2022.09.08

行政デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を活用して人々の生活を豊かにすることです。一般企業では早々に取り入れられてきましたが、学校や行政といった場所では世界的にみても後れをとっているといわれていました。しかし、ここ数年で行政や各自治体でもデジタルトランスフォーメーションが推進されています。

行政デジタルトランスフォーメーションとは

住民の生活に必要不可欠な立場にある行政や自治体が、時代にそぐわず人々にとって煩わしい存在であっては意味がありません。さまざまな変化に追いつくため、行政デジタルトランスフォーメーションの早急な導入が求められているのです。

行政や自治体でデジタルトランスフォーメーションの導入を急いでいるのには、いくつかの理由があります。

1つ目は、少子高齢化による労働人口の減少による人手不足です。人手不足は公務員も例外ではなく、各自治体の職員数は減少し慢性的な人手不足に悩まされています。

2つ目に人々の暮らしの変化が挙げられます。たとえば、世界的にキャッシュレス決済やオンライン手続きをはじめとしたデジタル技術が発達しているにもかかわらず、役所では専用用紙や窓口申請のようなアナログ申請が基本です。

行政・自治体デジタルトランスフォーメーションの目的

デジタルトランスフォーメーションは、ビジネス業界に限った話ではありません。国を支える行政や住民にとって欠かせない自治体においても注目を集めており、導入を急がれています。

提唱者であるエリック・ストルターマン教授が唱えているとおり、行政や各自治体がデジタル技術を積極的に取り入れることで、多様化し続ける人々の生活を豊かにしてより良いものへと変化させられます。つまりは、これまでの固定化されたサービス提供ではなく、現代社会および住民ひとりひとりのニーズに合わせたサービスを提供することを目的としているのです。

行政・自治体デジタルトランスフォーメーションのメリット

行政や自治体がデジタルトランスフォーメーションを導入することで、自治体職員にも利用者にもメリットがあります。導入の背景ともなっている深刻な人手不足は、自治体職員の長時間労働に繋がり、利用者の長い待ち時間の原因です。

デジタル技術を導入しシステムを整えられれば、引っ越しの際の転出・転入届けや住民票などの取得申請を自宅や職場からオンラインで完結できるようになるのです。自治体職員の業務量軽減だけでなく、24時間の申請が可能になるため平日に役所へ出向けない人や小さな子どもがいる方にとって大きなメリットといえます。

行政・自治体デジタルトランスフォーメーション導入の具体例

マイナンバーカード普及

近年浸透しつつあるのがマイナンバーカードです。マイナンバーカードは、個人番号と呼ばれる識別番号と顔写真が一緒になっており、免許証のように本人確認書類として利用できます。

2022年度末を目標に日本国民のほぼ100%の所持率を目指しており、テレビCMやインターネット広告での認知度拡大、楽天ポイントといった民間サービスとの連携などで取得を促しています。今後は、運転免許証や健康保険証の機能を付帯させるなどさらに便利なものへと進化する見込みです。

電子申請・行政手続きのオンライン化

各行政手続きのオンライン化や電子申請も進められています。これまでは平日17時までの受付時間に窓口での申請や手続きが必須でした。しかしながら、社会人の多くは17時頃は勤務中であるため、窓口へ行くために休みを取る必要がありました。家族の看病や介護、幼児を抱えている場合も窓口での手続きは非常に困難です。

こうした手続きをオンライン化することで、課題を解消できます。また、窓口での対応が減らせると利用者だけでなく自治体職員の負担も大きく軽減できます。

テレワーク推進

コロナウイルス感染症の流行により、世界的にテレワークが広がりました。流行が落ち着いた現在もテレワークは一般的なものとなりつつあります。

これを機に自治体の業務もテレワークを促進させる動きが強まっています。また、一般企業に対してもテレワークを推進しており、人口減少が進む地方への移住促進やワーケーション誘致を通して地方活性化への発展も期待されているのです。

行政・自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題

デジタルトランスフォーメーション導入には次のような課題があります。

  1. デジタル(IT)人材の不足
  2. 住民への浸透・理解
  3. アナログからデジタルへの移行対応

デジタル(IT)人材の不足

デジタルトランスフォーメーションを導入するうえで欠かせないのが、ITやデジタル技術を持つ人材です。デジタル技術に特化した人材は、一般の企業においても不足しており行政や自治体だけでの問題ではありません。

安全かつ円滑にデジタルトランスフォーメーションの導入を進めるためには、システムの導入だけでなくシステムを活用した業務プロセスおよび運用プランの構成が要となります。デジタル人材を確保しないことには、デジタルトランスフォーメーション導入は実現できません。

住民への浸透・理解

行政や自治体のサービスを利用するのは地域に住む住民です。役所をはじめとした自治体施設は、老若男女幅広い世代が利用します。そのため、単にデジタル化するだけでは人々の利便性が向上するどころか低下してしまいます。住民が使いやすいよう環境や設備を整え、デジタル化への理解とデジタルトランスフォーメーションの浸透は優先度の高い課題です。

アナログからデジタルへの移行対応

デジタルトランスフォーメーションの導入により、オンライン手続きやシステムに順応しなければならないのは利用客だけではありません。自治体職員たちもまた、アナログ業務からデジタル業務への移行を受け入れ、新しいシステムやプロセスに対応しなければならないのです。

デジタル化したサービスを利用する人々からの問い合わせに答えるのは自治体職員です。質問に答えられるだけの知識を身につけるなど、導入前の移行対応についても事前に準備しておく必要があります。

まとめ

一般の企業と比べて行政や自治体は新しい考え方や手法を取り入れるハードルが高いといえます。しかし、時代や人々の生活に合わせたサービスの提供および運用をおこなわなければ取り残される一方です。

すべてをデジタル化するのではなく、利用者に合わせたサービスを少しずつ導入するなどして、自治体職員および人々が無理なくデジタルトランスフォーメーションに対応できる環境を整えていくべきといえます。

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