- 経営戦略
パーパス経営の事例
パーパス経営とは会社が存在する意義を重要視した経営方針のことです。企業が社会にどのような貢献をしているのか消費者に示すことで、ロイヤリティの向上が期待でき、顧客数と売上の増加を目指すことができます。
環境の変化により解決が求められる問題が増えたことや、技術レベルの向上により質での差別化がむずかしいといった背景から注目を集めるようになりました。企業を成長させるメリットはありますが、パーパス経営を実行する前に注意点を把握するべきです。
パーパス経営とは
パーパス経営とは企業が存在する意義に主軸をおいた経営方針を意味します。パーパス(Purpose)は目的を意味する言葉であり、近年ビジネスシーンでよく用いられるキーワードです。
売上をアップさせるために消費者へモノを販売する会社ではなく、どんな目的を持って企業を拡大するのか、何を目的として社員が業務に取り組む会社であるのかを明確にします。長期間にわたり企業の成長を促進するためには、パーパスを示し、企業の存在意義を明らかにすることが求められています。
パーパス経営が注目を集める背景
注目を集める背景としては、環境の変化と技術レベルの向上が挙げられます。現代では環境破壊により持続可能な社会づくりが求められており、会社が単に安くモノを売るだけでは顧客から支持を集めることはできません。賛同や共感を得るためには、社会への貢献に向けて無駄な消費をおさえる施策を打つ必要があります。
また、商品やサービスの質だけでは競合他社との差別化がむずかしく、会社の売上を伸ばすことができません。そこで、他社に勝つ強みを持つためには会社が存在する価値について明らかにするのが良いと、多くの企業は考えるようになりました。
会社の存在意義を公表すれば、自社オリジナルの立ち位置を確保することができ、差別化にもつながります。さらに、多くの消費者から共感や関心を得ることにつながり、人気の向上が期待できるとされています。
パーパス経営のメリット
パーパス経営のメリットは次のとおりです。
- ロイヤリティの向上が期待できる
- 社会問題を解決できる
顧客だけでなく、社員からもロイヤリティの向上が期待できます。企業が何を目的としているのか、周囲にどのような影響を与えているのかなど存在する意義を明確にすることにより、消費者からの印象や社員のモチベーションを高めます。その結果、多くの方から支持を集めたり、企業のブランド価値も向上させたりすることができるはずです。
また、多くの企業が掲げるパーパスは社会問題の解決に役立つものであるため、パーパスを軸とした経営戦略は社会に貢献することができます。社会問題を解決することで、誰にとっても明るい未来を築くことが可能であるうえ、持続可能な社会に向けた取り組みは多くの方から評価されるはずです。
パーパス経営の手順
パーパスを中心に考える経営戦略は、次の手順で進めます。
- 企業のパーパスを明確にする
- パーパスを言葉にする
- パーパス経営を実行する
パーパス経営は、目的を明確にしないと始まらないため、まずはパーパスを明確化します。パーパスは単に活動する目的ではなく、会社が社会にどのような価値を生み出すのか、目的の実現に向けてどんな志をもつのかなど社会的価値を伝えるように考えるべきです。
目的がはっきりしたらパーパスを言葉にまとめます。海外の企業ではパーパスを声明にすることで多くの消費者に伝え、支持を集めています。より大勢の人へパーパスを伝えるためにはシンプルで分かりやすい言葉をつくることが重要です。
言葉にまとめたあとは、パーパス経営を実行し、顧客や社員へパーパスを伝えます。多くの方から支持を集めるためには、企業を動かすトップ層の方が率先してパーパス経営をおこなうべきです。
パーパス経営の成功事例
パーパス経営の意味を理解してはいるが、具体的なイメージができていない方が少なくありません。成功事例を参考にすることで、パーパス経営を成功に導くヒントを得ることができます。
ソニー
ソニーは電気製品を販売する大手企業です。2019年よりパーパスを掲げはじめ、コロナ禍において社会に大きく貢献することになります。消費者のストレス緩和に向けて、新しい家庭用ゲームの発売や大人気アニメ作品の映画上映など、さまざまなイベントを実施することで順調にパーパス経営を成功させています。
ほかにも、新型コロナウイルスにより大打撃を受けた方のために支援基金を集め、日本人のみならず、海外の方への支援もはじめました。
パタゴニア
パタゴニアはアパレル事業を展開するアメリカの企業です。パーパス経営の方針により、すべての事業によって得た売上の1%を地球のために寄付しており、寄付先として挙げられるのが気候変動や食糧問題など社会的な課題を抱える環境です。
寄付以外にも、事業で利用する原料は地球に優しいものであるなど、社会問題に貢献しています。その結果、多くの人々から共感や支持を集めることになりました。
東京海上ホールディングス
東京海上ホールディングスは保険会社を傘下とする持株会社です。東京海上ホールディングスが掲げるスローガンには、お客様や地域社会のいざを支え、お守りするというものがあります。創業してから変更することはなく、今ではスローガンをパーパスとして定めており、多くの消費者や社会へと貢献しています。
三井住友トラストホールディングス
三井住友トラストホールディングスは信託銀行を傘下に置く持株会社です。2020年より信託の力で、新たな価値を創造し、お客様や社会の豊かな未来を花開かせるといったパーパスを掲げました。従業員はパーパスの実現に向けて日々の業務への取り組みをおこない、消費者や社会に大きく貢献できることを目指しています。
ネスレ日本
ネスレ日本とは食料や飲料を販売する世界規模の大手企業です。ネスレ日本は食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきますといったパーパスを掲げ、社会へと貢献しています。
具体的にはコーヒーによる健康習慣の推奨や医療機関への製品寄贈などが挙げられ、社会問題の解決に向けた取り組みをおこなっていることは明らかです。
パーパス経営における注意点
パーパス経営における注意点は次のとおりです。
- 社会的影響力を示す
- パーパスウォッシュを避ける
パーパスは社会的な問題を解決するものがベストです。現代では環境や人権、私生活など、さまざまな社会問題が存在しているため、いち早く問題の解決が求められています。むずかしい問題に対して企業がどのように役立つのか示すことで、多くの方からの支持を集めることが可能です。
また、パーパスウォッシュ(公表したパーパスに対して、実際の活動がともなっていないこと)は避けるべきです。発言と行動に大きな差があると、大勢の方から信頼を失うことになり、人気も下降してしまいます。
まとめ
パーパス経営とは会社の存在意義に重点をおいた経営方針のことです。注目される背景としては持続可能な社会が求められていること、技術レベルが向上しており、質の差別化がむずかしいことが挙げられます。
パーパス経営は顧客や社員からのロイヤリティ向上や信頼度アップなどのメリットがあるため、企業の成長を促進することは間違いありません。しかし、パーパスとして掲げた言葉と実際の活動がともなっていないと、顧客や社員からの信頼度は下がり、企業の成長を止めることになるので注意が必要です。