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組織のNo.2育成により店舗の主体性を引き出す
山形トヨタ自動車。山形県内に新車11店舗、中古車1店舗を展開するカーディーラーである。同社はここ数年、店舗のNo.2育成に力を入れており、その成果は業績の向上のみにとどまらず、店舗のマネジメント力の向上、組織風土の改善にも大きな変化が現れているという。
今回は、No.2の育成という課題に対する同社の取り組みについて、取締役社長の鈴木吉徳氏、および山形店の丹野正敏課長と小林仁視主任に話を伺った。
「今」と「未来」を見据えた 次世代育成という課題
リブ・コンサルティング(以下リブ):店舗のNo.2育成に取り組もうと思われた背景について教えてください。
鈴木取締役社長(以下敬称略):理由は二つあります。
一つは店舗の実行力を高めたいという理由です。カーディーラーは店舗ビジネスのため、店舗単位でのマネジメントは何よりも重要な要素だと考えています。店長・課長クラスはその核になる役割の方々です。店長会議やブロック会議を通じて、さまざまな施策を伝えるのですが、いざ店舗へ行くと、伝えたことや決めたことが実践されていないことも多いんですね。決して店長が手を抜いているというわけではなく、若手のメンバーとの間に距離があったり、店長自身の役割が多く、業務が回らない状態だったりすることで、結果的に店舗の実践度が高まらないこともあったんですね。その解決方法を考えたときに行き着いたのが、現場のリーダーでもあるNo.2の育成だったのです。
特にその層のメンバーは、店長と現場のスタッフをつなぐ橋渡し役でもあります。そんなメンバーがしっかりと会社の方針や店長の意図を理解して動いてくれるようになれば、会社の方針からげんばでの実行までが一本につながり、強い店舗を作ることができると思ったのです。
二つ目は、次の店長候補を育てたいという理由です。今の店長は私と同年代のため、普通に考えればあと10年くらいで世代交代を迎えます。しかし、今、次期店長候補が明確にいるかといわれればいない。そこで、店舗No.2に、店舗経営者としての教育を施すことで、次世代を担う店長候補を育てたいという思いがありました。
リブ:「今」の現場の課題である「店舗でのNo.2育成」としての育成と、「未来」の課題である「会社としての次世代の育成」の両方を鑑みて、取り組みの実践を決められたのですね。
社員の可能性に投資する
リブ:No.2を育てようと思われた際になぜ外部のコンサルティング会社を使おうと思われたのですか?
鈴木:一つは、やはり新鮮味でしょうか。社内だけでやろうとするとどうしても通常の業務の延長線上になってしまい、メンバーにとっては優先順位が上がりにくくなります。また、教育を行うトレーナーを自社で育てなくてはならない。これは非常に時間がかかります。とはいえ、弊社の規模で教育専門のトレーナーを雇うのもコスト的には難しい。であれば、外部のプロの方に来ていただいた方が、コストパフォーマンスが高いと考えました。カーディーラーの経営において、投資する先はいろいろあると思うのですが、どんなに良いハードがあったとしても、そこで働く人が成長し、やりがいを感じていなければ魅力的なサービスは提供できません。そう考えると、やはり社員の能力向上に対し、投資をすることは、非常に重要なことだと考えています。
リブ:外部といってもたくさんの企業があると思いますが、その中でも弊社リブ・コンサルティングを選んでいただいた理由は何ですか?
鈴木:弊社もさまざまな企業様とのお付き合いがありますが、自社の課題を相談した際に、多くのコンサルティング会社は、「今のお話だと御社にはこれが合いますよ」と定型のものを持ってこられることが多いんです。でも、課題も状況も個社で異なりますよね。その際に、どれだけ弊社の状況を分かって、状況に合わせてカスタマイズしてくれるかが重要だと思うんです。
リブさんはお話をしていて、そのような対応をしてくれそうだと感じたので、お願いすることにしました。
リブ:実際にプログラムに参加したNo.2の皆さんの反応はいかがでしたか?
鈴木:会社の指示によってこのようなプログラムを受けるとなると、参加するメンバーには多少なりともやらされ感が発生するように思います。しかし、本プログラムに関しては、始まった当初からそのような雰囲気はありませんでしたね。むしろ多くのメンバーから「勉強をする機会を作っていただいてありがとうございました」とお礼を言われました。日頃の業務は店舗単位なので、なかなか自身の発想を広げたり、見識を広げる機会がないのでしょう。このプログラムでは、他店舗のメンバーと議論したり、情報を共有したりする場も多くあり、そういったことも刺激につながったのだと思います。
リブ:プログラムの中で使っていたベンチマークを意味する「TTP(徹底的にパクる)」も完全に共通言語になっていると聞きましたが。
鈴木:そうですね。完全に自社の言葉として浸透しましたね。これまでも店長会議等で成功事例の共有を行っていたのですが、プライドが邪魔してしまうのか、なかなか真似して成果を出そうというお店が出てきませんでした。でも今回プログラムに参加した比較的若い世代メンバーは、成果を求めて、素直にベンチマーケティングをするんですよね。
リブ:No.2を中心に店舗を超えた情報共有の仕組みができてきたんですね。ちなみに、メンバー自身の成長というところではどんな変化がありましたか?
