- クライアントボイス
- マーケティング
走りながら改善できる 組織づくりとパートナー選びが重要
インド発のユニコーン企業OYOとヤフー株式会社が合弁会社を設立。OYOが世界中で培ってきた運営ノウハウを活用し、賃貸事業「OYO LIFE」を展開。敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用なし、家具・家電付きで引っ越しもいらず、スマートフォンで 物件探しから契約、支払いまでの手続きが完結する一気通貫のサービスを提供している。
1.「OYO LIFE」は、インド発のユニコーン企業OYO とヤフー株式会社が合弁会社として設立したOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN株式会社(以下OYO LIFE)が日本国内で提供する賃貸サービス。敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用なし、家具・家電付きで引っ越しもいらず、スマートフォンで申込・契約・支払ができるという事業を行うことは決まっていたが、ユーザーに提供するために物件を急ピッチで確保する必要があり、そのために営業部隊を短期間で作りたいと考えていた。
2.異次元の目標を達成するために、営業とマネジメントのノウハウを持つリブ・コンサルティングを活用。圧倒的スピード重視と先回りして動くユニコーン企業特有の文化を共有できるコンサルティング会社を見つけたことが垂直立ち上げの実現につながった。
お話を伺った方
OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN株式会社|事業開発責任者 菊川 航希様
1989年生まれ。大学時代に2社の創業に関わった後、外資系戦略コンサルティング会社A.T.カーニーに入社。その後、シリコンバレーを中心にスタートアップの事業支援や投資に携わり、2018年9月よりOYOに参画。日本人第1号社員として「OYO LIFE」の事業開発責任者に就任。
事業内容について
松尾 「OYO LIFE」について教えてください。
菊川 OYOはインドに本社を持つホテル運営会社です。グループの特徴であり、強みの1つともいえるのがAIを使った需給予測の分析で、地域の需給バランスに合わせた価格設定を行い、稼働率を最大化します。この仕組みを武器として、OYOは2017年に中国進出したことを皮切りに、グローバル市場に進出していき、2018年に日本における事業展開も検討し始めました。ホテル事業の展開も検討されていましたが、日本国内で手がける最初の事業が、賃貸住宅の事業「OYO LIFE」です。初期費用無料で、家具・家電付き、スマートフォン経由で手軽に物件を借りられるのが特徴で、2019年の春からサービスをスタートしました。
松尾 賃貸物件は従来、借り手が不動産サイトや街の不動産屋さんを通じて借りるのが一般的でした。OYOはビジネスモデルが異なりますね。
菊川 われわれの事業は垂直統合型で、仕入れ、販売、配送まですべて行うAmazonのようなモデルです。当社も不動産の在庫管理、 家具・家電の選定・設置、入居者との契約手続き、入居後の入居者に対するサービスまですべてを行います。ユーザー側から見ると、サイト上で物件検索、申込、契約、支払まで行うことができます。また、物件には家具と家電がついていますし、敷金、礼金、仲介手数料なども不要ですので、契約時の初期費用がかからないという点で、今までよりも気軽に賃貸住宅を選ぶことができるようになります。
松尾 利用者の反応はいかがですか。
菊川 サービス開始時の反応が想定していた以上に大きかったです。われわれのサービスは、初期費用不要、契約が簡単、家具と家電がついているといった点が特長です。これまでユーザーが賃貸住宅を選定する際に、当然のようにかかっていた初期費用やオフラインで実施しなければいけなった申込や契約の手続き、大型の家具や家電を移動させる引っ越しに非常に大きな不満を抱えていたことを改めて感じます。
松尾 ユーザーの属性と利用シーンについて教えてください。
菊川 ターゲットは主に単身者です。現在の主な利用者としては20代から30代の単身者が多く、具体的には、初期費用を抑えたい人、地方から東京に来たばかりで家具・家電を持っていない人、今まで実家暮らしで家具・家電を持ってない人、とにかく楽に物件を決めたいという人など様々です。現状は都市部の単身者向け物件が多いのですが、今後、部屋のタイプ、エリア、価格帯を広げていく予定です。
松尾 どのようなミッションを掲げて事業をスタートしたのですか。
