2022.09.22

新規顧客獲得にかかる費用(CAC)

CACとは新規顧客獲得にかかる費用のことです。CACを活用すると自社に適したマーケティング手法を把握できるため、費用対効果の高い集客が可能となります。

また、CACはSaaSビジネスに重要な要素です。SaaSはこれまでの商品を売り切るビジネスとは異なり、継続的な利益獲得を目指したものです。新規の顧客を獲得すれば、一定期間は利益の獲得が期待できるため、新たなビジネスモデルとして多くの企業で取り組みが進んでいます。

CACとは

CAC(Customer Acquisition Cost)とは顧客の獲得にかかる費用を意味し、事業存続のために必要な指標です。一定期間内で顧客を獲得するためにかけたコストを、実際に獲得した顧客の数で割ることで算出可能です。

CACはOrganic CAC、Paid CAC、Blended CACの3つに分類されており、チャネル別に細かくCACを算出したり、総合的に算出したりしながら集客方法の評価と改善をおこないます。LTV(Life Time Value)とともに、継続的に売上を維持するビジネスにとってCACは重要なものとなっています。

CACの重要性

近年におけるマーケティングの媒体はインターネットの普及によって多様化されているため、どのチャネルがもっとも有効で費用対効果が高いのか分析する必要があります。効果の高いマーケティング媒体に投資を集中させることで、無駄なコストの削減につながるため、業務の効率化が可能です。

新規顧客を獲得するためにかかる費用として、マーケティングチャネルにはWEB広告やSNSなどオンラインでの活動に必要なコストや、イベントや展示会などオフラインでの活動に必要なコストが挙げられます。セールスではテレアポや訪問など、すべてを含めたものがCACとされています。

チャネルごとにCACを算出することで、どのマーケティングチャネルにどれほどの効果があるのか分析しやすくなり、投資を集中させるべきチャネルを把握可能です。ただし、CACを算出するだけではなく、LTVとのバランスから事業が上手く成り立っているか評価することも大切です。

LTVとの関係性

LTV(Life Time Value)とは、顧客の生産価値を意味するものであり、顧客が商品やサービスを購入してから離脱するまでに得られる利益のことです。毎月一定額を支払う月額制のサービスであるSaaSビジネスにおいて、LTVとCACの関係性はもっとも重要です。CACが LTVの数値を上回ってしまう状況では事業存続は厳しく、いかにLTVを向上させたままCACを低下させるかを考える必要があります。

LTVを向上させるには既存顧客との良い関係性を構築し、購買行動の促進や継続期間の延長に努めると良いです。また、クロスセルやアップセルで単価を上げていくことも得策です。一方で、CACを低下させるには効果の高いチャネルに投資を集中させることが効果的であるうえ、無駄なコストを削減できます。

CACの種類

CACには3つの種類があり、具体的には次のとおりです。

  1. Organic CAC(オーガニックCAC)
  2. Paid CAC(ペイドCAC)
  3. Blended CAC(ブレンデッドCAC)

Organic CAC(オーガニックCAC)

Organic CACとはコストをかけず、自然に獲得できた顧客単価を意味します。既存ユーザーの紹介やメディア、検索などからの自然流入によるものであり、広告の出稿などマーケティングコストはほとんどかからずに新規顧客を獲得することです。

CAC算出による分析で重要視する点は、コストをかけた場合の費用対効果です。コストのかからないOrganic CACの算出では、別種のCACであるPaid CACとしっかり区別する必要があります。

Paid CAC(ペイドCAC)

Organic CACとは、コストをかけて獲得した顧客単価を意味します。広告やイベントなど、顧客獲得を目的にコストをかけたチャネルを展開し、投資したすべてのコストを獲得件数で割り出すものです。チャネル別にPaid CACを算出し、どのチャネルがもっとも効果的であるか、または効果のないものかを把握できます。

Blended CAC(ブレンデッドCAC)

Organic CACとPaid CACを合わせたものをBlended CACといいます。CACを総合的に算出するものであり、一般的にCACといわれる場合はBlended CACを指し、事業を継続するうえで適正な数値であるかの判断が可能です。新規顧客は増加しているのにもかかわらず赤字である場合は、Organic CACを上げてPaid CACを抑えるといったように、事業における施策の指標となります。

CACの算出方法

CACは以下の計算式で求められます。

CAC = 新規顧客獲得にかかるコスト ÷ 新規顧客獲得件数

新規顧客獲得にかかるコストには広告費や人件費など、獲得のために費やした費用すべてが該当します。チャネル別に評価する場合は短期間で区切ってCACを算出すると良いです。

ただし、新規顧客の獲得件数のなかには、定めた期間よりも前段階からの営業活動の結果が含まれてしまっている点に注意が必要です。期間を区切って正しくCACを算出するには、Organic CACによる自然流入の獲得件数を除く必要があり、正しい評価を実現することができます。

また、マーケティングの総合的なCACは長期間で算出してください。CACを算出する際はLTVも合わせて評価することも大切です。

CACの適切な数値

CACの適切な数値はLTVと合わせて算出するユニットエコノミクス(Unit Economics)の数値が重要になります。ユニットエコノミクスとは顧客1人あたりの採算性を表す数値であり、SaaSビジネスではLTVがCACの3倍であることが適切とされています。

また、ユニットエコノミクスの数値は投資家にとっても重要な判断材料となります。ユニットエコノミクスの数値が1を下回ってしまうと事業存続は困難であり、LTVまたはCACの改善が必要です。

一方で、CACを下げ過ぎてLTVがCACの10倍、20倍となった場合、黒字で順調だと判断されるよりも企業の投資が不足しているのではないかと投資家には判断されてしまいます。そのため、CACの数値は高過ぎず、低過ぎないLTVの3倍程度を保つことが重要視されています。

CACの活用事例

WEBサービス会社の事例

オンラインによるストレージサービスを提供する企業は、高騰する広告費用に課題を抱えていました。そこで、知人にサービスを紹介することで、紹介する側とされた側ともに容量の追加を得られるキャンペーンを実施します。

サービス自体は非常にシェアされやすい製品であったため、紹介プログラムが効果的な取り組みとなり、新規登録ユーザー数の上昇に成功しました。CACで表すと、Organic CACを増やし、Paid CACを低下させることに成功しています。

フードデリバリーサービス会社の事例

フードデリバリーサービスを提供する企業では、WEBサービス会社の事例と同様に、紹介キャンペーンを実施しました。既存ユーザーと紹介された新規登録ユーザーは、ともに無料の利用チケットを配布されるため、利用者は急激に増加します。既存と新規の双方が恩恵を受けられる仕組みになっていたため、ユーザーが自発的に宣伝をしてくれることでOrganic CACの増加につながりました。

まとめ

CACとは新規顧客獲得にかかる費用を意味し、事業の存続に必要不可欠なものです。自社に最適なマーケティング手法を確認でき、効率的に多くの顧客を集客できます。CACはOrganic CACやPaid CAC、Blended CACと3種類に分かれ、事業の方向性を定めるのに大きく役立ちます。

また、CACはSaaSビジネスに大切な指針であるため、うまく活用することで一定の利益を維持できるようになります。事業の利益拡大を目指したいのであれば、CACで費用対効果を高めつつ取り組みを進めることが大切です。

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