COLUMN
【LiB Mobility経営 vol.7】
顧客接点の革新でカーディーラー経営の進化に貢献する
株式会社Zeals(ジールス)は、独自開発したチャットボット技術を強みにソリューションを提供し企業と顧客のコミュニケーションにおける課題を解決する会社。日本流の接客が生み出す顧客体験の価値をさらに高めるため「おもてなし革命」をビジョンに掲げデジタル活用による効率化と付加価値創出に取り組んでいる。カーディーラー向けにはLINEから車検などの入庫予約ができるサービスを展開。入庫営業に追われがちな営業スタッフの付加を軽減し、LINEを通じたカーディーラーと顧客とのコミュニケーション活性化にも貢献している。現在は約50人体制でカーディーラー向けの事業を展開し、今後は組織を強化していく予定。カーディーラー向けの事業をスタートした経緯と今後の取り組みについて、取締役COOの遠藤竜太氏と執行役員兼自動車DX事業統括部長の渡邊大介氏に話を伺った。
電話営業の代替で接客の時間を増やす
LiB 株式会社Zeals様は、チャットボット技術を軸にコミュニケーション領域におけるソリューションを提供しています。事業内容について教えてください。
取締役COO 遠藤 竜太 氏
遠藤竜太氏(以下、敬称略) 当社は、わかりやすくいうと「ロボット屋」さんです。チャットボットテクノロジーでコミュニケーションの「負」を解決する会社です。チャットボットとは、会話などのコミュニケーションをテクノロジーに搭載したロボットのことを指し、やがてロボット社会が訪れる時、コミュニケーション領域における「負」を解決する核になると考えています。現在は、エンタープライズ領域を中心に旅行・コスメ・教育など業界を問わず400社を超える企業様のマーケティングやセールスの支援をチャットコマース「ジールス」でお手伝いしています。
LiB カーディーラー向けのサービスについて教えてください。
渡邊大介氏(以下、敬称略) 2021年2月より、カーディーラー様向けアフターセールスのサービスとして「LINEらくらく予約」を展開しています。日本では8,800万人が利用するアプリLINEを経由して、車検や点検などの入庫予約ができるもので、これまで課題となっていた電話やメールによるお客様とのすれ違いを防ぎます。使い方としては、まずお客様に各カーディーラー様のLINEアカウントのお友だちになってもらいます。その後、トーク画面上で車の基本情報を入力する簡単な質問に回答するとマイカー情報が登録され、車検や点検が近づいたタイミングで自動的に入庫案内が送信される仕組みになっています。お客様は、入庫の希望日を選択し、LINE経由で予約を完了することができます。
LiB どのような経緯でカーディーラー向けサービスを創出したのですか?
遠藤 LINEは、一度お客様とつながれば中長期的なコミュニケーションができるツールです。従来、ビフォアセールスにおける新規顧客の獲得を強みにしていたのですが、アフターサービスの充実やリピート獲得の効果も見込めると考え、新たなステップとしてアフターセールスに課題を抱えている業界へ踏み出していきたいと考えていました。そんな時、岡山トヨペット様とお話しさせていただく機会があり、カーディーラー様の多くがアフターセールスに課題を抱えていることを知りました。当社が、チャットボットとLINE活用で蓄積してきた技術をカーディーラー様におけるコミュニケーションの「負」を解決するために役立てないかと考えたことがきっかけです。
LiB 具体的にどのような課題解決に取り組んだのでしょうか。
遠藤 業界の方々から話を聞いてわかったのは、営業担当者が抱える顧客数が多く全員に車検や点検などのご案内をできていないということでした。とあるカーディーラーでは、1人当たり平均で630人ものお客様を担当されており、営業担当者は電話を中心に入庫誘致を行われています。しかし、それが全てのお客様から喜ばれているかというと違っており、「営業電話は断りにくい」「折り返し対応が面倒だ」と思われているケースがあります。このような課題に対して 我々の技術を活用してもらうことで、価値のあるサービスを提供できると考えました。
現地現物で顧客の課題を明確に把握する
LiB 「LINEらくらく予約」はLINEを使っている点が特徴ですね。カーディーラー業界では顧客とのコミュニケーションのためにLINE活用に取り組んでいる企業が多いのですが、友だち数の伸び悩みなど壁にぶつかっているケースを耳にします。