「目的を捉える」ことによる 店舗の主体性向上
鈴木:メンバー個々の「考える力」が高まったと感じます。それまでは、本部から指示を出し、それに対して店舗が取り組むという構図だったのが、最近は本部の施策に対しても、「こうしたほうがいいのではないですか?など、背景を捉えた上で、より良い方法を主体的に考え、私や部門長に提案してくれるようになってきました。
リブ:それは良いことですね。
鈴木:そうですね。この「目的を捉える習慣」が付いたことはすごく大きなことだと思います。これまでは社内コンテストなどを行っても、単にその期間にインセンティブを追いかける活動になってしまい、コンテストが終わった瞬間に数字が落ちるということがよくありました。それが今は、店長だけでなく、No.2のメンバーまでが目的を捉え、現場のメンバーに落とし込みをしてくれるようになったため、さまざまな取り組みが継続的に行われるようになりました。
今回テーマとしてNo.2に中心になって取り組んでもらった車検というテーマにおいても、それまでは口酸っぱく言ってもなかなか実積が上がらなかったんですね。でも、このプログラムの導入以降は、少しずつ、でも確実に実積が上がってきています。
リブ:プログラムのテーマは、車検実施率向上ではなく、No.2育成なのにですか?
鈴木:そうですね。No.2が主体となって店舗のメンバーで施策を考え実行するようになったことで、一スタッフにまで取り組みの背景や目的が伝わるようになったことがその理由だと思います。年に1回、若手のメンバーを集めてざっくばらんに話を聞く場を持っているのですが、そういったところでも車検の獲得率や顧客数を増やす取り組みなどの話が、彼らの方から普通に上がってくるようになりました(笑)。
リブ:それはすごいですね。No.2がパイプ役として成長することによって、会社の方針が現場まで伝わり、主体性の高い店舗が生まれているということですね。
継続的な人財育成が未来を創る
リブ:今後、さらに自社を発展させていくために、どのようなことに取り組んでいきたいですか?
鈴木:今後の経営を考えると、店舗だけでなく、部門長のレベルアップも一つの課題だと思っています。今回、おかげさまでNo.2が育ちましたが、毎年人は年を取っていきますし、ときには入れ替わりもあります。人財育成は今後も継続していかなければならないと思っています。
【スタッフの飛躍に注目】
本プログラムに参加した山形店の丹野氏と小林氏に、「No.2育成プログラム」に参加しての感想を伺った。
リブ:No.2育成のプログラムが始まり、受講メンバーに選ばれたときには、どのように感じましたか?
小林仁視主任(以下敬称略):声が掛かったときは、「店舗のNo.2でもないのに、何で自分が呼ばれたんだろう?」と正直に思いましたね(笑)。しかし、実際にプログラムが始まってみると非常に身になる内容で、回を重ねるたびに自身が成長していくのを感じました。
リブ:どのような部分でご自身の成長を感じましたか?
丹野正敏課長(以下敬称略):特に成長したと感じるのは、店舗メンバーを巻き込む力ですね。以前は、会社から言われたことをそのままメンバーに伝えていたせいか、動いてもらえず悩んでいました。このプログラムで、戦略の立て方や店舗ミーティングの進め方、人の動機付けの方法を学ぶことによって、店舗メンバーを巻き込んで取り組みを進められるようになりました。
小林:私も同感です。また以前は、会社から与えられた目標となる数字だけを展開し、皆で頑張りましょうという状態でしたが、このプログラムで正しいPDCAサイクルの回し方を学んだことで、店舗メンバーと共に目的やゴールを明確にした上で、具体的な計画を立て、協力して進めていけるようになりました。
丹野:また、昔は店長やリーダーが必死に旗振りをしていましたが、今は一人ひとりが主体的に店舗の取り組みに関与するようになってきました。
リブ:いいですね。ご自身の役割認識も変化されましたか?
丹野:そうですね。自分だけでなく、より店舗全体を見るようになりました。周りのメンバーも以前より相談に来てくれる機会も増え、頼りにしてもらえるようになったと感じています。
小林:店長やサービスマネージャーと店舗の課題について語る機会も増えましたね。前は認識を擦り合わせるのに時間がかかっていましたが、だんだん阿吽の呼吸となり、コミュニケーションがスムーズに行えるようになってきました。
リブ:今後はどのように自己成長をしていきたいですか?
小林:私自身の成長ももちろんですが、私より若いメンバーに同じような成長の機会を与えてあげたいです。
取材日:平成29年10月
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- UPDATE
- 2017.03.22
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