めざましコラム　第61号　本当に買っても良いですか？

早くも月末。残りもわずか。
最後のイベント、一本勝負。

イマイチ調子の出なかった今月も、最後は飾って終わりたい。

店長からも発破が掛かる。
「この一台は計算しているからな！」

はいはい、もちろんそのつもり。
私だって、この一台に賭けているんですから！

来店商談1時間。ご主人様と条件詰める。
車種もOK。競合クリア。グレードオプション希望に沿えた。
「さあて！」　心の中で腕まくり。
ずいっ と身体を乗り出して、満を持してのクロージング！

―・・・もう一晩、考えさせてもらえるかなぁ・・・

「？？？？？」
頭の中をめぐるクエスチョンマーク。
いったい、あと何を検討するの？　全部決めたじゃないですか！？

―買うときは、あなたから買うから

その言葉だけがよりどころ。悲しい気持ちでお見送り。
待つこと2日。最終日。待ちかねていた返答は、悲しい結果「購入見送り」
―やっぱり、色々と厳しくてさ、ごめんね。

厳しいことはわかっていたはず。
それでも必要だって言っていたのに。
それでもクルマも古いし、乗り換えたいって言っていたのに。
奥様も子供達も賛成してくれたって言っていたのに。
他のクルマも見たけれど、うちのが一番って言っていたのに。
値段も頑張ってくれてありがとう、って言ったのに。

いったい、何がどうなったというのですか？

買うときはあなたから・・・って、それはいったいいつですか？

見込も少ない今だから、一つひとつ丁寧に進めてる。
お客様の話に耳を傾け、焦らず怠りなく慎重に。

だけれどお客様は言いました。
―もう少し考えさせてもらえるかな。

全て解決したはずなのに、何かどこかがひっかかる。
最後に残ったワンピース。
そこはかとない「不安」な気持ち。
「本当に買っても良いのかな？」

家に帰って考えた。何度も何度も繰り返し。
だけれど、不安な気持ちは増すばかり。
奥さんとも相談した。だけれど、買う方向へ舵が切れない。

買わない方が良いのかな？

「買った方が良いんです！」そういう気持ちにさせられませんでした。
買いたい気持ちはあったのに、その気持ちを飲み込ませてしまいました。
最後の踏ん切り　その後押しができませんでした。

当たり前が難しい。

買い物には「不安」がつきもの。高額商品ならなおさらのこと。

私たちの大事な仕事。
買う「不安な気持ち」を取り払おう。

本当に買っても良いのかな？
言葉にできないその気持ちを、しっかり受け止め応えよう。

本当に買っても良いんです。
お客様の不安な気持ちを取り払おう。

本当に買っても良いんです。
だって、他にも多くのお客様が買っていますから！

気持ちを動かすお店の空気。
がらんと寂しくなっていませんか。
厳しい業績に、ギスギスした雰囲気に包まれていませんか。

気持ちを動かすあなたの表情。
ゆとりなく、切実な顔つきになっていませんか。

気持ちを動かすあなたの言葉。
景気が悪い、なかなか売れない、つい口にしてしまってませんか。

不安な気持ちを取り払おう。
―先日、このクルマを納めたお客様から「買って良かった」って
言っていただいたんですよ。
―決めるときはやっぱり不安だったんだけどねって言ってましたが。

明るい笑顔で伝えよう。
誰もが不安なのだと伝えよう。
不安を乗り越え、多くの人が買ってくれていると伝えよう。
乗り越えた先に、新しいクルマの楽しいカーライフが待っているのだと。

WRITER

TOHRU.Mコンサルタント

コンサルティング業務全般に従事し、特に組織活性化支援、マネジメント教育、セールス部隊生産性向上に取組む。カーディーラー拠点の営業生産性向上は、延べ100拠点を越え、机上論ではない『現場で活用できるノウハウ』と『本気の支援』に定評がある。