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3年先、5年先を見据え、今、会社として投資する
株式会社ホンダ泉州販売では、二〇一五年四月にメーカーの低金利施策が変わり、ホンダディーラー全体で「残価設定型クレジット」の利用率が大きく下がると言われていた中で、利用率を伸ばし続けるという成果をあげた。今回は、会社として「残価設定型クレジット」の取組みをどのように位置づけ、スタッフの提案力を高めていったのかに焦点を当て、取締役営業部長の香川氏、泉佐野市役所前店のみなさま、そして飛躍的な成果をあげた岸和田荒木店の五十嵐営業チーフにお話を伺った。
※以下、残価設定型クレジットは残クレと表記
リブ・コンサルティング(以下リブ):ホンダ泉州販売様では、二〇一五年三月から半年間、「残クレ提案力強化プログラム」に取組んでいました。まずは、このテーマに取組まれるまでの経緯についてお聞かせください。
香川取締役営業部長(以下敬称略):どのメーカーも一緒だと思いますが、この先五年、十年、市場が縮小する中で販売台数が伸び悩んでいくことはわかっています。その中で、いかにお客様を守り、増やしていくのか。そして会社としてこの点にどのように投資をしていくのか、この決断が重要となってきます。当社では平成二十年から残クレの販売をスタートさせました。当時はまだメーカーの施策はなく、自社オリジナルの商品でした。社内で反対もありましたが、もしも三年後の下取りでお客様とトラブルがあったり、赤字が出たりしたとしても、会社が全て補填すると伝えました。それぐらい、将来を見据え、代替サイクルを早めていくしかないと判断したのです。
リブ:既に自社で取組みを進められていた中、なぜ外部を導入しようと考えたのでしょうか。
香川:七年前に残クレでご購入いただいたお客様が、今二回、三回とお乗り換え頂いています。三年前、五年前の残クレの取組みが今やっと花開いている。この活動は絶対に途切れさせてはいけないのです。三年先、五年先の商売を固めるために、今やらなくてはいけないことだと考えます。そのため、メーカーの低金利施策が一部を除いて変更になるタイミングでしたが、利用率を落とすわけにはいきませんでした。少なくとも維持をしていかなくてはいけない。会社のこの“本気”を示すことが必要と考えたのです。だからこそ“外部を入れてでも維持をしていくんだ”というメッセージを伝えたかったのです。
【店舗の飛躍に注目】
店舗実績を二十九%アップさせ、成果発表会では見事優勝! 泉佐野市役所前店
リブ:まずはプログラムを始める前の状況を教えてください。
橋本店長(以下敬称略):実は開始前は残クレが一番弱い店舗でした。スタッフのバラツキも大きく、自分自身も残クレが苦手で…どん底からのスタートでした。プログラムも、私と営業スタッフ二名の選抜式でしたので、お店に持ち帰ったあと、きちんと展開できるか正直不安もありました。
リブ:変化を感じ始めたタイミングはいつ頃だったのでしょうか。
橋本:インパクトが大きかったのは毎朝のロープレです。最初の一ヶ月は営業だけでロープレを実施していましたが、途中からサービスや事務を含め、全員でおこなうように変化しました。店舗メンバー全員が取組みを意識した結果、金利が変わった四月も残クレ比率が上がったんです。「あれ?」と変化を感じました。まぐれかと思ったのですが、五月、六月と好実績が続きました。この変化を店舗メンバー全員で感じられたことは大きかったと思います。
リブ:ロープレによって店舗全員の巻き込みに成功したんですね。営業スタッフの提案力という点ではどのような変化がありましたか?
橋本:それまではなんとなく全数提案しているだけ、残クレが取れなかった理由も曖昧、スタッフ一人一人が工夫するということもありませんでした。でも、ロープレリーダー、残クレリーダーが率先して指揮をとり、プログラムで学んだ事を店舗へ落とし込み、工夫を加え、自分たちで技に変えていくようになったこと、活動内容を共有し合うようになったことで、提案力も高まったと感じます。今ではスタッフ毎のバラツキもほとんど無くなりました。
「個人戦」ではなく「団体戦」店舗目線で取組み展開 残クレリーダー&ロープレリーダー
リブ:リーダーとして、どのように店舗展開を図ったのでしょうか。
谷口スタッフ(以下敬称略):プログラム内容の共有、残クレの勉強会、毎朝のロープレを実施しました。
奥野スタッフ(以下敬称略):平日は知識習得のための「一問一答ロープレ」、土日はトーク習熟のための「掛かり稽古ロープレ」をおこなっています。はじめは残クレだけをテーマにおこなっていたのですが、今はJAF、当社オリジナル商品である緊急サポート、保険証券回収等、身近なテーマでも実施しています。また、ちょっと工夫を加え、相手の悪口を言うロープレなども行っています。十秒間相手に改善して欲しいことを伝え、残りの五十秒間で相手を褒めるという取組みです。普段なかなか言えないことも、冗談混じりに伝え合えるので、言われた方も素直になおそうと思えているように感じます。
リブ:業務改善にも繋がる良いテーマですね。取組みを開始し、その他どのような変化がありましたか?
