライアンスへの取り組みが前提となります。そのため、コンプライアンスを守ることが企業が社会から信頼されて価値を維持することにつながります。
対して、ガバナンスは企業が自社を管理したり統制したりすることが目的です。ガバナンスを進めることで、社会規範や法令違反することを防止できるためコンプライアンス機能が含まれているといった考え方もできます。
必要な理由
コンプライアンスが必要である理由として、社会的信用を得ることや従業員のモチベーション向上が挙げられます。コンプライアンスを遵守することによって、ステークホルダーの評価を高めることが可能です。さらに、従業員が働きやすい環境つくりをできることから従業員のモチベーションが上がり、離職率を下げることにつながります。
企業がガバナンスを必要としている理由としてあげられるのは、健全な企業経営をおこなうことによってステークホルダーを始めとした利害関係者の利益を守ることです。たとえば、ステークホルダーに対して虚偽の報告をおこなうと法律違反となるだけでなく、ステークホルダーや社会的信用を失うことになります。
まとめ
コンプライアンスは企業が規則や規範、法令などを遵守して活動することです。企業として守るべき社会的ルールや法令を破ることによって、世間からの信用を失い大きな経済的損失につながります。
対して、ガバナンスとは企業の管理体制のことです。企業は、ガバナンスの強化を目的としてコンプライアンスを遵守しリスクマネジメントをします。このため、コンプライアンスはガバナンスに包括されるといった関係性です。