執行役員 兼
自動車DX事業部統括部長
渡邊 大介 氏
渡邊 LINEはCtoCのコミュニケーションツールとして普及しているので、企業からの発信はどうしても一方的で、友だち数が増えない、うまく告知できないといった課題にぶつかっていらっしゃるのではないでしょうか。「LINEらくらく予約」は双方向のコミュニケーションを実現し、お客様に役立つ情報を提供してくれるものであるため、カーディーラー様はお客様に紹介しやすいという声をいただいています。実際に、導入いただいたカーディーラー様では、会社の規模にもよりますが、LINEの友だち数が月次で1,000人ずつ増えているケースもあります。
LiB 友だちの数を増やすには「友だち登録」に至るまでの理由が大事ということですね。
渡邊 はい。導入いただいたカーディーラー様にユーザーアンケートをお願いしたところ、 9割以上の方が「車検や点検の予約をLINEで行いたい」と回答しました。実際に、電話やメールよりもLINEで手軽に済ませたいと思っているお客様が大勢いるということです。成果としては、入庫予約のうち53%が営業時間外にLINE経由で予約されたという結果が出ています。これまで、入庫予約を営業時間内に合わせて申し込むことが難しくご不便をおかけしていたお客様に対して新たなソリューションになれたのではないかと感じています。
LiB 53%という数字は、従来の電話中心の営業スタイルに不便を感じていた人の割合を可視化したものといえますね。
渡邊 そう思います。他にも、ゴールデンウィークの長期休暇中に「LINEらくらく予約」を通して100件以上の予約が入ったカーディーラー様もいらっしゃいます。機会損失の軽減という点でも、LINE活用は重要な施策になると思っています。
LiB カーディーラーの現場でもLINEの価値が再認識されたのではないでしょうか。
遠藤 LINEに関しては「若い人が使うもの」「プライベートで使うもの」と認識している人も少なからずいると思います。ただ、すでに多くの人が使っているコミュニケーションプラットフォームですので、LINE上の自然な会話の中でお客様の情報を取得し、それに基づいてパーソナライズした情報発信を行うことで実現する、新たな顧客体験は大きなポテンシャルを秘めているとお伝えしたいです。また、告知ツールとして活用する点においても優れていると思います。現在、世の中のプッシュ配信がほとんど有効活用されず、せっかく有益な情報を提供してもお客様には鬱陶 しいと思われてしまっているケースがあります。これは非常にもったいないことです。先ほども話した通り、お客様一人ひとりにパーソナライズしたLINE活用ができ、かつお客様の課題に寄り添うプレーヤーが必要だと思います。
LiB 導入先カーディーラーからの評価について教えてください。
遠藤 効果を出すことにコミットしている点を高く評価していただいていると感じています。当社はトヨタ自動車も大切にしている「現地現物」の姿勢を大事にしながら、カーディーラー様と一緒になって役立つソリューションをつくるスタンスを取っています。この事業をスタートする際も、岡山トヨペット様に入り込ませてもらい、現場の方々の業務オペレーションを理解するところか らスタートしました。ソリューションは「つくって終わり」ではなく、実際に手にとって実感できる成果を上げることが重要です。ビジネスモデルの観点からも、料金体系は「完全成果報酬制」ですので、収益を得るためにはお客様に成功してもらうことが必要不可欠なのです。思想としてのカスタマーサクセスではなく、現場に寄り添ってソリューションをつくっていくスタンスは当社の強みでもあります。 また、当社はZホールディングス(2021年にLINEと経営統合) のベンチャーキャピタルから出資を受けていたり、私自身LINEの認定講師である「LINE Frontliner」に選出されていますので、LINE活用に関するノウハウと開発力については自負しています。この点も安心して導入いただけているポイントかもしれません。
DXの効果を肌感覚でわかることが大事
LiB 「LINEらくらく予約」の実装はどのように行うのですか。
