- 経営戦略
CSVとパーパス
CSV(Creating Shared Value)とは共通価値の創造といった意味があり、ビジネスと社会貢献を両立させる考え方のことをいいます。世界ではもともとCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)といった考え方が主流で、企業が経済活動を進めていくうえで、社会に対して影響することに対し法令遵守や環境対策などをおこなうことにより責任を持つことが目的でした。
しかし、2010年代に入りCSRだけでは新しい価値を創造するのはむずかしいと言われるようになりました。そこで、CSRに変わってCSVが主流になったのです。CSVとはビジネスを通して社会的課題に取り組むことがCSRとの大きな違いです。
近年では新たにパーパス経営といった考え方もあります。パーパス経営とは企業の存在意義を重要視した企業経営であり、社会的にどのように貢献していくかといった意思表示をすることです。
CSVとは
CSV(Creating Shared Value)とは、自社のビジネスを通して社会貢献をして共通価値の創造をすることをいいます。
CSVはただリスクマネジメントとして社会貢献をするだけではなく、社会貢献を新たなビジネスチャンスととらえているのが大きな特徴です。例えば、2015年にフランスのパリで温室効果ガス排出削減の取り組みをすることが採択されました。日本でもこの取り組みに参加しており、エコに対する考え方が広まっています。
そこで、ハイブリッドカーをはじめとした環境に配慮した新しい商品やビジネスが誕生しています。これらはすべてCSVに該当しており、環境に配慮することをビジネスチャンスにつなげているのです。
CSVとCSRの違い
CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)とは法令遵守や環境対策などをおこなうことによって、社会にもたらす影響に対して責任を持つことをいいます。企業は利潤を追求するだけではなく社会貢献をすべきだといった考え方です。
CSRが登場したきっかけとして、日本が高度成長期において経済活動を優先することから環境対策をないがしろにしていた部分があったためです。なかには法令を守らないため社会に対して迷惑をかけたケースもありました。そこで、企業が経済活動を進めていくうえで社会貢献が重要であるとの考え方が主流になったのです。
しかし、ビジネスとは別に社会貢献に向き合うCSRだけでは新しい価値を創造するのはむずかしいとされ、ビジネスを通して社会貢献を進めていくCSVが世界でも主流となりました。
パーパスとは
パーパス(Purpose)とは目的や意図などを意味しますが、経営では存在意義といった意味になります。つまり、社会において企業が存在している目的を表すことになります。
パーパスの意味
社会において企業の存在意義を示すのは決して最近のことではなく、企業理念において説明されることが一般的でした。近年パーパスといった言葉をよく使うようになったのは、CSV経営が注目されるようになってからです。
CSVとは企業の共通価値であり、社会において企業価値をより明確にしながら経営することが当たり前のようになりました。ビジネスにおいて社会貢献につながることにより、さまざまなステークホルダーから信頼を得られたり、ブランド力が上がったりするなどのメリットがあることからパーパスが取り入れられるようになったのです。
もともとは社会に役立つこととビジネスを別に考えていたCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)が主流でした。しかし、企業が利益を生み出しながらさらに社会貢献ができるCSVといった考え方に代わりました。社会貢献とビジネスを両立しながら戦略的にアプローチする方法です。
CSV経営を成功させるためには、企業の存在感をステークホルダーにアピールすることが必要であり、そこで注目されたのがパーパスです。パーパスによりビジネスの方向性や社会に対して貢献できることをステークホルダーに明確にすることで、新しいビジネスモデルを構築することにもつながっています。
ミッション・ビジョン・バリューとの違い
ミッションには使命や意義といった意味があり、ビジョンにはめざすべき姿や方向性といった意味合いがあります。対してパーパスとは、社会においてそれぞれの企業がこうあるべきだといったメッセージです。
つまり、ビジョンはこのような企業になりたいといった構想でありパーパスは存在意義を伝えるメッセージとなります。ミッションは、ビジョンやパーパスを実現化するためにすべき行動内容を言葉で示したものです。さらにバリューとは、ミッションを達成するために具体的にすべきことを伝えていることが一般的です。
企業によって伝え方が異なりますが、一般的にはこのような違いがあります。
パーパスの活用方法
社会的貢献を目的としたビジネスを進めている企業のなかには、これまで以上にCSVに取り組むことを指標として社会と価値を共創している場合があり、CSVに取り組んでいる企業の多くは、パーパスを表明しています。
キリンホールディングス
キリンホールディングスは、世界のCSV先進企業になるといったパーパスを表明している企業です。
「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを目指しています。このKV2027の長期非財務目標として、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針が「CSVパーパス」です。
引用:CSVパーパス(キリンホールディングス)
ネスレ
ネスレでは食の持つ力で人々の生活の質を高めることをパーパスとして掲げています。自宅で簡単にスーパーフードが摂取できるような新感覚スムージーを提供したり、包装材料を2025年までに100%リサイクル、もしくはリユース可能にしたりするなどさまざまな目標を掲げています。
ネスレは、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます。
引用:企業情報(ネスレ)
富士通
富士通は2020年に新しく次のようなパーパスを設定しました。
イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと。
引用:共感・信頼をベースとしたマネジメントへ、富士通が実践する新たな評価制度とは(富士通)
パーパスを実現するために、2021年からConnectとよばれる評価精度を導入しました。Connectの一番の特徴はパーパスを基にして描いたビジョンに対してどれだけのインパクトを与えたかによって評価されます。さらに、企業としてだけでなく個人のパーパスも評価の基準に含まれます。
まとめ
パーパスは周りのステークホルダーに、企業の存在価値や社会貢献などを伝えるものです。これまでも企業理念で存在価値を伝えることはあったのですが、パーパスとしてより注目されるようになったのはCSVといった考え方の影響が大いに関係します。
CSVとは企業の共通価値であり、売り上げを上げることと社会貢献をすることを両立させる経営の考え方です。社内外のステークホルダーに、企業が取り組んでいることや存在意義をメッセージとして伝えられるのがパーパスです。
パーパスを伝えることによって、ステークホルダーからの信頼度を上げることができ、新しいビジネスが生まれる可能性もあります。