菊川 私は事業開発責任者で、簡単に言えば物件獲得の責任者でもありました。つまり、物件獲得数が重要なKPIの1つです。私はOYO LIFEに日本人第1号社員として参画しましたが、OYOはどの国に進出する場合も、まず100部屋獲得することを目指します。これはグループ内でミッションインポッシブル100と呼ばれており、私もOYO LIFEに参画してからまずは100部屋を目指し、様々なパートナー様と協業もしながら、すぐに100部屋獲得を達成しました。そこで、次に目指したのは 1,000室の獲得です。ただ、物件獲得に不可欠なチームメンバーが不足していたので、創業者的な目線で、人集めから始め、物件を増やしていくことが必要でした。
松尾 サービススタートから数カ月で1,000室(2019年3月末時点)まで増やしたのは驚異的なスピードです。このスピードを実現するためには、短期で人を集めることだけでなく人選にも苦労したのではないですか。
菊川 いきなり1,000室という異次元な目標を実際に達成するには何が必要かを考え、実際にそのチャレンジにコミットしてくれる人を募りました。OYO LIFEの事業は国内初であり、過去に例のない事業の立ち上げです。しかもそれを聞いたことがないようなスピード感でやろうとしている。誰もやったことがないからこそ、やり遂げたらすごいよね、といったことを伝え、チームをモチベートすることも多かったと思います。
松尾 スピード感を出すための組織的な特徴はありますか。
菊川 会社として「スピードを優先する」と決めていたので、どうすればスピードを上げられるかをとことん考えて、行動に移しています。具体的には毎日、主要な数字をレビューして、その日のうちに、スピードが上げられそうな部分があれば改善プランを決めてアクションに移す。あるいは、どうやったら今の数字を2倍にできるのか、組織としてどうやったらそれを達成できるかを徹底的に考え、アクションをとる、ということを実施しています。
コンサルティング活用の経緯とリブのコンサルティングについて
松尾 営業の領域でコンサルティングを活用しようと決めた理由を教えてください。
菊川 前述の通り、OYO LIFEは前例のないようなスピード感での物件獲得を目標としていました。インドや中国でも創業から数年で国内ナンバーワンのホテルチェーンとなるような圧倒的なスピード感で事業を進めています。日本でもそのスピード感を実現するには、まずは営業メンバーが多数必要でした。ただ、その際に問題になるのが、誰がそのチームのマネジメントをするかという点です。マネジメント層の採用には時間がかかりますので、営業やマネジメントの領域でノウハウを持つ外部の人を活用するという判断に至りました。
松尾 コンサルティング会社の選定で重視した点を教えてください。
菊川 これもやはりスピードです。リブ・コンサルティングはその期待に応えてくれ、依頼してから5日後には営業チームのマネジメント体制と精度の高いKPIが揃い、動き出せる状態になっていました。一緒に走り出してからは、われわれの意思決定のスピードを重視するカルチャーに合うコンサルティング会社だなと感じました。メンバーの一員として、同じスピード感を持って動いてくれたのもうれしかったですね。われわれは、考えてから走り出すのではなく、走りながら改善していきます。良い結果が出る可能性があるなら、やってみて結果を見ます。リブ・コンサルティングはその感覚を共有し、例えば「この要素が抜けていたのでやっておきました」「KPIが必要だったので測っておきました」といった具合に、先に気づき、動いてくれる事業参謀のような役割を果たしてくれたと感じます。
ベンチャー×コンサルティングの可能性
松尾 スタートアップ企業やベンチャービジネスとコンサルティングの組み合わせについてどのように感じていますか。
菊川 私は前職がコンサルタントでしたので、支援する側と依頼する側の両方の立場を経験しています。また、コンサルタントのときは大手企業の支援をしていましたので、今回の経験を通じて大企業とベンチャーの違いも実感しました。その経験から痛烈に感じるのは、スタートアップ企業では意思決定が非常に重要だということです。伝統的なコンサルティングは意思決定をしません。「AとBとCという選択肢があり、Cが良いと思います」といった提案はしますが、決めるのは会社なのです。一方、依頼者がスタートアップの場合、早急に意思決定しなければなりませんし、決めるという行為そのものに体力が必要です。その点から見て、スタートアップ企業にとっては、提案だけにとどまらず、一緒に意思決定をして、一緒に動いてくれるパートナーとなるコンサルティング会社が非常に相性が良く、アウトソーシングする価値が大きいと思います。
今後の展望について
松尾 今後の展望について教えてください。
菊川 引き続き、スピードとスケールを重視しながら成長を目指したいです。インド本社は、2年で事業規模を100倍にする勢いで成長しました。その数値を意識しながら、われわれも数年でどうやったら100倍にできるかを意識しながら事業を展開していきたいと考えています。
(左から担当コンサルタント松尾、OYO菊川様)