COLUMN
【LiB Mobility経営 vol.17】
前編:合併を「人財開発」の最大のチャンスに経営方針・人事評価制度策定にかける想い
全2回のインタビューで迫る
トヨタモビリティ釧路様の新たなスタートの道筋
トヨタモビリティ釧路は2021年7月に釧路トヨペットとネッツトヨタ道東が合併、2022年7月に釧路トヨペットとトヨタカローラ釧路の合併により誕生。
道東No.1のモビリティカンパニーを目指し、従来のモビリティ事業に加え、自動車リースやアグリ事業など新領域にも果敢に挑戦している。その中で、同社は「人財(人材)開発」を最重要テーマとして注目。人財開発室主導でミッション・ビジョン・バリュー、人事評価制度の策定に取り組んできた。
前編では、人材育成の新体制を構築するに至った背景を伺った。
新会社設立。至上命題は「人財」だった
<左から>代表取締役社長 工藤 健雄 氏
営業本部 人財開発室 室長 渡部 泰行 氏
管理本部 人事担当責任者 部長 吾妻 正之 氏
管理本部 人財開発室 主任 谷口 由香里 氏
管理本部 人財開発室 杉本 恵美 氏
LiB トヨタモビリティ釧路の設立に伴い、人財開発室を設けて人事評価制度の策定に取り組んだ背景を教えていただけますか。
工藤健雄氏(以下、敬称略) 根底にあった想いは「組織がどのように変わろうとも、人を中心に考えるべきだ」です。そのため、総合の如何に関係なく絶対に実現したいと思っていたことの一つとして、人財開発室を設立し、人を中心に組織運営ができる状態にしようと思っておりました。「財」という漢字を用いているのも、その表れです。合併以前より、私は全社的に行動指針が浸透していないことと、成果や行動に対する評価指標が曖昧であるという点を課題に感じてしまいました。新組織の代表取締役社長に就任し、最初になすべき重要な仕事が、この2つを明確にし社員に浸透させることだと考えたのです。
吾妻正之氏(以下、敬称略) 私たち人財開発室の設立当初のミッションは、経営理念であるミッション・ビジョン・バリューの浸透と人事評価制度の策定と社員への浸透でした。私自身はミッション・ビジョン策定時にはプロジェクトメンバーとして参加しておりませんでしたが、バリュー策定時からプロジェクトに参加させていただいておりました。バリュー策定の際には社員の意見を募ったのですが、多くの社員が非常に前向きなアイディアを出してくれました。社員の声を聞きながら、人財開発室として社員の前向きな意思を支えられるか、不安ももちろんありましたが、自分にできることを精一杯やろうとワクワクしました。
渡部泰行氏(以下、敬称略) 私は釧路トヨペットに在籍していたのですが、合併前は上司と部下のコミュニケーションが円滑ではないし、新しいことにチャレンジしにくいといった課題を抱えていました。その分、新会社ではそうした社風を一新し、より社員が働きやすい会社を作りたいという想いが人一倍強かったです。
制度・方針を定めることで社内コミュニケーションが活性化
LiB ミッション・ビジョン・バリューの浸透・人事評価制度策定に関わる過程で、どんな点に苦労しましたか。
渡部 これまでの問題点を解決して新会社で再スタートしたい、生まれ変わりたいという意思は、全社員といっていいほど大多数の社員が口にしていました。とはいえ、生まれ変わるというのは並大抵の努力でできることではありません。新たな制度を設けることによって、これまでとは異なる仕事のやりにくさも生じます。変わりたいという想いの一方で、変わることへの抵抗感を覚えている社員も少なくありませんでした。例えば、新たなミッション・ビジョン・バリューに沿って仕事の進め方を変えていくことに対して、元釧路トヨペットの社員からも元トヨタカローラ釧路の社員からも強い反発がありました。
吾妻 人事評価制度については、実績を評価する指標を社員にどう浸透させるかが、大きな課題であり現在進行形で苦労している点でもあります。
LiB どちらのケースも、制度や方針の理解と浸透が課題なのですね。それぞれの問題について、現在どのように解決しようと務めているのですか。
渡部 急に「仕事のやり方を変えろ」と指示するのではなく、現場の社員とコミュニケーションを重ね、絆を深め信頼関係を築いてから、徐々に新しい仕事のやり方への共感を得て取り入れてもらっていきました。
吾妻 人事評価制度の理解促進では、まず上司を対象に制度の理解を進めています。一次評価者となる上長に対して、部下の行動がA評価・B評価・C評価のいずれに該当するのかを認識できるようにすることが、最優先の課題です。その後、上長から部下に自己評価の方法を伝えていくという流れを作り、数年後に人事評価制度の考え方をスタンダードにしていきたいと思っています。
渡部 上長への指導と同時並行で、社員1人1人との面談も行っています。そこで仕事や人事制度での困りごとをヒアリングし、社員の状況を把握しつつ制度の理解促進を進めています。
LiB ミッション・ビジョン・バリューや人事評価制度の浸透を進める中、反発や理解不足を補う過程で自然と社内でのコミュニケーションが生まれているのですね。
吾妻 私もコミュニケーションが生まれやすくなったのは非常によい点だと感じています。制度やミッション・ビジョン・バリューでは曖昧になってしまうことはどうしても発生してしまいますし、あえて曖昧な部分を残した側面もあります。社内では現在困っていることは何か、制度に対して思っていることは何かを聞く過程で、社員の価値観を知ることもできるし、社員に制度やミッション・ビジョン・バリューについて考えてもらう機会を提供することができます。時間はかかるようになりましたが、コミュニケーションが生まれやすくなったのは狙い通りですね。
渡部 ある社員からは「部下とどのようなコミュニケーションをとればいいかわからない」という相談を受けたことがあります。その際、私自身が何の考え持っていなければ相談に乗ることもできません。私自身がミッション・ビジョン・バリュー策定・人事評価制度策定に携わってきたからこそ自分自身の考えを持てるようになりましたし、考えを持つことでより会社に対する想いが高まったと思います。社員のみんなにも「考える機会」がないと、「考える力」を養うことはできないと思います。そう考えると、相談をもらうこともそうですし、何気ないコミュニケーションを大切にすることで自然と社内で「考える力」が養われていると感じます。
ポジティブ&チャレンジ精神で課題解決に取り組んでいきたい
LiB 吾妻部長と渡部課長は現在、人財開発室としてさまざな課題解決に向けて活動していると思います。今後も新たな課題にぶつかる可能性はあると思いますが、どのような意思でそれらに対応していきたいと考えていますか?
