2022.09.22

人材ポートフォリオが必要とされる背景

人事マネジメントを考えるうえで、企業目標を達成するために適材適所に人材を最大限に活用できる人材ポートフォリオが重要になっています。働き方改革や高齢化、少子化が進みさらに雇用形態の多様化など限られた人的資源を活かすためにも、タイプを可視化できる人材ポートフォリオが必要です。

人材にもマネジメントが得意な人、クリエイティブな仕事が得意な人などがおりそれぞれ適材適所に配置をすることにより、生産性の向上や従業員のモチベーションアップにつながります。

人材ポートフォリオが必要とされる背景

人材ポートフォリオが必要とされる背景には次のような点が挙げられます。

  1. 働き方改革
  2. 高齢化・少子化
  3. 雇用形態の多様化
  4. VUCA
  5. ISO30414への対応

働き方改革

働き方改革とは2019年に厚生労働省が発表した改革で、働く人が柔軟な働き方を自分で選べるような企業文化や風土にすることが目的です。

日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革。働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土も含めて変えようとするもの。働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする。
引用:働き方改革の実現(首相官邸)

つまり、企業は従業員一人ひとりのスキルや仕事をしていく上での目標を理解し的確な配置をすることが重要です。そこで、人材ポートフォリオを活用して従業員一人ひとりのことをより理解することが必要です。

高齢化・少子化

日本の総人口は2019年で1億2,617万人となっていますが、そのうち3,589万人は65歳以上であり総人口に対して28.4%を占めています。さらに75歳以上は1,849万人と総人口に対して14.7%です。1950年には65歳以上の人口が総人口の5%に満たなかったことを考えると高齢化率が上昇していることがわかります。
参考:高齢化の状況(内閣府)

出生数を見ても年々減り続けており、2019年の86万人が過去最少となっています。

出生数、合計特殊出生率の推移画像出典:出生数、合計特殊出生率の推移(厚生労働省)

このように、高齢化や少子化が続く日本において人材の確保が重要な課題となっています。そこで、人材の最大限に活用し採用業務を効率的に進めるためにも人材ポートフォリオが重要です。

雇用形態の多様化

働き方改革において一人ひとりが良い将来の展望を持ち得ることを重要視していることや、ワークライフバランスを保つことなどさまざまな理由から雇用形態が多様化しています。非正規雇用やパート雇用者の比重の向上、またフリーランスとして独立して働くなどさまざまな働き方があります。

終身雇用制度はなくなりつつあり、企業のために長時間の残業や転勤を伴う働き方があたりまえではない時代です。そこで、従業員一人ひとりのキャリア設計を可視化する人材ポートフォリオの需要が高まっています。

VUCA

VUCAとは4つの単語を並べて頭文字をとった言葉です。

  1. Volatility(ボラティリティ、変動性)
  2. Uncertainty(アンサートゥンティ、不確実性)
  3. Complexity(コムプレクシティ、複雑性)
  4. Ambiguity(アムビギュイティ、曖昧性)

VUCAとは競合他社の動きや社会情勢など、常に外部環境が変動していることを表しています。そこで、外部環境の変化に対応できるような人材育成が必要です。これまで企業に浸透している働き方だけでなく、従業員一人ひとりの多様性を受け入れられるような人材マネジメントが必要になります。人材ポートフォリオは環境の変化に対応するためにも重要なツールの1つです。

ISO30414への対応

ISO30414とはISO(国際標準化機構)によって2018年に出版された人的資本情報開示に関するガイドラインのことをいいます。アメリカではISO30414を義務化する動きがでているほど力を入れており、日本でも同じ流れが来る可能性があります。人材ポートフォリオはISO30414に適用されているため重要です。

人材における要件定義

人材における要件定義とは次の点が挙げられます。

  1. スキルや職務経験
  2. 意欲や性格
  3. 企業が求める人物像

スキルや職務経験

スキルや職務経験など、業務に必要な項目を明確にします。数値を使うことにより具体的に明確になり、企業にとってどのようなスキルや能力を求めているかを可視化することが可能です。また、MUST条件やWANT条件にわけて設定することが重要です。

意欲や性格

スキルや職務経験以外に、意欲や性格なども人材要件に含めます。例えば、営業職であれば人当たりがよくて相手の目線にあわせて話せる人が向いています。性格を変えるのは容易ではなく、できるだけ向いている人を配置することが重要です。しかし、意欲も重要視すべきです。そのために、従業員一人ひとりのプランを明確にすることが大切です。

企業が求める人物像

企業が求める人材を明確にすることで従業員が企業を理解しやすくなり満足度が上がります。さらに、企業が求める人材が明確であれば、求職者にも伝わりやすくミスマッチを減らすことをはじめとして効率的な採用活動が可能です。

ゼネラリストとスペシャリストの設定

人材の特徴を説明する時にゼネラリストとスペシャリストといった言葉を使うことがあります。ゼネラリストはさまざまな場面においてオールラウンドに活躍できる人で、スペシャリストとは1つのことに特化した専門家のことをいいます。

ゼネラリスト

ゼネラリストは豊富な知識や経験を必要としており、多角的、客観的に物事を強化できる人です。幅広く知識や経験を持っていることから想定外のことが起きても、臨機応変に対応できるのが特徴です。スペシャリストは専門外のことに対しては不得意であることが多く、ゼネラリストがスペシャリストをカバーすることも少なくありません。

ゼネラリストに向いているのは管理職やマネージャーであり、自分だけでなく周りを的確に認識する力を活かすことができます。

スペシャリスト

スペシャリストは特定の分野において特殊技能を持っている専門家のことをいいます。さまざまな分野において専門家が存在しており、公認会計士や弁護士、医師などすべてスペシャリストです。さらに、ビジネスにおいて必要なアナリストやエンジニア、特定の研究におけるエンジニアなどすべてスペシャリストとよばれます。

人材タイプの分類

人類タイプは主に次のタイプに分類できます。

  1. クリエイティブ人材
  2. マネジメント人材
  3. オペレーション人材

クリエイティブ人材

クリエイティブ人材とはスペシャリストと同じ意味を持っており、専門性の高い人材のことです。デジタル化が進みDX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)を導入する企業が増えている現在において、クリエイティブ人材はより重要になっています。例えば、DXを推進するためには、ビジネスデザイナーやデータサイエンティスト、エンジニアなどさまざまなクリエイティブ人材が必要です。

さらに、特定の分野に特化している人材のことをエキスパート人材と呼ぶこともあります。

マネジメント人材

マネジメント人材とは、現在管理をはじめとしてマネジメントをする役割ができる人のことをいいます。人材ポートフォリオは人材マネジメントを成功させるためのツールの1つであり、マネジメント人材は企業の経営目標を達成させるために人材ポートフォリオを活用する立場にあります。

オペレーション人材

オペレーション人材とは、組織において決定したことを正しい方向に進めていく能力を持った人材のことをいいます。企業はさまざまな施策をおこないますが、それぞれ目標を達成するために正しい方向で進めていくことが必要です。そこでオペレーション人材が重要になります。

まとめ

人材ポートフォリオは人材マネジメントを効率的に進めるための1つのツールです。人材ポートフォリオが必要になった背景には、働き方改革や少子化など外部環境の変化に対応することが挙げられます。

従業員全員の能力や性格などを把握することにより、的確な人材配置をおこなうことが目的です。従業員のタイプによって、クリエイティブな人材なのかマネジメント人材なのかなどどのタイプにあてはまるのかを的確に判断することにより、企業の経営目的達成につなげることができます。

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