2022.09.20

2025年の崖問題とは

2025年の崖問題(2025 Digital Cliff)とは経済産業省がDXレポートにて提示したキーワードです。経済産業省により企業のDX化が本格的に進まない日本では、2025年から非常に高額な経済損失が生じると公表されています。

2025年の崖が問題視される背景にはIT人材の不足やシステムのブラックボックス化などが挙げられ、日本の企業にとって大きな課題といえます。2025年の崖問題の解決に向けて日本企業のDX化を進めるには、企業がDXの重要性や取り組み方を把握し、実際に行動へ移さなければなりません。

2025年の崖問題とは

2025年の崖問題(2025 Digital Cliff)とは経済産業省が提示したDXレポートに記載されている言葉です。日本の企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推奨しないまま時間が経過すると、2025年以降は経済損失が発生し、損害額は最大で年間12兆円とされています。

毎年12兆円の損害が生まれてしまうため、今のままだと日本の経済は大きなダメージを負ってしまいます。経済産業省による警鐘の結果、DXを取り入れる企業は増加傾向にありますが、本格的なDX化とは言えない状態です。多くの企業はデジタル化にとどまっており、DX化の本質を理解する企業は多くありません。

DXとはデジタル機器を用いて競争上の優位性の確立や新たな価値を生み出すことです。日本経済の大打撃を防ぐため、多くの企業にはいち早くDXへの取り組みが求められます。

2025年の崖が問題とされる背景

なぜ2025年の崖が問題視されているのか疑問に思う方は少なくありません。問題を解決するには問題視される背景を把握する必要があります。

2025年の崖が問題とされる背景は次のとおりです。

  1. IT人材の不足
  2. 有識者の退職
  3. システムのブラックボックス化

IT人材の不足

DX化を進行しない企業の多くでは、IT人材の不足が原因とされています。従業員の多くがITの専門知識を持っていないため、システムの導入や運用には対応できません。日本企業はITを専門とする優秀な人材の確保が必要です。

有識者の退職

ITシステムを利用できるのは豊富なノウハウや知識がある有識者のみです。そのため、企業では有識者がシステムの管理や運用をしています。

しかし、有識者が退職した場合に、知識の浅い従業員では属人化してしまっている業務に対応できません。システムの運用ができなくなると、業務に支障が出てしまいます。

システムのブラックボックス化

長い期間システムを使用していると肥大化が進み、運用プロセスが把握できていない状態に陥るケースがあります。多くの企業ではシステム運用が複雑化しているため、自社のみではITシステムを運用しきれない状態です。システムは定期的なメンテナンスが必要ですが、管理が不十分であるため整備もできていません。

2025年の崖問題につながる課題

2025年の崖問題を解決に導くためには、複数ある課題をクリアしなければなりません。しかし、課題の内容について具体的に把握している方は多くありません。

2025年の崖問題につながる課題は次のとおりです。

  1. DXに向けた経営戦略が整備されていない
  2. ITシステムの老朽化が進んでいる
  3. IT人材が不足している
  4. ベンダー企業へ頼り過ぎている

DXに向けた経営戦略が整備されていない

経済産業省はDXを駆使した戦略を注視しています。日本ではDXの必要性を感じてシステム導入を進めているが、方向性や取り組みが十分でない企業が多いです。

単にシステムを導入したところでDX化に成功する訳ではありません。企業はDXでどのようなサービスを提供するのか、具体的なビジョンや経営戦略を考える必要があります。

ITシステムの老朽化が進んでいる

ITシステムを長く使用し続ける企業が日本には数多くあります。社内でIT機器を運用するにあたって、システムの老朽化に注意しなければなりません。

古い機器だと改修がむずかしく、既存システムの再運用にも向いていないです。そのため、新たなシステムを導入するDXへの取り組みが必要となりますが、失敗すると企業に損害が生じるリスクがあるため、DX化に踏み出せる企業は多くありません。

IT人材が不足している

システムの運用にはIT機器に精通する人材が必要なため、DXを進行するうえでIT人材は必要不可欠です。しかし、幅広い知識が必要であるためIT人材の育成や獲得はむずかしく、多くの企業ではDX化に向けた取り組みを進められません。

ベンダー企業へ頼り過ぎている

ベンダー企業が他社のDX化を必ず実現できるとは限りません。DX化は簡単ではなく、失敗のリスクがあります。

DX化の成功により発生する利益も明確でないため、多くのベンダー企業は他社におけるDX化に向けた取り組みを引き受けるかは不透明です。そのため、自社で取り組みが必要ですが、さまざまな課題があり進行はむずかしいのが現実です。

2025年の崖問題に対する解決策

2025年の崖問題につながる課題を解決するためには、解決策を把握する必要があります。

2025年の崖問題に対する解決策は次のとおりです。

  1. 現状を評価する
  2. ビジョンを周知する
  3. ベンダー企業との関係を再構築する
  4. 検証と改善を繰り返す
  5. さまざまな人材を雇用する

現状を評価する

経営者が企業におけるDX化の重要性を確認するため、DXに向けた取り組みの現状評価が必要です。現段階で自社にある資産を分析したうえで、必要なものと必要でないものに分け、企業が活用できるITシステムを把握します。経営者は企業の現状を見ることで何が足りないのか、今後どのように企業を運営していくかなど、DX化に向けた取り組みの重要さを理解できます。

ビジョンを周知する

DX化を成功させるには組織全体で取り組みを進める必要があります。そのため、まずはDXの重要性とビジョンを従業員へ周知しなければなりません。単に重要さを伝えるだけでは一方的であるため、説明会や直接のコミュニケーションを通して説明するのがベストです。

ベンダー企業との関係を再構築する

ベンダー企業にとってDX化の実現に向けた取り組みはリスクが高いです。そのため、システム運用をベンダー企業に任せっきりではなく、自社でもシステムを運用できる取り組みを進める必要があります。

自社でおこなう作業とベンダー企業に任せる作業とで分け、お互いの関係性を再構築するとベンダー企業のリスクを軽減でき、良好な関係の構築が可能です。さらに、自社でもシステム運用のノウハウを蓄積できます。

検証と改善を繰り返す

勉強や事業と同様、企業がDX化を成功させるためには検証と改善を繰り返す必要があります。はじめから大規模な取り組みを始めると、失敗した際に大きな損害が生まれてしまうため、小規模での取り組みから進めるのがベストです。

さまざまな人材を雇用する

労働人口が減少するなか、IT人材を獲得するには性別や国籍問わず様々な人材を雇用する必要があります。優秀な人材を獲得できれば企業におけるDX化の成功につながるため、視野を広げた人事採用をおこなうと良いです。

まとめ

2025年の崖問題とは経済産業省がDXレポートを通して提示した言葉を意味します。IT業界における人材不足や自社システムのブラックボックス化が、2025年の崖が問題とされる背景に挙げられます。近年、日本では企業のDX化が推奨されていますが、多くの場合はデジタル化にとどまっており、本格的なDX化が実現していないのが現状です。

2025年の崖問題につながる課題としては経営戦略が整備されていない、ベンダー企業にシステム運用を頼り過ぎているなどがあります。そのため、日本企業のDX化を進めるには、現状評価やベンダー企業との関係性の再構築といった解決策に取り組む必要があります。

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