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【LiB Mobility経営 vol.7】
カーディーラーの枠を超えて
新たな価値創造にチャレンジ

EXECUTIVE SUMMARY

2021年8月、リブ・コンサルティングは新時代のカーディーラー経営をテーマとするオンラインフォーラム「カーディーラー経営フォーラム2021秋」を開催しました。セミナー第1部では、地域の子供向けプログラムに力を入れている静岡トヨペット(現トヨタユナイテッド静岡)の平光会長と、オンラインタクシーによる医療MaaSに取り組むネッツトヨタ福島の大沼社長が登壇。カーディーラー事業の枠を超えた事業創出に取り組む意義と課題を伺いました。

講師紹介

 

平光 敬和 氏(写真左)
静岡トヨペット株式会社、前代表取締役 会長。「社員の成長なくして会社の成長は ない」を掲げて、静岡トヨペットの採用・教 育を抜本的に改革。地域向けには、キッズ クラブSKIPやリアル宝探しのキラキラ探 検隊など作り出し、業界に先駆けて地域 活性化の取り組みを推進。

大沼 健弘 氏 (写真右)
ネッツトヨタ福島株式会社、代表取締役社 長。アパレル業界に勤めた後、家業である同 社に入社し、2013年から現職。地域に根ざ した事業と社会貢献活動を通じて福島県 の完全復興に尽力。住民向けサービスとし て患者と病院を結ぶオンデマンドタクシー の運行支援(医療MaaS)に着手。

地域の困りごとを解決したい

LiB 静岡トヨペット様の子供向けプログラムも、ネッツトヨタ福島様の医療MaaSも、既存のカーディーラー事業とは内容が異なります。スタートさせた背景を教えてください。

平光敬和氏(以下、敬称略) 子供向けプログラムのSKIPやキラキラ探検隊は、地域で子育てしている方々の困りごと解決に目を向けたことがきっかけです。子育て中の世帯は、子育てを頑張るほど仕事やその他のことができなくなり、子供の送り迎えも大変です。そのような課題を自分たちのファシリティや人材で解決できないだろうかと考え、リブ・コンサルティングさんや周りの関係者の力を借りて進めてきました。地域の困りごと解決の視点で取り組みを考えるという点は、ネッツトヨタ福島様の医療MaaSもおそらく同じですよね。

大沼健弘氏(以下、敬称略) はい。当社の近隣では、通院する患者さんが交通弱者であることが多く、家族の送迎負担も大きいことが課題だと感じていました。自動車を仕事にしている我々にとっては交通弱者を作らないことが大前提です。自分たちに何ができるだろうかと考えて、患者さんと病院を結ぶ通院のためのMaaS に着手することになったのです。

LiB 新しい取り組みに挑戦する上で、社内での合意形成はどのように行ってきたのでしょうか。

平光 会社の未来につながる難しい取り組みほど、社員や幹部の力を借りる必要があります。そのため、経営者が「こうしたい」「こうやりたい」と伝えるのではなく、社員や幹部の方々の意見や、社長や会社がやろうと思っていることについてどう考えているか聞くステップを大事にしようと心がけていました。

大沼 経営者は会社の未来について考える責任を持っていますが、自分たちが目指す姿について色々と話していくと、「また社長が夢のようなことを言っている」「難しいことを言っている」といった声が出てくることもあります。そういう時には、例え話にしてわかりやすく伝えたり、「今の仕事をほんの少しだけ変化させればいいだけ」と伝えたりしながら、会社の方針や目指したいことがシンプルに伝わるようにしていました。ただ、取り組み内容によっては合意が得づらいこともあります。その場合は、社員の皆さんに「お願いします!」です(笑)。

LiB 従業員の方々の合意を問わず、経営者判断で「行くしかない」と決めなければならないケースもあると思います。時間的余裕がない場合はどのように進めるのですか。

平光 それは非常に良い質問で、私の反省点でもあります。振り返ってみると、時間がないことなどを理由に合意形成のステップを端折って、うまくいかなかったことが山のようにあります。つまり、時間的な事情がどうあれ「分かってくれるだろう」といった考え方は通用せず、従業員の意見を聞き、きちんと合意形成することが不可欠ということです。

大沼 同感です。従業員の声から耳を背けると、まず良い結果は出ません。社内の雰囲気が悪くなりますし、社員から注意されるのも、ほとんどが経営判断だけで押し通そうとしたときです。

平光 経営者は時間に負けてしまうんですよね。「時間がない」という理由で、つい手、足、口が先に出てしまいます。

大沼 私の場合、時間より自分に負けている気がしています。その都度反省するのですが、気づけばまた突っ走ってしまい、周りの人たちは「社長は何回言ったらわかるのか」と思われているかもしれません(笑)。

やりがいを実感できる仕組み作りが重要

LiB 新規事業に取り組む上で、従業員のやりがいを高めるための取り組みはありますか。

大沼 満足度という点では、トヨタ自動車のES調査プログラムなどを活用しながら定期的に計測しています。その都度、課題も見え ますので、コツコツと改善に取り組むようにしています。やりがいについては、報酬や処遇も重要ですが、できなかったことができるようになる実感を大事にしたいと思っています。訓練や勉強によって、昨日までできなかったことができるようになります。今日できたことは、明日、明後日には、より早くできるようになります。そのよう な成長を重視して、能力向上につながる活動に取り組んでいこうと従業員に伝えています。

平光 従業員の実感は大事ですよね。難しい課題に取り組むときこそ、経営層から従業員に声をかけるなどしながら接点を増やして、従業員の皆さんに「経営と一体化できている」という感覚を持ってもらうことが重要だと思います。これは経営者のやる気ひとつなので、すぐにできます。また、お客様からのフィードバックを従業員に届きやすくする仕組みを作って、難しいけど取り組んで良かったと思えるようにすることも重要です。従業員1人1人が自分の成長や成果を実感し、そのために自助努力できるようになると組織として非常に強いと思います。

LiB 既存事業と新規事業のリソース配分はどのように考えているのでしょうか。

平光 そこは難しい問題ですね。本などを読むと、既存事業から何人か引き抜いて新規事業のチームを作りましょう、などと書いてあるのですが、実際にはそんな余裕はありませんから(笑)。会社 の規模や既存事業の状態によっても変わると思いますが、既存事業の人材の中で新しい仕事を分担しながら、少しずつ進めていくのが現実的で、成果につながりやすい方法だと思います。

大沼 そうですね。営業は販売台数、店長は利益額などの目標を抱えている状態で全く新しい仕事を依頼すると、既存事業に影響してしまう可能性があります。まずは既存の業務と関連性が高い業務をお願 いするところから始めて、なるべく新しい仕事のプレッシャーや負荷を感じさせないようにしながら、配分を考えていくのが良いと思います。

LiB 非常に参考になりました。貴重なお話ありがとうございました。

 

▼過去発刊「LiBMobility経営」について

LiBMobility経営創刊号、第2号にて平光氏と大沼氏の記事を掲載!是非ご覧ください。

LiBMobility経営_創刊号(平光氏)の記事はこちら

LiBMobility経営_第2号(大沼氏)の記事はこちら

 

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UPDATE
2021.10.01
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