2022.09.30

中小企業の事業継承における問題

事業継承とは経営者が後継者へ会社の資産を引き継ぐことであり、事業存続のために欠かせないものです。規模を問わず事業継承は多くの企業で進められてきましたが、近年は後継者不在や教育不足などの問題が見られるようになりました。

特に中小企業では問題による影響が強く、黒字経営であるにも関わらず廃業してしまうといったケースが見受けられます。しかし、さまざまな問題も解決策を実行すればスムーズに事業継承を実現可能です。

中小企業の事業継承における問題点

中小企業が事業継承で抱える問題点として以下の内容が挙げられます。

  1. 後継者不足
  2. 後継者の教育不足
  3. ワンマン経営
  4. 経営状態の不安
  5. 事業継承の相談者不在

後継者不足

後継者不足で頭を抱えている企業は増加しており、原因はさまざまです。親族内承継の場合だと親族は身近で親の苦労を見ており、経営者になると大きな責任を背負うようになると分かっているため、経営者になりたくないと考える方が増加しているのが現状です。

親族以外のなかから後継者を選ぶとなると、外部からの後継者に適任な人物の選定や教育に手間がかかり、事業継承を完了させるまでに時間がかかります。万が一経営者としての資質や能力を持たない人物が後継者になると、従業員との対立などの問題が起こってしまいます。

後継者の教育不足

経営者として相応しい人物を育成させるためには重要な役割を与え、事業を存続できるさまざまな知識と技能を身に付けさせなければなりません。そのため、後継者の育成には約5から10年かかるとされており、事業継承には多くの時間が必要です。

あらゆる企業では育成に十分な時間を確保できず、理想とする後継者が見つからないケースが見受けられます。また、経営者の高齢化による焦りから後継者の育成を急がせてしまい、育成が不十分のまま事業継承してしまうリスクも考えられます。後継者の育成には早い段階での取り組みを意識し、十分な育成体制の整備が大切です。

ワンマン経営

人材が限られている中小企業では、経営者のワンマン経営になる可能性が高い傾向にあります。ワンマン経営の場合、経営者が誤った判断をした場合でも、自主性のないまわりの従業員は何も言えません。経営者一人に権力が集中してしまうと、経営者が会社の引き継ぎに興味ない場合、事業継承の準備に大きな遅れが生じてしまいます。

経営状態の不安

事業継承により状況が大きく変わり、経営状態が不安定になる可能性があり、特にワンマン経営ではその傾向が強くあります。会社の経営状況が悪いことで、後継者は事業継承を断る可能性があるため、現経営者は経営状況の改善が必要です。

しかし、会社の経営状況の改善を待っていることで、事業継承を行う時期が遅れてしまうと、事業継承について適切な準備ができない可能性があるため注意しなければなりません。また、事業継承で企業や資産などを引き継ぐことで、後継者のリスクを把握すると良いです。

事業継承の相談者不在

事業継承に詳しい相談者がいないと計画を立てることさえ困難です。企業によっては相談者がいない環境下で走り続けた結果、廃業してしまった会社も少なからず存在します。

事業継承の失敗を防ぐために、社内に会社の引き継ぎについて詳しく知る人物がいない場合は、専門的知識がある相談者に話を聞くことが大切です。相談者の力を借りることで、適切な知識を身に付けることができます。

事業継承に失敗して廃業したあとの状況

事業継承に失敗し、廃業してしまった場合に考えられる状況は次のとおりです。

  1. 廃業のコストがかかる
  2. 従業員が職を失う
  3. 自社商品が消失する

廃業のコストがかかる

廃業には多額のコストが必要であり、支払うコストとしては従業員への退職金や不動産の売却などが挙げられます。廃業コストによって余剰の金額が少なり、廃業後の生活に影響を及ぼす可能性があるため、事業継承の失敗は大きな損害とつながります。経営者は負債を抱えていることで個人資産を売却しなくてはならず、それでも個人負債が残った場合は廃業後も負債を返却しなくてはなりません。

従業員が職を失う

廃業する会社の従業員は退職しなければならず、職を失うことになります。事前に廃業を知らされていれば転職の準備ができますが、廃業が急である場合、十分な準備期間が設けられていないため、満足のいく転職ができない可能性があります。

また、職を失った従業員のなかには、高齢であることから転職先を見つけるのがむずかしい方もいるはずです。廃業は従業員に大きな負担を与えてしまうため、経営者は廃業により生活が厳しくなった従業員との信頼関係が壊れる可能性は高くなります。

自社商品が消失する

自社商品は多くの時間を費やし、作成した会社にとって非常に特別なものです。しかし、廃業となると自社で開発した商品やサービスはなくなり、今まで努力して積み上げたものが消失してしまいます。また、取引先やサービスを利用しているお客様など、周りの方々にも影響を及ぼす可能性があるため、経営者は大きな責任を感じることにつながります。

中小企業の事業継承における問題を解決する方法

中小企業の事業継承における数多くの問題は、以下の方法で解決できます。

  1. 早めに準備をはじめる
  2. 複数の選択肢を用意する
  3. 経営状態を明確にする

早めに準備をはじめる

後継者の育成には多くの時間がかかるため、早めの段階で準備に取り掛かる必要があります。現時点では後継者に悩んでいなくても、数年後には大きな問題となる可能性があるため、早めの準備は大切です。

早めに事業承継について準備をすることで後継者の育成だけでなく、税金対策や買い取り資金の準備などに多くの時間をかけられます。そのため、事業継承の成功を実現可能です。

複数の選択肢を用意する

事業継承方法に選択肢を用意することで、多くの問題を簡単に解決できる可能性があります。たとえば親族に後継者が見つからない場合、親族外承継やM&Aを活用し、早い段階で取り組むことで、会社や雇用を守れます。

また、複数の選択肢を用意することで、後継者の選定の幅も広がるため、後継者不足を解決可能です。事業継承ではひとつのものだけに目を向けず、視野を広げて多くの選択肢を考えることが大切です。

経営状態を明確にする

現経営者は後継者に対して、経営状態を明確にすることが大切です。経営レポートや財務諸表などを作成し、会社の現状を後継者に伝えると、事業承継をスムーズに進めることができます。

会社の経営状況が悪い場合でも、後継者が現状を認識していなければ、適切な対応を取ることができません。そのため、経営状況良し悪しに関係なく、経営者は後継者に経営状態を明確に伝え、協力して今後を考えるのが最適です。また、資金操り表は金融機関との関係につながるため、財務諸表を定期的に提出し、金融機関との信頼関係を築くことも大切です。

まとめ

事業継承とは経営者が後継者となる人物に会社を引き継ぐことを意味し、事業の存続や従業員の雇用に必要なものです。事業継承に失敗して廃業に追い込まれると、従業員が職を失う、自社商品が消失するなどの状態に陥ってしまいます。

しかし、事業継承を成功させるためには多くの問題があり、頭を抱える中小企業は少なくありません。後継者の不在や教育不足、ワンマン経営などの問題をクリアするには早めに準備をはじめる、経営状態を明確化するといった解決策に取り組む必要があります。

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