- クライアントボイス
基盤強化と収益力の向上を目指し抜本的な「営業組織の変革」を実施で成長 Vol.2
- #製造業
1953年12月26日創業。インダストリアル事業・航空宇宙事業・メディカル事業を事業の柱とする大手工業メーカー。産業・医療業界において世界トップクラスの実力を持ち、多数のトップシェア商品を有する。東証一部上場。連結子会社は国内外75社に及ぶ。
<お話を伺った方>
取締役執行役員 医療部門長 メディカル事業本部長 木下良彦 様(お写真左)
メディカル事業本部 副本部長 横山大輔 様(お写真右)
EXECUTIVE SUMMARY
- 日機装株式会社のメディカル事業は、1969年に日本で初めて血液透析装置を開発し、現在でも国内市場シェアはトップである。しかし、追随する競合他社の営業攻勢によってシェアを奪われる危機感を感じ始めていた。 そんな中、基盤強化と収益力の向上を目指した「営業組織の変革」プロジェクトの伴走者として、リブ・コンサルティングがかかわることとなった。前回の記事では、変革の起点となった幹部合宿により、「営業組織としてのありたい姿」「優先課題」「変革の必要性」について幹部社員の中で共通認識化された点に触れた。
- 営業変革を具体的に推進していくにあたって、事業本部が目指す姿の一つである「医療経営への貢献」を体現すべく、従来の「顧客現場×訪問量」アプローチに対し、「意思決定層×提案の質」アプローチの強化を図った。この新たな営業の型をパイロット拠点と一緒に作り上げていった。
- 新たな営業アプローチは、具体的な行動やKPIへの落とし込みだけではない。営業会議のやり方を大きく変えたことも、パイロット拠点での大きな成果につながった。社内で注目・関心を高めた状態で全社展開を行い、新たな営業アプローチは、具体的な行動やKPIへの落とし込み、営業会議のやり方を大きく変えたことによって、パイロット拠点で成果を上げる。社内で注目・関心を高めた状態で全社展開。当初の問題であった競合他社からの攻勢にも競り勝つようになっていく。
構成
営業スキルは決して属人的なものではない。多くの企業で悩むポイントでもある「課題解決型営業(ソリューションセールス)の組織化」そして、パイロット運用から全社展開で得られた多くの成果とは。3回シリーズの第2回をお届けする。
第1回 変革の序章「幹部の変革意識共通化 編」
第2回 成果への手応え「営業勝ちパターン構築&展開 編」
第3回 主体的進化型組織へ「営業総合教育と進化 編」
パイロット展開から始まった営業アプローチ変革
「幹部合宿を経て、営業変革を行う必要性とその方向性について事業本部経営メンバーと営業拠点の幹部社員との間で共有することができました。しかし、それだけでは組織全体を動かすことは難しいと思いました。日機装には、新卒から勤め続けてくれているプロパー社員が多くいます。つまり、営業変革は自分たちがやってきたことの否定にも繋がってしまうのです。いきなり全社展開するのではなく、まずはパイロット運用で変革を成功させ、具体的な『結果』を見せて『変革の必要性』を実感してもらおうと考えました。」
幹部社員の変革意識が共有化された後に、まずはモデル拠点を決め、パイロット運用から新たな「営業勝ちパターン」の構築と展開を始めることとなった。木下取締役はこう続けた。
「カルチャーが変化したら、どのような営業手法になるのかというのを、リブ・コンサルティングさんに具体的に示してもらった上で伴走してもらえたのが大きかったですね。パイロット拠点では、まずは営業社員の目の前にある仕事のやり方を変えることから始めました。精神論を説くのではなく、具体的な業務まで落とし込んでもらったので『何をすればよいか』が明確になった。動きやすくなっただけでなく、結果も伴ったので、若手社員にも腹落ちしやすかったはずです」
顧客関係性を可視化した新たな「営業勝ちパターン」とは
パイロット運用では、具体的に何を行ったのか。木下取締役は、営業プロセスの変更について次のように語ってくれた。
「営業の大きな課題の1つ目は『トップ層との関係構築ができていない』ことでした。リブ・コンサルティングさんがメスを入れたのはまずここです。『顧客との関係構築』について、段階ごとに定義をし、具体的に何をどこまですれば良いかを言語化して共有してくれました。例えば、既知の間柄であっても1年以上も経営者に会えていないのであれば、それはもう『新規開拓段階』で必要情報の収集から行うべきであるというような定義です」
リブ・コンサルティングでは、営業社員と顧客との関係構築を5つのフェーズに分割。そして、フェーズを進めるための具体的な条件を定義しKPI(重要業績評価指標)とした。
「『何をすれば評価されるか』が具体的になったため、営業社員が動きやすくなりましたね。意思決定権者との面談回数や内容など、次のフェーズに進むために必要な内容についても具体的に定義し、営業社員が先方から収集すべき情報が一目でわかるようにしてくれました。顧客管理情報の不足についてはシステム上で判別し、情報収集すべき項目を明確にしたので、次に行った時に何をすればいいかがわかりやすくなり、営業活動も効率的に行われるようになったのです」
とはいえ、足りない情報をどうやって得るかは、営業としてのコミュニケーションスキルの問われるところだ。
「さらに、どうやって顧客から情報を得るのか、商談を進めるのかという部分についても、具体的な解決方法を提示してくれました。もともとは、営業社員の独自判断に任せて個々に動いてもらっていたのが、営業の内容がそろわなかった一因です。そこで、トップ営業社員とその他の営業社員のコンピテンシー比較を行ってギャップを洗い出しました。一般の営業社員がトップ営業社員と比べて劣るスキルを明確化したのです。必要なスキルについては、強化手順を策定して実務の中で解消していきました。顧客についてもセグメンテーションを行い、状況に応じた重点ターゲットを設定した上で達成計画を立案してもらったのです。」