吾妻 人事評価制度や経営方針に対して、不満の声は今後もあがると思います。そうした声に対して、ポジティブ思考で行動を促せるようにしていきたいです。人事評価制度によって、評価のされ方や対価の得られ方が明確になりました。頑張っても意味が無いのではなく、頑張った分評価されるという環境になったということを、粘り強く社員に続けていきたいと思っています。
渡部 ポジティブ&チャレンジの精神で、問題に臨んでいきたいですね。ミッション・ビジョン・バリューの浸透は、今後も大きな課題であり続けるでしょう。人財開発室だけでこの問題を解決するのは限界があります。社員全員の手を借りて、この問題に取り組んでいきたいです。
LiB ポジティブ思考でチャレンジする。仲間づくりを通じて共感・浸透を広めていく。いずれも大切なことだと思います。ちなみに、吾妻部長・渡部課長にとってミッション・ビジョン・バリューとはどのような存在ですか。
吾妻 ミッション・ビジョン・バリューはいずれも、工藤の想いが100%込められているものです。策定に参加した私たちも、工藤の想いに共感し、それらを体現した会社にしたいと考えています。
渡部 私も同感です。
吾妻 実は先日、とても嬉しい出来事がありました。2024年度入社予定の社員が、「ミッションに共感してトヨタモビリティ釧路に応募しました」と言ってくれたのです。しかも、その社員は当社のミッションを一言一句覚えていました。これまでにない体験を目の前にして、涙が出るほど感動したのを覚ええています。
LiB ミッション・ビジョン・バリューを定めることよって、就職活動を進めていく学生の方々に対して、貴社の熱意をはっきりとぶつけられるようになったからこそ、その言葉につながったのだと思います。続いて2人にとって人事評価制度がどのような存在なのかも聞かせてください。トヨタモビリティ釧路を成長させるうえで、なぜ人事評価制度が必要なのでしょうか。
渡部 人事評価制度はその社員がどのような能力で評価されているのかを知るエビデンスだと考えています。もしも人事評価制度が無ければ、あらゆる評価基準が口約束となり、自分の何が強みで、何が不足しているのか明確に理解できないまま、ただ勤続年数を重ねてしまうことになるでしょう。その社員は確固たる強みがないので、部下・後輩を指導することもままならなくなるでしょう。
人事評価制度があることで、社員全員が強み・弱みを理解し成長できるようになります。それは会社にとってだけでなく、社員にとってもプラスになることだと思います。
吾妻 私は、人事評価制度を社員にとっての「道しるべ」だと考えています。人事評価制度の導入によって。何をすれば昇格できるのかやこの職位はどんな役割や責任があるのかなど、これまで曖昧だったルールが明確化できました。制度によって自分が目指すべき指針が分かりやすくなり、目標に向かって一歩ずつ着実に歩んでいけるようになったと思います。
道東No.1のモビリティカンパニーに向けて
LiB トヨタモビリティ釧路で今後、どのような取り組みを進めていきたいですか。
吾妻 現在、カーディーラーとしての活動内容は大きく変わりつつあります。当社もまた、事業内容や組織編制などをもう1度見直すべき時期にさしかかっています。設立から1年経っていないからこそ、慎重さとスピード感をどちらも意識しながら、PDCAを早いサイクルで回しつつ課題を解決し、会社として成長していきたいです。
渡部 会社も社内ではさまざまな不安や不満、あるいは事業成長の壁にぶつかると思います。社員全員で助け合い、それらを解決しながら道東No.1のモビリティカンパニーを目指していきたいです。
工藤 昨年7月の合併は、長年抱えていた課題に取り組む最大のチャンスでした。とはいえ、我々はようやくスタート地点に立ったばかりです。今回策定したミッション・ビジョン・バリューや人事評価制度も、作っておしまいでは意味がありません。これらを用いて良いサイクルで人の成長を促し、頑張った人が報われれる会社にしていくことで、次期役員、次期社長となる人財が育つように制度を運用していく必要があります。人財開発室を核として、全社を巻き込みながら一緒に成長していこうという意識を、大切にしていきたいと思います。
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- UPDATE
- 2023.11.17
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