谷口:残クレの提案の仕方が確実に変わりました。以前は見積もり段階での提案でしたが、今は初期提案が当たり前となっています。以前は通常クレジットとの比較で敗戦してしまうことも多かったのですが、今はほぼありません。
奥野:以前から仲の良い店舗でしたが、みんなでロープレをおこなうことでさらに仲良くなったと感じます。これまで以上に職域の壁もなくなり、サービス、女性の事務スタッフも含め、みんなが提案できるテーマについては、全スタッフのオープンボードをつくり、それぞれの目標を設定して見える化しています。お客様に提案することが苦手だった事務も、週一回はお客様に提案できるようになりました。
リブ:ご自身の変化としてはいかがですか。
谷口:私は営業十九年目ですが、私自身が勉強するようになりました。年次を重ねるにつれ、惰性でおこなってしまうことが多くなっていましたが、みんなで取組むことで、刺激を受け、個人としてもきっちり勉強し、理解するように変化しました。
奥野:私は周りとの協調や、業務の流れを意識するようになりました。それまでは正直、自分の成績しか見ていませんでした。でも今は後輩を育成するという視点が持てるようになりました。
残クレ利用率二十六%アップ!提案に自信 女性新人スタッフ
リブ:奥野さんが教育担当である原田スタッフにもおうかがいしたいと思います。
原田さんはプログラムには参加されていませんでしたが、店舗で取組みが開始された時、どのようにお感じになりましたか。
原田スタッフ(以下敬称略):はじめはとまどいしかなかったです。特に朝のロープレは驚きましたし、不安と照れが混在していました。
リブ:原田さんはプログラム開始後、飛躍的に販売台数も残クレ比率も高まっていますが、ポイントはなんだと思いますか。
原田:ポイントは大きく3つあります。
一つ目はみんなで取組んだことによる明らかな意識の変化。二つ目は、毎朝のロープレでの知識習得と先輩のトークの吸収。私はこのおかげで、自信を持って提案ができるようになりました。三つ目は、提案のポイントを押さえるということ。メモ書き説明は以前からやっていましたが、ある程度残クレをご存じのお客様も含め、改めてご説明をするようにしました。
一緒に確認しながら、絵を描いていくことで、より具体的イメージを持って頂けていると感じます。提案タイミングも初期提案が定着し、残クレでの購入を前提にした提案ができるようになっています。
【スタッフの飛躍に注目】
お客様にとってのメリットを明確にし、お客様のための提案を!
岸和田荒木店 五十嵐スタッフ
リブ:以前はあまり残クレの提案に前向きではなかったとうかがいました。何をきっかけに、前向きな提案ができるようになったのでしょうか。
五十嵐営業チーフ(以下敬称略):残クレという考え方は自動車業界に昔からあり、以前はトラブルが結構あった印象が大きく、保守的になっていました。しかしながら、今回のプログラムで、お客様にとってのメリットとデメリットを整理し、かつ、それを裏付けるデータを確認することができました。どのようなお客様にとってどのようなメリットがあるのか、この点が腹落ちしたことにより、考えに変化が起こりました。これが一番のきっかけだったと思います。
リブ:現在はどのようなことを意識した提案をされているのですか。
五十嵐:「選択するのはお客様」ということです。営業都合で行っているようで「全数提案」という言葉はあまり好きではなかったですが、我々がプロとしてすべきことは、先入観無く伝えることであると思えるようになりました。専門用語は使わずに、わかりやすいように噛み砕いて伝えること、この点も意識しています。
リブ:お客様からの反応は何か変わりましたか?
五十嵐:先日ご契約いただいたお客様は、お父様がNーBOXを残クレで購入されたお嬢様でした。「前に言ってたやん」という形で、お嬢様も当たり前のように残クレでNーOneをご購入いただきました。
私は待ち時間のお客様とお話する時は三分はクルマのお話ですが、残りは全て雑談です。でも今はその雑談が残クレに関する雑談に変わりました。「選択するのはお客様」であるというスタンスを持つことで、とりあえず時間がある方にはご紹介しようという考えに変わりました。
視野を広げるサポート
リブ:取組み成果は業績面でどのように出ていますか。
香川:四月より量販車種の低金利施策が無くなる中、残クレ比率を大きく伸ばすことができました。三割を維持できたら良い方だろうと思っていたのですが結果は四割を優に超え、ホンダディーラーの中でトップの実績を出すことができたのです。
リブ:社員の方々にはどのような変化が見られましたか。
香川:今まで自社で残クレの研修をおこなったりもしましたが、変化の無いスタッフもいました。しかし、今回の取組みによって、周りで好事例がどんどん生まれ、お客様にも喜んでいただいたことで、慎重なベテランスタッフも動き出すようになったのです。ここには六年もかかりました。
何よりも、毎朝のロープレにより明るく楽しく元気よくスタートできる雰囲気がとても良い。朝集合して、車が売れていないと店長が怖い顔をしている…こんなお店にお客様が来ても快適なはずがありません。ESがあってこそのCSです。指導は詰めることではなく、一緒になって考えるということ。今回の取組みでは、社員同士で一緒に考える姿勢が生まれたことも良かったことの一つです。
リブ:当社のプログラムに対して、どのような感想をお持ちですか。
香川:今までお願いした研修会社とは違う切り口、新しい切り口がありました。経験談を伝えるだけで終わるのではなく、一緒に考えて取組むスタイル、客観的なアドバイス、お客様目線のコメント等がありました。これは業界特化をされているからこそだと思います。論理的にまとめることは我々の仕事ではないと思います。その時間があれば、我々はお客様の方をもっと見て、どうやって喜んでいただくかを考える。そういった役割分担ができると考えました。
リブ:今回の取組みを活かして今後どのようなことを期待しますか。
香川:朝は明るく楽しく元気よく。こういった文化を常に継承しながらやっていきたいと思います。すでにこれは次期の方針書にも加えました。ここにベースがあれば、その他の取組みもおこないやすくなると思うのです。
取材日:2015年11月
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- UPDATE
- 2017.03.22
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