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次世代リーダー チャレンジプログラム
代表取締役社長 大賀 正信氏
奈良日産自動車株式会社では、未来の経営を担う若い層を対象に「次世代リーダーチャレンジプログラム」を実施。自社での実施が難しいといわれる幹部候補向けの人財育成に取り組みました。研修内容には「既存の年功序列制度や固定概念を壊したい」という同社大賀社長の強い思いを反映。強化合宿を含む 8 ヶ月間の研修について、大賀社長と、参加者である山田工場長に感想を伺いました。
社員を育てる本気度を参加者たちが感じ取ってくれた
リブ・コンサルティング(以下リブ):今回ご依頼いただいた次世代リーダーチャレンジプログラムは、貴社として初めての取り組みとなる外部コンサルタントを起用した研修でした。研修を行う事となった背景を教えてください。
大賀 正信社長(以下敬称略):最も大きな理由は、未来の幹部候補をどのようにして育成していくかがわからなかったためです。新人向け研修に関しては、例えば、マナー研修や営業スタッフ向けのロープレといった定番があり、そのような研修は過去に社内でも実施してきたのですが、幹部候補については、こういう人に育ってほしいという条件やイメージがありつつも、どう伝え、どう教えていくかという点でのノウハウがなかったのです。そんなとき、知人からリブ・コンサルティングを紹介していただきました。このチャンスを活かさなかったとしたら、おそらく育成の取り組みは遅々として進まなかったでしょう。社内でも「幹部候補研修をやろう」と決めてから半年ほど何も具体的な進展がない状態でしたので、社員からの信用を損ねる可能性もあったのではないかと思います。
リブ:次世代リーダーを育てる必要性は以前から感じていたわけですね。
大賀:はい。当社は62年の歴史がある老舗のディーラーということもあり、私が社長に着任したときから年功序列の考え方が根付いていました。良くも悪くも年次によって給料や役職が決まる仕組みで、若い人の間では「若いうちは店長になれない」「工場長になれない」という意識があったのです。一方、グループとしては頑張っている人にスポットを当て、役職や給料に反映させたいという方針があります。年配のスタッフにも定年をゴールとするのではなく、さらに頑張ってほしいと思っていました。そこで、年次に関係なく、気持ちや能力で上がっていける会社であることを示すべく、幹部候補生の育成に力を入れようと考えたのです。
リブ:コンサルタントの起用は新たな挑戦でもありました。社員の方々の中には戸惑う人もいたのではないでしょうか。
大賀:社員はむしろ会社が育成にお金をかけてくれることに感謝してくれました。お金を払い、本気で幹部を育てようとしていることを感じ取ってくれたのだと思います。逆に戸惑ったのは私の方で、外部の会社に依頼する費用対効果を意識しましたし、できる限り内容を充実させたいと思い、研修内容についてもさまざまな要望を出させてもらいました。会社が目指すこと、変えたいところなどをヒアリングしてもらい、ゴールや意図を汲み取ってもらいながら研修を作れたのがとてもありがたかったですね。
他責の考えが消えて 自発的に考える集団になった
リブ:8ヶ月の研修を終えて、効果を実感されているのはどのような点ですか?
大賀:仕事と向き合うマインドが変わったと感じます。そこは研修をスタートする際の狙いの一つとしていたことで、その点で効果が大きかったといえます。以前は社員の意識として、どこか受け身で他責のところがありました。この車は売れない、この市場では売りにくい。そういう意識が言葉や態度に出ることがあったのです。しかし、研修を経て、自分に「矢印」(問題意識を持つ対象)を向けるようになりました。売るにはどうすればよいか。自分たちの取り組みで変えられるところもある。そういうマインドに変わった結果として、業績向上にも結びついていたのだと思います。
リブ:マインドの変革を狙いとしたのはどうしてですか?
大賀:人財育成こそが会社として取り組む永遠のテーマだろうと考えているからです。私は過去に業界トップクラスのセールスを育てたことがあります。その時は、日本一働き、日本一のセールスになろうという方針で彼らを支援してきました。たくさん売り、収入が増えることで、社員も家族も幸せになれるはずと思っていたのです。しかし、実際はどうだったかというと、成果を出せるようになった人たちが次々と辞めてしまいます。日本一という名誉を得て、収入も一時的に大きく増えるのですが、それだけでは幸せを感じてくれなかったのです。そこで私は、仕事をする喜びや成長する楽しさを実感することが不可欠なのだろうと思い至りました。その結果、業績や給料だけでなく、会社としての価値観や、個々のマインドを高めることを重視するようになったのです。
リブ:今回は次世代リーダーとなる若手社員が主な対象だったわけですが、中堅社員や幹部社員の反応はいかがですか?
