- 組織人事
タレントマネジメントの課題
会社組織は1つとして同じものがないようにタレントマネジメントの方法も多種多様です。そのため、タレントマネジメントの導入や実践においてはさまざまな課題を想定しなければなりません。特にタレントマネジメントが経営課題の解決や事業の発展につながらない場合には注意が必要です。
タレントマネジメントの導入における課題
タレントマネジメントは導入が肝心です。しかし、さまざまな課題に直面するのも導入時です。タレントマネジメントの導入においては次のような課題があります。
- 人材情報の可視化
- 人材配置
- 人事業務の効率化
- 人材育成
人材情報の可視化
タレントマネジメントでは社内の人材情報を集約し、可視化しなければなりません。しかし、社内のどこに、どのようなタレント人材がいるかわからない場合があります。
このような場合、従業員の協力を得て社内ヒアリングやアンケートの実施、キャリアシートの提出などを行い、必要な情報を集めます。
従業員一人につき、経歴、資格、得意分野、業績など、すべてを把握しようとすると情報量は膨大になります。タレントマネジメントに特化した管理システムなどを導入すると効率的な情報収集、管理が可能です。
人材配置
従業員のタレント情報を収集、把握できても実際の人材配置に活かさなければ意味がありません。従業員が自身のタレントを適材適所で発揮できるように組織を横断するダイナミックなポジション転換などができるようにすることが大切です。
定期的に従業員、上長、人事部の間で面談を実施し、最適な人材配置をスピーディに実現できるようにしなければなりません。
人事業務の効率化
タレントマネジメントと一言でいっても、そのなかにはさまざまな業務が含まれます。情報の収集・管理だけでも相当な工数を使うほか、従業員と個別に面談をしたり、配置転換を調整したりするためには膨大な時間を要するはずです。そのため、タレントマネジメントに関わる業務を効率化しなければ人事業務を圧迫する可能性があります。
タレントマネジメントシステムを導入して管理や検索の負担を低減することはもちろんですが、アンケートや面談の日程をあらかじめ決めてしまうというようにタレントマネジメントを日常の業務に組み込んでしまうことが重要です。上長への協力も事前に要請しておき、準備不足や認識不足が起きないようにします。
人材育成
タレントマネジメントは5年〜10年単位という長期的な取り組みです。決して成果を急がず、内容を是正しながら計画的におこなわなければなりません。
計画的な育成を実現するためには長期的に育成状況をモニタリングできる仕組みを整える必要があります。定期的なアンケートなどの調査をおこない、人材の育成状況を追いかけられることが重要です。電磁的な記録を残し、従業員が企業に所属している限りは常に状況が把握できるようにしなければなりません。
タレントマネジメントの実践における課題
タレントマネジメントは、実践するにあたってもさまざまな課題が生じます。
経営陣の知識不足
タレントマネジメントを実践するうえでは経営陣が足並みを揃える必要があります。タレントマネジメントは経営戦略とも大きく関わる施策のため、経営陣の知識や理解は必要不可欠です。しかし、タレントマネジメントという考え方は古い日本の企業文化と相容れない部分もあるので経営陣が正反対のことをしてしまう場合もあります。
そういった場合は他社事例をもとに勉強会を開いたり、セミナーなどへの参加を促すなど、知識を深める機会をつくることが大切です。
人事戦略が明確になっていない
タレントマネジメントは採用活動にも大きく影響します。しかし、毎年の採用人数は、経済状況や会社の状況などさまざまな事情によっても変化せざるを得ません。新型コロナウィルスのような想定外の事態により、タレントマネジメントに基づく人材採用をしたくても思うようにいかなかった企業も多いはずです。
このように人事戦略が明確でなかったりうまく実施できなかったりするとタレントマネジメントを導入する目的も明確にならず、効果が曖昧になってしまいます。タレントマネジメントは企業の将来への投資と考え、できる限りしっかりと実践していくことが重要です。
タレントマネジメントの定着段階における課題
PDCAサイクルを回す
タレントマネジメントは始めてすぐに効果がでるものではありません。また、効果がわからないからといってすぐにやめる必要もありません。タレントマネジメントに限らず、計画を実行する際はPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)サイクルを回すことが大切です。
タレントマネジメントのPDCAは、以下のようになります。
- Plan(採用・育成計画書の作成)
- Do(採用・配置)
- Check(人事評価・レビュー)
- Action(異動、能力開発)
データ管理
タレントマネジメントを継続していくためには常に最新の人材データを確保する必要があります。定期的にアップデートし、その時々で最適なアクションが取れるようにします。
基幹システムとAPI連携できるシステムなどを活用すれば、定期的なアップデートの負担を低減することが可能です。
目的の再確認
タレントマネジメントは、ゴールを見据えながらおこなうことが重要です。ゴールとはすなわち企業の経営課題を人材の力で解決することにあります。タレントマネジメントをおこなうなかで本当に目的やゴールと結びついているのか振り返ることが大切です。
まとめ
タレントマネジメントは、人材という繊細かつ変化しやすい対象を扱うため、機械的に処理することは困難です。企業の課題や組織の状況もさまざまであることから、万人にとっての正解も存在しません。
そのため、導入・実践するにあたっては大小の課題にぶつかる企業は多く、タレントマネジメントを事業の発展に活かす難しさを実感する場合も少なくありません。あらかじめどのような課題が生じがちなのか十分に把握しておき、柔軟に対応することが重要です。