渡邊 既に公式LINEアカウントをお持ちの場合、そこに機能を追加しますので、友だち数を維持した状態でそのまま運用することが可能です。アカウントをお持ちでない場合は、開設のお手伝いから専任のスタッフがサポートさせていただきます。カーディーラー様オリジナルのキャラクターなどを活用したトーク画面を作成することも全て無償で行っています。
LiB そんなに簡単にスタートできるのですね。「DX」という言葉だけを聞くと、難しくコストがかかるものと考えてしまうカーディーラーも多いと思います。
渡邊 コロナ禍で、さまざまな業界のDXが加速していますが、難しいと思っている人は多いですし、コスト負担が大きくなると非常に重い意思決定になっているように感じます。その壁を乗り越えるには、まずは入庫予約のような特定のサービスに特化した簡単なDXから始めてみることが大事です。最初の一歩が踏み出しやすく、会社にもエンドユーザーにもメリットがあることを肌感覚で味わえれば、DXに取り組む意識も変化すると思います。
LiB 顧客との接点をデジタル化することができれば、情報が一元化されますよね。将来的には、よりパーソナライズ化したサービス提供に結びつけることができそうですね。
遠藤 情報の一元化は非常に重要だと思います。メーカーごとに存在する基幹システムとの連携も今後必要になってくると感じています。また、パーソナライズ化したコミュニケーションは極めて大事なテーマです。お客様が乗っている車や家族構成などによって、コミュニケーション方法は異なります。デジタルのよいところは、お客様の情報を踏まえて自動で最適な情報を提供できるところです。資産化された情報を基に、営業担当者が対面で接客するような状況をつくることを目指します。それができれば、前述した一方的な情報発信の課題はよりクリアになると考えています。必要な情報が、必要な時に届く最高な体験を届けていきたいです。
LiB 今後の展望について教えてください。
遠藤 「LINEらくらく入庫予約」によって営業担当者の業務が効率化し、接客機会が増えることで、お客様への提供価値も高めていきたいと思っています。既に初速の成果も出てきています。また、現在は特定のサービスに特化して導入いただいていますが、今後は保険の見直しや中古車の査定といった新たな機能を増やしていきたいと考えています。経営体制としては、自動車DX事業を当社の最重要領域と位置付け、チームを拡大していきます。新しいシステムの導入は、習熟コストもあると思いますので、カーディーラー様の負担を少しでも軽減できるよう、50名の体制から100名体制くらいまで強化したいと思っています。
LiB 専門部隊をつくるわけですね。
遠藤 当社の方針として、最重要領域と定める業界は慎重に選びますし、この業界と決めたら、そこに集中して、その業界のお客様を一番幸せな状態にすると決めています。これは我々なりの覚悟でもあります。既に、自動車業界経験者も数多く入社してくれ知見を基に活躍してくれています。専門性の高いチームをつくり、カーディーラー様のコミュニケーションにおける「負」を解決するためにスタートアップらしいスピード感とジールス独自の現場主義の精神でカーディーラー様とその先にいるお客様に役立つ実態あるDXを推進していきます。
LiB 貴重なお時間をいただきありがとうございました。
◇LINEを活用した入庫予約は、お客様目線そのもの
代表取締役専務 向井 良太郎 氏
私は、会社としてやるべきは「顧客努力をなくす」ことだと考えています。よく、CS(カスタマーサクセス)向上の話が例に上がりますが、毎回感動サービスをお客様に届けることは難しいし、それを社員に押し付けるのもよくないと思います。最大限に顧客努力をなくすことが、結果的にお客様が離れないサービス提供につながると信じ、さまざまな取り組みをしています。そういった意味で、ジールスのサービスはお客様目線そのものでした。電話でのコミュニケーションを得意としない、お客様の心理的なハードルを払拭することができます。また、開封率の高いLINEを活用する点でも有効性が高いです。一販売店が、こうした取り組みを通して成功することが販売店同士の切磋琢磨につながり、ひいてはトヨタ自動車全体の品質向上に貢献するのではないかと考えています。
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- UPDATE
- 2021.10.07
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