横山副本部長も併せて語る。
「評価対象は売上だけではなく、そのプロセスについても具体的な評価基準を細かく定めていきました。これによって『何をもとに営業社員を評価するか』が明確になっただけではありません。営業社員本人も『何を目指せばよいか』を自覚して動けるようになったのです。」
案件を取り残さない「チーム会議マネジメント」
顧客との関係構築から受注、その後のアップセルやクロスセルに至るステップについても見直しを行った。その解決のために取り入れたのが、チームミーティングの内容変更だ。
「リブ・コンサルティングさんは、営業会議の在り方をガラっと変えてくれました。営業社員それぞれが担当している案件について『どうやって成果につなげていくのか』をチーム全体で話し合う戦略会議にしたのです。一人の営業社員に責任を負わせるのではなく、チーム全員で案件について考えることで、建設的なミーティングができるようになったのはとても大きな変化です。これがパイロット拠点で目覚ましい成果をあげるきっかけになりました。」
「営業会議では、個々の案件の進捗を確認します。しかし、ともすればその営業案件の担当者を個別に詰める場になりがちという問題点がありました。リブ・コンサルティングさんが、手を付けたのはまずはこの進捗確認の部分です。それぞれの案件については、関係構築フェーズの定義とKPIにそってどの段階にあるかを確認し、現状を把握します。さらにそれを次のステップに進めるためにはどうすれば良いかを、拠点の皆で考えるようにしたのです」
ミーティングでは、案件ごとに商談プロセスのどの段階にいるか、現時点で困っていることは何かを開示し合う。そのうえでチーム全員で対策を練るようにした。手詰まりになっているポイントはどこか、どうすれば解決できるか。まるで、ゲームのクリアを目指すような楽しみと一体感がパイロット拠点に生まれてきたという。
「驚いたのは、リブ・コンサルティングさんが、会議に入って具体的にどのように進行するのかを示して見せたことです。『コンサルティング会社がここまで現場に入ってやるのか』と思いましたね」
横山副本部長がこう語るのを見て、木下取締役も頷いた。これらの取り組みは数字にも表れ、パイロット拠点での成果事例がどんどん生まれてくると、他の拠点も「あそこは何をやっているのだろう」と気になってくるのは当然だ。こうして、パイロット拠点で得た成果をもとに、全拠点展開に踏み切った。
パイロットから全社展開へ―ロードマップと共に伴走したリブ・コンサルティング
日機装の営業拠点は国内18か所。北は北海道から南は沖縄まである。北海道から上信越地方までが東日本支社、名古屋から沖縄までが西日本支社だ。リブ・コンサルティングは営業変革の全社展開に当たって全拠点を訪問。新しい営業の仕組みを、半年間かけて実地で引き継いでいった。
「顧客情報の管理シートから、ミーティングで行うことのチェックリスト、案件レビュー方法に至るまでやり方を統一できるようにマニュアル化してくれました。パイロット拠点だけでなく、拠点別の研修がトータルで3回、それに加えてミーティングへの参画もあります。全国を回り、実地で新しい営業手法を伝えるリブ・コンサルティングさんを見て『まさに伴走だ』と思いました。」
木下取締役はこう続けた。
「嬉しかったのは、パイロット運用後に、思いのほか現場がついてきてくれたことです。毎月末にKPIを集計し、ステアリングコミッティ(プロジェクト委員会)でチェックしていたのですが、毎回目覚ましい改善が見られました。おそらくですが、今までの営業活動の属人化によって孤軍奮闘していた空気を『変えたい』と、現場でも思ってくれていたのでしょうね」
全拠点へと活動が広がると、互いに他の営業所がやっていることが気になってくる。運用がうまくいっている拠点への見学の機会も設けた。仕組みをどのように運用すれば効果的なのかと拠点同士で活発に情報交換するようになっていく。
「『あそこはこれだけやっているのに、うちはまだこれだけだ』そんな感じで、他拠点がやっていることを見るのが、良い意味で刺激になっていました。特に、ミーティングのやり方に劇的な改善が見られた結果、各営業拠点から上がってくる週次の見込み数字の報告の精度が格段に上がりました。これまではちょっと弱含みに報告されていたのですが、自分の予測とマッチするようになってきました。営業会議で案件を共有して皆で考えることにより、成約の確度が高まったのだと思います」
コンサルティングのきっかけとなった、競合他社との戦況はどうなったのだろうか。
「当社では、営業の仕組みづくりを2019年からはじめた結果、どんどん変わっていきました。2020年の対競合の勝率は勝ち越し、2021年の数字も同様に推移しています。この流れを定着させたいですね」
パイロット運用から全拠点展開まで、営業改革における「よりよい仕組み」の浸透が成果として現れた。次は「人材育成」からの「ES(社員満足)」の改善である。
リブ・コンサルティングでは、今回のパイロット運用から全拠点展開するさなか、同時に社員のマインド向上のための施策も行っていた。最終回は、PDCAを自ら回す自走型組織になるべく行った「三位一体型の研修」について本記事続編でお話していただきます。
(写真左から弊社常務権田、日機装木下取締役、日機装横山副本部長、弊社コンサルタント村越)