大賀:会社が本気で年功序列を壊し、変わろうとしていると感じ取ってもらえたと思います。その点で、今回のプログラムはわれわれの本気度を示すよい機会になりました。また、研修に参加した社員たちは成長度合いが大きく、考え方や仕事に取り組む姿勢といった点で、現行の店長と同レベルに達しているのではないかと思うことがあります。中堅や幹部社員にもそこに危機感を持つ人が増え、自主的に勉強しようとする姿勢も見られるようになりました。当然、会社としてはその姿勢を後押しします。これから実施する2回目のプログラムでは、店長などにも参加してもらい、成長のチャンスを平等に提供したいと思っています。
リブ:最後に、今後の意気込みを教えてください。
大賀:自動車業界はEVや自動運転の普及に向けて大きく変化しています。環境を破壊しない車を増やし、事故を減らすというメーカーのビジョンは素晴らしいことだと思います。一方、ディーラーとしては保険や修理の需要が減るといったバリューチェーン内のマイナス面を乗り越えるため、変化に対応する力を高めていく必要があります。変化をチャンスにして、プラスにする。そのためにあらゆる固定概念を壊し、新しいことに積極的に挑戦できる会社を目指したいと思っています。
研修で学んだことを 後輩育成にも役立てたい
―研修を受けた山田和樹さん(郡山店工場長)に感想を聞きました。―
リブ:8ヶ月にわたる次世代リーダーチャレンジプログラムが終わりました。率直な感想を教えてください。
山田和樹工場長(以下敬称略):コミュニケーションの重要性や自発的に考えることの大切さを学ぶことができた貴重な経験でした。研修スタート時は、もうけ方や会社経営の仕組みなどを学ぶのだろうと勝手に想像していましたが、実際には視座の高め方など意識の持ち方について多くを学びます。マインドを変えることが会社の業績にも結びつくのだということを実感しています。
リブ:とくに印象に残っていることは何ですか?
山田:合宿です。これまでの研修は会社の2階で行ったり、短時間集まるだけのことが多かったのですが、合宿では同じメンバーで長時間過ごします。普段の仕事とは全く異なる環境の中、昼夜問わず、移動中もお互いに意見交換したことで、研修内容にのめりこめました。合宿所では寝る間際まで宿題に取り組み、議論していましたし、研修の最後に行われた発表がまるで国会のように熱かったのも研修の効果が出ていたからだと思います。「遠いね」「大変だね」と周りから労われることもありますが、実は参加者は大変だったという印象がありません。合宿が2回あってもよかったなと感じるくらい糧になりましたし、私を含め、周りの人たちの仕事の取り組み方も明らかに変わったと思います。
リブ:山田さんは研修期間中に主任から工場長になりました。普段の業務ではどんな点が変わったと感じますか?
山田:主任の時は営業部隊が取ってきた仕事を膨らませるという意識でした。与えられた仕事をこなすといったほうが近いかもしれません。一方、工場長になってからは、仕事を気持ちよく取ってきてもらいたいと考えるようになりましたし、サービス部隊には仕事を膨らませてもらい、お客様に満足してもらいたいという気持ちが強くなったと感じます。工場長になったときの所信表明で、気持ちよく働ける職場を作りたいと言いました。そういう発想になったのも、研修を通じて視座が変わったからだと感じます。
リブ:今後の抱負を聞かせてください。
山田:私は歴代の工場長と比べて年齢が若く、整備士たちと近いのが強みだと思っています。工場長だからといって垣根を作ろうとは思っていませんし、今以上に低くしたいとも思っています。そういうコミュニケーションを通じて、サービススタッフには仕事を大きくしていくためのアドバイスをしたいと思っています。また、研修で学んだことをスタッフにも伝え、彼らにも視座を高めてほしいと思っています。私が整備士だったころは、売上について意識することが少なく、売上達成したときも、達成できた理由がわからず、そもそも売上目標もよく理解していませんでした。そういった経験も踏まえながら、スタッフとも売上や収益といったことについてできる限りたくさん話をするよう心がけています。私自身が仕事を楽しみ、その姿を見てもらうことで、自分も次のリーダーになりたいと思う人を増やしていきたいと思っています。
リブ:ありがとうございました。
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- UPDATE
- 2018.09.10
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