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めざましコラム 第9号 ぴったりのクルマ? 納得のクルマ?
「ぴったりだ!! 山田様の希望にかなり近いぞ!!」
オークションの情報を見て、私は思わずにやりとした。
はやる気持ちを押さえもせずに、すぐさま山田様に電話する。
「山田様、一昨日は御来店ありがとうございました!!」
「山田様の希望にまさにぴったりの車があったんですよ!
走行距離は~万キロ、色は白。価格もかなり・・・」
「いや~、ラッキーでした。早速伺っても宜しいですか?」
「あ、ごめん・・・。」
言いにくそうなお客様の声
「昨日他のお店に行って、決めちゃったんだ。」
えっ・・・昨日?
せっかく見つけたのに。お客様にぴったりの車なのに。
もう、仕入れちゃったのに・・・
たった1日。
たった1日遅かっただけで、お客様はよそのお店で買ってしまった。
2日前の商談はいい感じだった。
お客様は気さくな方で、色々と希望をお聞きしているうちに、
すっかり仲良くなった。
ただ「お客様の希望通りの車」はうちのお店になかったのだ。
「すぐ探します!!見つかったら即連絡入れますね。」
「ありがとう。連絡待っているよ!!」
しかし、ふたを開けてみれば、他社敗戦。
探した努力も水の泡。仕入れた車だけが手元に残る。
「そ、そうなんですか。いい車が見つかったんですか?」
真っ白になった頭で、やっとのことで言葉を押し出す。
「う~ん。条件通りってわけじゃないんだけどね。」
話を聞けば、一昨日聞いていた車種でもない。
色に到っては赤。一昨日の希望は白だった。
価格も予算オーバー!!
頭の中を在庫車が駆け巡る。
ほぼお客様が今、口にした通りの車が思い当たる。
店長のいつもの口癖がひびく。 「在庫車をしっかり当てていけ!!」
「どんな車をお探しですか?」
展示場で車を見ているお客様へのいつもの声掛け。
車種、色、距離、オプション、ボディタイプ・・・そして価格。
お客様の口からは様々な希望条件が飛び出す。
中古車は一物一価。
お客様の条件をぴったり満たす車が在庫としてある確率など、ゼロに近い。
「あんなにピンポイントで言われても、当てはまる車なんてないよ・・・」
「ぴったりの車があったら決められたんだけどな・・・」
帰っていくお客様の背中を、肩を落として見送ったことはないだろうか?
大きな大きな勘違い。
そもそも、お客様の条件に『ぴったりの車』を探す必要などないのだ。
それはなぜか。
「すべての条件にぴったりの車」なんて買えはしないと
お客様自身も分かっているからである。
もちろんお客様には車を買う上での希望はある。
だからスタッフに聞かれたら応える。
難しいとは分かっていても、出来る限り希望に近い車は欲しいのだ。
車種も、色も、距離も、オプションも・・・予算も。
だから中には妥協できる条件だってある。
一方で「絶対に譲れない条件」もあるのだ。
大事なことは、この「絶対に譲れない条件」をはずさないということ。
車種?色?距離?ブランド?
譲れない条件も人それぞれ。
条件を全部満たそうとするから出遅れるのだ。
「ぴったりな車」を探そうとするから、お客様を帰さざるを得ないのだ。
まずははじめの一歩。
「今の中で、絶対に譲れない条件はどれですか?」
色々と希望をお聞きした上で聞いてみよう。
店長、部長が呪文のように言い続ける。
「在庫車をしっかりと提案していくように!」
これは、在庫車を無理矢理押しつけろという意味ではない。
お客様の希望を無視して商談を進めろという意味でもない。
100点満点の車はなくても、
「絶対に譲れない条件を押さえた」合格点の車は、
きっと在庫車の中にもあるはずなのだ。
「すべての希望を満たす車が見つかれば一番なのですが、
なかなか難しいかもしれません。
いまお聞きした中で、これだけは外せないな、という条件が
ありましたら、順番に3つ教えていただけませんか?」
「へ~、こんな車があったんだね。知らなかったよ。
さすがだねぇ。これなら荷物も載るし、距離もOK。
車検も残っている。ありがとう。」
そこにはお客様の「納得」された笑顔が待っている。
- UPDATE
- 2013.02.02
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