- 組織人事
AIを活用した人事評価制度
AIを活用した人事評価制度は、業務による負担の削減や従業員のパフォーマンス向上などのメリットがあるため、人事評価システムを導入する企業は増えています。人が評価をおこなうと偏りが生じ、評価に差が出てしまうケースが見受けられますが、AIであれば公正な評価を可能にします。
しかし、システムを導入するだけでは最適な評価につながらないため、意思決定は人の手でおこなう、導入する前にシステムを試すといった点に注意が必要です。
人事評価に活用されるAI
製造業や物流など、さまざまな分野で活用されるAI(人工知能)ですが、防衛省をはじめ、人事評価制度の分野でもAIの活用が進められています。AIはデータ処理に優れており、人の作業スピードをはるかに超えるため、単純作業の面では便利です。しかし、AIは人に代替できるレベルに達しておらず、あくまで作業をサポートする役割を持ちます。
人事評価にAIを活用するメリット
人事評価制度にAIを活用するメリットは次の通りです。
- 業務の負担を軽減できる
- 公正に評価できる
- パフォーマンスが向上する
業務の負担を軽減できる
AIの導入によって人の手でおこなう作業量が減るため、業務の負担を軽減できます。人事評価における作業には手間がかかり、従業員の負担は大きいです。そのため、効率を向上させ、作業にかかる負担を軽減したいと考える方は多々います。
高速なデータ処理ができるAIを活用することで、一連の作業がスムーズになり、負担や業務時間の削減が可能です。負担を軽減できれば従業員のモチベーション向上につながり、1人ひとりの作業の質も高まります。
公正に評価できる
AIを活用すると偏りなく基準を設定できるため、公正な評価が可能です。人の手でおこなう人事評価では個人によって基準が異なるため、評価にブレが生じます。
また、人事評価における業務は作業量が多いため人の手だけでは正確な評価がむずかしく、ミスが発生する確率は高いです。不当な評価が多発すれば従業員からの不満も積み重なり、業務に取り組むパフォーマンスは低下します。AIであれば大量のデータを分析することができ、短期間でミスやブレなく人事評価ができます。
パフォーマンスが向上する
AIは分析に長けています。集めたデータから仕事で成果を出す優良な行動パターンを導き出すことで、従業員のパフォーマンス向上が期待できます。人が人事評価をおこなう場合は時間や手間がかかり、欠陥部分を見落とすケースがありますが、AIはミスなくデータを処理できるため優良社員の特性の明確化が可能です。得た分析結果を従業員全体に共有し、スキルを均一化すると。全体的にパフォーマンス向上を目指せます。
人事評価にAIを活用する際の注意点
人事評価にAIを活用する際の注意点は以下のとおりです。
- 意思決定は人の手でおこなう
- 従業員に説明する
- 導入する前に試す
意思決定は人の手でおこなう
AIを活用することで基準にブレなく評価できますが、最終の意思決定は人の手でおこなう必要があります。現段階のAIは人に代替できるレベルではなく、あくまでもサポート機能として活用するものです。AIが評価した内容のまま意思決定してしまうと正当な評価が得られない問題が生じます。
評価に問題があった場合は評価者が訂正をおこなうことで、より正当な評価が可能です。また、AIの評価に頼りすぎると評価内容の根拠が不透明になり、従業員の不満につながるため注意が必要です。
従業員に説明する
人事評価の結果を出したあとは従業員へ評価内容の説明が必要です。評価に不満を持つ従業員が現れないよう、評価基準や根拠を明確にします。
回答や説明が不十分であると人事への不信感につながり、会社に対するエンゲージメントは低下してしまいます。どのような基準で評価がおこなわれたのか、評価を上げるためには何が必要であるのか具体的な提示が大切です。評価が不当であるとの声があった場合は、必要であれば評価の見直しを検討します。
導入する前に試す
AIを導入する際は、自社に適したシステムであるか確認するための試運転が重要です。システムの導入にはコストが必要であるうえ、従業員がAIを使った作業に慣れるまで一定以上の時間がかかります。
まずは小規模で導入をはじめ、自社に適性のある場合は規模を拡大します。AIの活用が不向きな企業もあるため、慎重な決定が必要です。
人事評価AIの活用事例
人事評価制度にAIを活用する企業は数多くあり、業務の効率化や公正な評価を実現させています。活用事例は導入の際の参考になるため把握は必須です。人事評価にAIを活用した事例は以下の通りです。
レタープレス
レタープレスはこれまで5段階評価を採用していましたが、4段階評価に変更すると、どちらでもないという選択がなくなりました。さらに人事評価制度をシステムにより可視化することで従業員が目標を達成できたのか、できていないのかはっきりし、社員の成長が感じられるようになります。AIを活用した人事評価システムを利用し、より適切な評価を実現できるよう取り組みを進めています。
三菱重工
三菱重工ではキャリア採用が増え、さまざまな経歴やバックグラウンドを持つ人が入社するようになり、人事管理が複雑になり、人事の業務が複雑化するあまり、あらゆる面へ柔軟に対応できる人事評価システムの導入が必須であると考えるようになりました。システムの導入により、数多くあった人事業務の工数を半分にまで圧縮でき、業務にかかる時間と労力の削減に成功します。
リンレイサービス
リンレイサービスは従業員1,600人分の出勤簿を目視で確認していましたが、工数が多いためミスが多々生じてしまう課題を抱えていました。勤怠管理や給与計算に多くの手間や時間をかけていたリンレイサービスは、AIを活用した人事評価システムの導入を進めます。システムの運用を始めると、従業員の情報を簡単に処理できるようになり、ペーパーレス化と業務負担の削減に成功しました。
人事業務の将来性
AIの機能は進化し続けており、今後さらに発展します。AIが成長するあまり人事の仕事がすべてAI化してしまうのではないのかと将来性を気にする方は少なくありません。結論からいうと完全にはなくならず、一定数残ることが予想されます。
人事業務において人の取り組む仕事がなくならない理由は次の2点です。
- 人にしかできない業務が存在する
- AIとの協働が業務の質を高める
人にしかできない業務が存在する
AIが得意とする業務はデータ処理や計算などの単純作業です。しかし、AIのみで人事評価を決定してしまうと、評価基準が不透明になる、根拠が薄いと正当な評価ではないと感じる従業員が増加するといった問題が生じます。
AIの活用で人事評価における業務の効率化は進みますが、正当な評価を実現するためには状況によって柔軟な判断ができる人の力が必要です。評価基準が定まるAIの活用に加え、人間にしかできない業務に取り組むと高度な人事評価が期待できます。
AIとの協働が業務の質を高める
AIと人間が協働することで、より質の高い人事評価をおこなうことができます。データ管理や処理に関してはAI、人とのコミュニケーションが必要な業務に関しては人間といったように役割を分担し、業務の質を高めることが可能です。
まとめ
人事評価制度にAIを活用すると、業務の負担を軽減できる、公正な評価を可能にするなどのメリットがあります。AIの発展により人の手でおこなう人事の仕事の減少が心配されていますが、完全に仕事がなくなる訳ではありません。
あくまでAIはサポートの立ち位置であり、業務の効率化や評価の質の向上を目的とするため、業務の最終決定は人がおこなう必要があります。システムを企業に導入し、誰もが納得する適切な人事評価で従業員のパフォーマンス向上を目指します。